会計名及び科目 | 一般会計 | (組織)矯正官署 | (項)矯正収容費 |
部局等 | 77刑事施設 | ||
病院移送旅費の概要 | 刑事施設の被収容者を外部病院に入院させる場合に戒護職員に対して支給される旅費 | ||
病院移送旅費のうち宿泊料支給額の合計 | 1億2339万余円
(平成22年度)
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節減できた宿泊料支給額 | 7010万円
(平成22年度)
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法務省は、刑務所、少年刑務所及び拘置所(以下「刑事施設」という。)において、被収容者が負傷し、又は疾病にかかっているときなどは、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(平成17年法律第50号)の規定に基づき、原則として刑事施設内において当該施設の職員である医師等による診療を行い、必要に応じ、被収容者を刑事施設外の病院又は診療所(以下「外部病院」という。)に通院させ、やむを得ないときは被収容者を外部病院に入院させることができることとなっている。
ア 病院移送における勤務要領
刑事施設の長は、被収容者を外部病院に入院させる場合(以下、このことを「病院移送」という。)には、勤務要領を定めるなどして、戒護(注1) 等に従事する職員(以下「戒護職員」という。)に対して、仮眠場所、食事方法、携行品、勤務時間等を指示している。この勤務要領によれば、戒護職員は、原則として、外部病院から外出しないこととされており、仮眠及び休憩は外部病院内の休憩所等を利用すること、食事については外部病院内の売店や食堂を利用するか勤務に就く前に準備すること、刑事施設が用意した仮眠用の寝具類等を携行すること、24時間勤務とすることなどとされている。
イ 病院移送における各種手当
刑事施設では、病院移送における戒護職員に対して、一般職の職員の給与に関する法律(昭和25年法律第95号)、人事院規則9—30(特殊勤務手当)等に基づき、午後10時から翌日の午前5時までの間に勤務した場合は夜勤手当及び戒護業務の特殊性による夜間特殊業務手当を、また、正規の勤務時間を超えて勤務した場合は超過勤務手当を支給している。
刑事施設では、病院移送における戒護職員に対して、上記各種手当のほかに、国家公務員等の旅費に関する法律(昭和25年法律第114号。以下「旅費法」という。)、「旅費業務に関する標準マニュアル」(平成20年各府省等申合せ。以下「標準マニュアル」という。)、「被収容者を外部病院に入院させる場合の戒護職員等の旅費について」(平成14年法務省会第465号。以下「通達」という。)等に基づき、病院移送において必要となる費用として、宿泊料等の旅費(以下、この旅費を「病院移送旅費」という。)を支給している。
旅費法における宿泊料は、旅行中の夜数に応じて1夜当たりの定額(表1参照)で支給されるものであり、旅行中の宿泊料金(室使用料)、宿泊に伴う夕・朝食代及びその他の雑費を賄うものであると解されている。そして、旅費法第46条第1項では、不当に旅行の実費を超えた旅費又は通常必要としない旅費を支給することとなる場合には、その実費を超えることとなる部分の旅費又はその必要としない部分の旅費を支給しないことができることとなっている。
法務省は、旅費法第46条第1項の規定に基づき、病院移送における宿泊料について、外部病院は宿泊料金を徴しない施設であるとして、通達において、旅費法に定められた宿泊料定額の2分の1に相当する額(公安職俸給表(一)1〜3級職員、乙地方の場合で3,900円。表1参照
)に減額調整して支給することとしている。
区分
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宿泊料(1夜につき)
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甲地方
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乙地方
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公安職俸給表(一)4級以上7級以下の職務にある者
(通達で定めた病院移送の場合) |
10,900円
(5,450円) |
9,800円
(4,900円) |
公安職俸給表(一)1級以上3級以下の職務にある者
(通達で定めた病院移送の場合) |
8,700円
(4,350円) |
7,800円
(3,900円) |
本院は、経済性等の観点から、病院移送旅費のうち宿泊料は、病院移送における戒護職員の仮眠場所、食事方法等の実態(以下、「病院移送の実態」という。)からみて通常必要となる費用を反映したものとなっているかなどに着眼して、全77刑事施設(注2)
において22年度に病院移送旅費を支給した出張件数計30,890件、宿泊料支給額計1億2339万余円を対象として検査を行った。
このうち9刑事施設(注3)
に対しては、旅行命令簿、旅費請求書、勤務要領等の書類を確認したり、戒護職員から直接病院移送の実態等を聴取したりするなどして会計実地検査を行った。
