会計名及び科目 | 一般会計 | (組織)矯正官署 | (項)矯正収容費 |
部局等 | 法務本省、8刑事施設等 | ||
脳波計の整備の概要 | 被収容者の疾病の診断等に用いるための脳波計をリース契約又は購入契約により刑事施設等に整備するもの | ||
8刑事施設等における脳波計の整備に係る経費 | 1419万余円
(平成18年度〜22年度)
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上記の経費と施設外の医療機関に検査を依頼した場合に支払が必要となる診療報酬の額との開差額 | 1320万円
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法務省は、刑務所、拘置所等の刑事施設、少年院及び少年鑑別所(以下、これらを合わせて「刑事施設等」という。)に、被収容者の診療又は鑑別に必要であるとして、各種の医療機器を整備しており、これらの医療機器の整備は、整備の必要性や各刑事施設等からの要望を勘案するなどして毎年度策定する医療機器整備計画に基づいて行われている。そして、179刑事施設等のうち29刑事施設等に、リース契約又は購入契約により脳波計が1台ずつ整備されている。
脳波計は、患者の疾病の診断等に用いるために、頭部に装着した電極により脳波を記録する装置であり、脳波計が整備されている刑事施設等では、当該施設の医師が、被収容者に対する脳波検査が必要であると判断した場合には、当該施設の検査技師等が検査を実施している一方で、脳波計が整備されていない刑事施設等では、施設外の医療機関に検査を依頼するなどして脳波検査を実施している。
本院は、経済性、有効性等の観点から、脳波計の整備の必要性について十分な検討が行われているか、脳波計は十分に活用されているかなどに着眼して検査した。検査に当たっては、脳波計が整備されている29刑事施設等のうち10刑事施設等(注1) において、診療録、脳波検査報告書等の関係書類により平成18年度から22年度までの間における脳波計の使用実績等について会計実地検査を行うとともに、法務本省において、脳波計の整備の必要性の検討状況等について説明を聴取するなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
10刑事施設等のうち、医療法(昭和23年法律第205号)に基づく病院で、医療上の検査需要への対応の必要性から脳波計を整備している大阪医療刑務所及び関東医療少年院を除いた8刑事施設等についてみると、脳波計の整備に係る経費(注2)
は、リース契約によるものが6刑事施設等で計971万余円、購入契約によるものが2刑事施設等で計448万余円、合計1419万余円となっていた。また、これらの脳波計は、札幌少年鑑別所を除き、いずれも既存の機器が老朽化等したため、これを更新したものであった。
そして、8刑事施設等における18年度から22年度までの5年間の脳波計の使用実績は、表のとおり、著しく低調となっており、福岡刑務所及び千葉少年鑑別所においては、5年間全く使用されていなかった。
表 年度別の脳波計の使用実績
(単位:回)
年度
\
箇所
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平成
18
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19
|
20
|
21
|
22
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計
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18〜22年度の平均
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||||
|
21
|
18
|
16
|
16
|
6
|
77
|
15.4
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0
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0
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0
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0
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0
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0
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0
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2
|
2
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0
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0
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0
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4
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0.8
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0
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0
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0
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1
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0
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1
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0.2
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—
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—
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0
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0
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0
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0
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0
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8
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7
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6
|
7
|
0
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28
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5.6
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0
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0
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0
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0
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0
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0
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0
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2
|
3
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0
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1
|
0
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6
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1.2
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計
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33
|
30
|
22
|
25
|
6
|
116
|
法務省は、毎年度、刑事施設等から、整備された脳波計等の医療機器の使用実績を医療機器現有状況調書により報告させている。
しかし、同省は、脳波計の整備の必要性の検討に際して、上記の報告に基づく更新前の脳波計の使用実績を考慮しておらず、また、使用実績に基づく今後の使用予測により、必要の都度、施設外の医療機関に被収容者の脳波検査を依頼した場合の経費と、脳波計の整備に係る経費とを比較するなどの検討を行っていなかった。
また、法務省は、刑事施設等から、前記の報告と併せて、医療機器更新整備等希望調書により、更新の必要がある機器等を報告させているが、8刑事施設等の中には、更新要望を提出していない施設があるなど、当該施設が必ずしも脳波計の整備の必要性を認識していないにもかかわらず、脳波計を整備している事態も見受けられた。
このように、8刑事施設等において脳波計を使用する機会は極めて少ないこと、また、脳波計は一般の医療機関に通常設置されている機器であることなどから、8刑事施設等において、被収容者に脳波計を用いる診療又は鑑別の必要が生じた場合には、脳波計が整備されていない刑事施設等と同様に、必要の都度、施設外の医療機関に検査を依頼するなどして対処することが十分可能であると認められた。
そこで、8刑事施設等で、18年度から22年度までの間に実施した脳波検査について、施設外の医療機関に検査を依頼したとした場合に支払が必要となる診療報酬の額を計算すると計99万余円となり、前記脳波計の整備に係る経費1419万余円と比較すると1320万余円の開差が生ずることになると認められた。
したがって、法務省において、使用実績等により整備の必要性について十分な検討を行わないまま、脳波計を整備している事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、法務省において、脳波計の整備に当たって、使用実績等により十分な検討を行い、整備を適切に行うことの必要性についての認識が十分でなかったことなどによるものと認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、法務省は、23年9月に、脳波計の整備が適切に行われるよう、次のような内容の指針を策定するなどの処置を講じた。
ア 今後、医療法に基づき病院として開設の承認を受けるなどした医療刑務所及び医療少年院以外の刑事施設等には、原則として脳波計を整備しないこととし、将来において、脳波検査が必要な患者が著しく増加するなどした場合には、各刑事施設等における使用実績により今後の使用予測を行うなどして、その整備の必要性についての検討を十分に行った上で脳波計の整備の要否を決定すること
イ 現在、上記の医療刑務所及び医療少年院以外の刑事施設等に設置されている脳波計については、広域活用のための他刑事施設等への管理換、売却等を行うこと