会計名及び科目 | 登記特別会計 | (項)事務取扱費 | |
部局等 | 法務本省、6法務局、32地方法務局 | ||
契約の概要 | 土地所有者等の立会いの下で筆界の確認を行い筆界点に杭を設置し、その筆界点の測量を行うなどして、登記所備付地図を作成するもの | ||
契約の相手方 | 36法人、18個人 | ||
契約 | 平成21年4月〜22年6月一般競争契約、随意契約 | ||
予定価格の積算額 | 15億4247万余円
(平成21、22両年度)
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低減できた予定価格の積算額 | 3450万円
(平成21、22両年度)
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法務省は、不動産登記法(平成16年法律第123号)第14条第1項の規定により登記所に備え付けることとされている土地の位置及び境界(以下「筆界」という。)を特定できる地図(以下「登記所備付地図」という。)を整備しており、地図混乱地域(注1)
を対象として重点的かつ緊急的に整備することにより、都市再生の円滑な推進に寄与するとしている。
このため、法務局及び地方法務局(以下「法務局等」という。)は、業者と登記所備付地図作成作業請負契約(以下「作業契約」という。)を締結して、土地所有者等の立会いの下で筆界の確認を行い筆界点に杭(舗装された路面等、堅固な地盤であるため杭の設置が困難な場合は金属鋲(びょう))を設置し(以下、この一連の作業のための業者の立会いを「現地立会」という。)、その筆界点の測量を行い、登記所備付地図を作成するなどの作業を行わせている。
そして、作業契約に係る予定価格については、杭等の材料費、測量主任技師等の人件費及び諸経費から作業種別ごとに作業単価を算出し、これに対象とする筆数等を乗じて、各作業種別の費用を算定し、これを合計したものに消費税を加える方法等により積算している。
本院は、経済性等の観点から、予定価格の積算における杭の材料費は作業等の実態に合ったものとなっているかなどに着眼して、38法務局等が平成21、22両年度に締結した作業契約計62件、契約金額計14億8312万余円を対象として検査を行った。
検査に当たっては、12法務局等(注2)
において、契約書、仕様書、予定価格積算内訳書等の関係書類を確認したり、現地を確認したりするなどして会計実地検査を行うとともに、残る26法務局等(注3)
については、上記の関係書類の提出を受け、これを確認するなどして検査を行った。
12法務局等 東京、大阪両法務局及び前橋、奈良、山口、松江、長崎、宮崎、那覇、福島、青森、松山各地方法務局
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26法務局等 広島、福岡、仙台、高松各法務局及び横浜、千葉、宇都宮、新潟、京都、神戸、大津、和歌山、岐阜、金沢、富山、岡山、鳥取、佐賀、大分、熊本、鹿児島、山形、盛岡、秋田、函館、徳島各地方法務局
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検査したところ、次のような事態が見受けられた。
38法務局等は、前記の作業契約62件について、法務本省から示達を受けた本件契約に係る予算の内訳を参考として、前記の方法により予定価格を計15億4247万余円と積算していた。このうち、現地立会の費用については、以下のように算定していた。
〔1〕 土地の筆界点に設置する杭の材料費(土地1筆当たり4.2本、1本当たり200円)、現地立会で作業を行う測量主任技師等の人件費及び諸経費から土地1筆当たりの作業単価を算出し、これに対象地区に所在する土地の筆数を乗じて、1回目の現地立会の費用を算定する。
〔2〕 土地所有者等間の主張が異なるなどして、1回の現地立会では筆界の確認ができない場合があるため、2回目以降最大4回目までの再度の現地立会の費用を予定価格に計上することとし、その算定に当たっては、回数を重ねるごとに現地立会は減っていくことを考慮して、2回目以降の現地立会の対象となる筆数を4回目まで回数ごとに逓減させて算出し、これにそれぞれ上記の〔1〕 と同様に杭の材料費、人件費及び諸経費から算定した作業単価を乗じて、2回目以降の回数ごとの現地立会の費用を算定する。
しかし、仕様書等によれば、土地の筆界点に設置する杭は、土地所有者等から同意が得られた上で行う筆界の確認の際に設置するものとされていることから、現地立会を複数回実施したとしても杭の設置は1回で足りると認められた。
また、土地所有者等間の主張が異なった際に、それらの者の要望により杭を現地立会ごとに設置し直すなどの必要が生じた場合においても、〔1〕 土砂等の地盤の場合に用いる杭は、引き抜いて再使用することが可能であることから、1本で足り、〔2〕 アスファルト面等の堅固な地盤の場合に用いる金属鋲は、再使用することは難しいが、アスファルト面等には市販されているペンタイプのマーカーで印を付すことができることから、土地所有者等間の主張が異なっている間はマーカーの印によることとして、それらの最終的な同意が得られた上で行う筆界の確認の際に1回設置することで足りると認められた。現に、会計実地検査を行った法務局等における現地立会の中には、このようにアスファルト面等にマーカーで印を付しておき、土地所有者等の最終的な同意が得られた上で行う筆界の確認の際に金属鋲を設置しているものがあった。
したがって、予定価格の積算において、現地立会を複数回行う場合であっても、土地の筆界点に設置する杭の材料費については現地立会の費用に1回分のみ計上することで足りることから、現地立会の費用に複数回計上している事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
上記のとおり、土地の筆界点に設置する杭の材料費を現地立会の費用に1回分のみ計上することとして、38法務局等が締結した前記の作業契約62件について予定価格の積算額を修正計算すると計15億0795万余円となり、前記の積算額計15億4247万余円を約3450万円低減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、法務局等において、作業契約について作業等の実態に合った予定価格の積算を行うことについての認識が十分でなかったこと、法務省において、作業契約の予定価格の積算についての指導が十分でなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、法務省は、23年8月に各法務局等に対して通知を発して、24年度から、作業契約の予定価格の積算に当たり、作業等の実態に合わせて、土地の筆界点に設置する杭の材料費を現地立会の費用に1回分のみ計上することとする処置を講じた。