また、それ以外の68刑事施設に対しては、計算証明規則(昭和27年会計検査院規則第3号)により本院に提出された支出計算書等の証拠書類である旅費請求書等を確認するなどして検査を行った。
77刑事施設 札幌、旭川、帯広、網走、月形、函館少年、青森、宮城、秋田、山形、 福島、盛岡少年、水戸、栃木、黒羽、前橋、千葉、市原、八王子医療、府中、横浜、新潟、甲府、長野、静岡、川越少年、松本少年、富山、金沢、福井、岐阜、笠松、岡崎医療、名古屋、三重、滋賀、京都、大阪、大阪医療、神戸、加古川、和歌山、姫路少年、奈良少年、鳥取、松江、岡山、広島、山口、岩国、徳島、高松、松山、高知、北九州医療、福岡、麓、佐世保、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄、佐賀少年各刑務所、喜連川、播磨、島根あさひ、美祢各社会復帰促進センター、東京、立川、名古屋、京都、大阪、神戸、広島、福岡各拘置所
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9刑事施設 札幌、帯広、月形、府中、横浜、三重、岩国各刑務所、東京、広島両拘 置所
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検査したところ、病院移送における宿泊料の支給状況及び病院移送の実態について、次のような事態が見受けられた。
すなわち、病院移送における宿泊料は、77刑事施設において支給された病院移送旅費の全てについて、通達に基づき、旅費法に定められた宿泊料定額の2分の1に相当する額に減額調整して支給されていた。
一方、病院移送の実態を戒護職員から聴取したところ、勤務要領に定められたとおり、刑事施設が用意した簡易ベッドや布団等を持ち込むなどして外部病院内を仮眠場所としていて、宿泊料金は外部病院に対して支払うことはなかった。そして、食事方法についても、外部病院内の売店等を利用したり、事前に弁当を準備したりしていて、夕・朝食代は高額なものとはなっていなかった。また、戒護職員が通常負担しているその他の雑費は見受けられなかった。
上記のことから、病院移送における宿泊料については、病院移送の実態からみて通常必要となる費用として、標準マニュアルにおける夕・朝食代相当額の目安の額(旅費法における食卓料と同額。公安職俸給表(一)1〜3級職員の場合で1,700円。表2参照
)を支給すれば足りるものと認められ、通達に定められた病院移送における宿泊料(公安職俸給表(一)1〜3級職員、乙地方の場合で3,900円)は、過大になっているものと認められた。
区分
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夕・朝食代相当額
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公安職俸給表(一)4級以上7級以下の職務にある者
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2,200円
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公安職俸給表(一)1級以上3級以下の職務にある者
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1,700円
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現に、入国管理局の入国者収容所等においても、病院移送を行っているが、被収容者の警備に当たる職員に対する宿泊料については、標準マニュアルにおける夕・朝食代相当額の目安の額(旅費法における食卓料と同額)に減額調整して支給することとしていた。
このように、病院移送における戒護職員に対して支給される宿泊料について、病院移送の実態からみて通常必要となる費用に即して減額調整していない事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
上記により、前記の77刑事施設における22年度の病院移送旅費支給額のうちの宿泊料計1億2339万余円について、通達に定められた宿泊料定額の2分の1相当額の支給を、病院移送の実態からみて通常必要となる費用に即して減額調整することとして、標準マニュアルにおける夕・朝食代相当額の目安の額(旅費法における食卓料と同額)を支給することとすれば、宿泊料の支給額は計5328万余円となり、計7010万余円が節減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、法務省において、病院移送における宿泊料の支給に当たり、通常必要としない部分の旅費については減額調整できることとなっているのに、病院移送の実態からみて通常必要となる費用の把握が十分でなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、法務省は、病院移送における戒護職員に対して支給される宿泊料について、病院移送の実態からみて通常必要となる費用に即して適切に減額調整するよう、23年9月に刑事施設等に通達を発して、病院移送であって宿泊料金を要しない場合においては、宿泊料は旅費法に規定する食卓料に相当する額を支給することとして、23年10月以降に実施する病院移送から適用する処置を講じた。