会計名及び科目 | 一般会計 (組織)在外公館 (項)在外公館共通費 |
部局等 | 外務本省 |
着後手当の概要 | 新在勤地に到着後、新住居を見つけるまでの間のホテル等の宿泊料や挨拶等に要する費用に充てるための旅費 |
赴任旅費の支給額 | 66億9662万余円(平成21、22両年度) |
上記のうち在外公館の長に対する着後手当の支給額 | 6062万余円
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節減できた着後手当の支給額 | 1795万円(平成21、22両年度)
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(平成23年10月28日付け 外務大臣宛て)
標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。
記
貴省は、諸外国において相手国政府との交渉、邦人保護等の事務を行うため、平成22年度末現在で、大使館141公館(兼勤の特命全権大使に代わり臨時代理大使が常駐する8公館を含む。)、総領事館63公館、日本政府代表部7公館、計211公館を設置している。
そして、職員を各国に所在する在外公館へ本邦や他の在外公館から転任させたり、在外公館から本邦へ帰任させたりしている(以下、これらの転任及び帰任を合わせて「赴任」という。)。
貴省は、赴任をする職員に対して、国家公務員等の旅費に関する法律(昭和25年法律第114号。以下「旅費法」という。)に基づき、赴任に伴う旅費(以下「赴任旅費」という。)として21年度は延べ2,349人に対して計37億0987万余円、22年度は延べ2,338人に対して計29億8674万余円、合計66億9662万余円を支給している。
この赴任旅費には、航空賃等のほかに着後手当(扶養親族の移転に伴う旅費のうちの着後手当相当分を含む。以下同じ。)があり、この着後手当は、新在勤地に到着後、新住居を見つけるまでの間のホテル等の宿泊料や挨拶等に要する費用に充てるために支給するものとされている。そして、その支給額は旅費法第24条、第37条等により、内国旅行においては日当定額の5日分及び宿泊料定額の5夜分に相当する額(以下、日当定額及び宿泊料定額の一定日数分に相当する額を「5日5夜分」等という。)、外国旅行においては10日10夜分とそれぞれ定められている。
また、旅費の調整について定めた旅費法第46条では、各庁の長は、法律の規定による旅費を支給した場合には不当に旅行の実費を超えた旅費又は通常必要としない旅費を支給することとなる場合には、その実費を超えることとなる部分の旅費又はその必要としない部分の旅費を支給しないことができるとしている。
これを受けて、国家公務員等の旅費に関する法律の運用方針について(昭和27年蔵計第922号。以下「運用方針」という。)において、正規の旅費を支給することが旅費計算の建前に照らして適当でない場合には旅費の調整を行うこととしており、内国旅行の着後手当については、新在勤地に到着後直ちに職員のための国設宿舎又は自宅に入る場合には5日5夜分を2日2夜分に減額して支給するなどの基準が示されている。
貴省は、外国旅行による転任の際の着後手当の支給については、旅費法第46条に基づく調整を行うことなく10日10夜分を支給している。
一方で、住居手当の支給の際には、住居手当の支給に関する規則(昭和44年外務省令第7号。以下「規則」という。)第9条により、着後手当10日10夜分に含まれる宿泊費に対応する日数を控除した日数をもって住居手当の額を計算することとしている。そして、住居手当の支給に関する規則の実施規程(昭和44年外務省訓令第5号)第4条により、規則第9条に規定する着後手当に含まれる宿泊費に対応する日数は3日とすることを定めていることから、住居手当の計算に当たっては3日分を控除している。
また、在外公館に勤務する職員のうち在外公館の長(以下「館長」という。)は、国家公務員宿舎法(昭和24年法律第117号)により無料で公邸の貸与を受けることとされていることから、館長が公邸に入居する場合には、住居手当が支給されず、住居手当の計算における着後手当に含まれる宿泊費に対応する日数の控除も行われていない。
前記のとおり、貴省が職員に支給する赴任旅費は、毎年度多額に上っている。
そこで、合規性、経済性等の観点から、貴省における赴任旅費の支給、特に無料で公邸の貸与を受けている館長への着後手当の支給が、旅費法等の趣旨を踏まえて転任の際の宿泊の実態に即して適切に行われているかに着眼して、検査を行った。
検査に当たっては、21、22両年度に館長に支給した着後手当、21年度計71件、2689万余円、22年度計87件、3372万余円、合計158件、6062万余円について、貴省本省において、旅費の請求書を基に旅費担当者から旅費の請求、審査、支払事務等について説明を聴取したり、関係書類により館長及びその扶養親族(以下「館長等」という。)の転任後の公邸への入居状況を確認したりなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、着後手当の支給が適切でないと認められる事態が次のとおり見受けられた。
館長の転任の際の着後手当の支給については、前記のとおり、貴省は、10日10夜分を一律に支給している。
そこで、館長等が転任した後の公邸への入居状況について確認したところ、館長が転任する国には全て公邸が設置されていて、21、22両年度に館長に支給した着後手当158件のうち、ほぼ全てに当たる157件において、館長等は到着後直ちに公邸に入居していた。
このように、館長等については、新在勤地に到着後直ちに公邸に入居することが一般的であり、その場合には新住居を見つけるまでのホテル等の宿泊料を要しないことが明らかであることから、新在勤地に到着後直ちに公邸に入居している場合、通常必要としない旅費については減額調整できるという旅費法第46条、内国旅行の着後手当に係る運用方針の趣旨等を踏まえ、着後手当を減額調整する必要があると認められる。
貴省は、前記のとおり住居手当の計算に際して、着後手当に含まれる宿泊費に対応する日数を3日分として控除していることから、館長の着後手当に含まれる宿泊費に対応する日数についても3日分と仮定し、到着後直ちに公邸に入居している157件の着後手当について、10日10夜分から3日3夜分を減額して支給したとすれば、前記の館長に対する着後手当の支給額21年度計2689万余円及び22年度計3372万余円、合計6062万余円は、21年度計1895万余円、22年度計2371万余円、合計4266万余円となり、支給額をそれぞれ794万余円、1001万余円、計1795万余円節減できたと認められる。
上記のように、館長に対する赴任旅費の支給に当たり、転任の際の宿泊の実態に即した適切な減額調整を行わないまま着後手当を支給している事態は適切とは認められず、是正改善を図る要があると認められる。
このような事態が生じているのは、貴省において、着後手当の支給に当たり、宿泊の実態に即して、通常必要としない旅費については減額調整できるという旅費法第46条や内国旅行の着後手当に係る運用方針の趣旨等に対する認識が十分でなかったことによると認められる。
貴省は、毎年度多数の館長を在外公館に転任させており、今後も館長に対して着後手当を支給することとなることから、その支給に当たっては、館長等の宿泊の実態に即して旅費法第46条に基づき減額調整をするなどの所要の措置を講じ、もって着後手当の支給の適正化を図るよう是正改善の処置を求める。