会計名及び科目 | 一般会計 (組織)在外公館 (項)在外公館共通費 |
部局等 | 外務本省 |
在外公館に配備する医薬品等の調達の概要 | 在外公館において医務官が必要に応じて診療を行う際に使用する医薬品等を調達するもの |
医薬品等の調達額 | 1億5433万余円(平成20年度〜22年度) |
後発医薬品を調達することにより節減できた調達額 | 755万円(平成20年度〜22年度)
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外務省は、平成23年1月1日現在で、91公館に93人の医務官を配置している。そして、医務官は、在外公館に勤務する職員及びその家族に対する保健指導とともに必要に応じて投薬等の診療を行うなどしている。
医務官が診療を行う際に使用する医薬品及び医療用品類(以下「医薬品等」という。)の調達は、外務本省が毎年度実施しており、その契約手続は、次のとおりとなっている。
〔1〕 大臣官房会計課福利厚生室は、医薬品等の商品名、数量等を記載した入札仕様書(以下「仕様書」という。)を作成する。仕様書の作成に当たり、医務官が診療を行う上で必要と判断した医薬品等を取り入れるとともに、同室の医師等に仕様書に記載する医薬品等の適格性の確認等を行う。
〔2〕 これを受けて、大臣官房会計課は、一般競争入札により、仕様書に基づく医薬品等の調達契約を単価契約で締結する。
医薬品のうち、新しい有効成分、効能及び効果を有していて、臨床試験等により有効性や安全性が確認されて承認された医薬品は「新医薬品」、新医薬品と有効成分、分量、用法、用量、効能及び効果(以下、合わせて「有効成分等」という。)について同一性を有する医薬品は「後発医薬品」、後発医薬品がある新医薬品は「先発医薬品」とされている。
また、医薬品の名称には、薬効成分となる化学物質の名称である「一般名」と各製造販売業者等が薬事法(昭和35年法律第145号)に基づき承認審査を受けて販売する際の名称である「商品名」とがあり、各医薬品には両方の名称が付けられていて、後発医薬品には先発医薬品と同一の一般名が付けられている。
医薬品の薬価は、保険医療機関又は保険薬局が薬剤に係る診療報酬を請求する際の算定の基礎となる価格であり、厚生労働省がこれを定めた上で告示することになっている。このうち後発医薬品の薬価は、その薬価が初めて告示される場合には、先発医薬品の薬価に0.7を乗じて算定した価格とするなどとされており、先発医薬品の薬価より安価となるのが一般的である。
厚生労働省は、保険医療機関等が後発医薬品の使用を促進できるような環境を整えるため、18年3月に、後発医薬品の安定供給に関する通知を発したり、19年3月に、後発医薬品の情報提供体制の整備等について周知徹底を図る通知を発したりしている。
さらに、政府は、19年6月の「経済財政改革の基本方針2007」(平成19年6月閣議決定)において、後発医薬品の使用促進について、「24年度までに、後発医薬品の数量シェアを30%(現状より倍増)以上とする。」という目標を掲げており、厚生労働省は、その目標達成に向け国等が取り組むべき内容をまとめた「後発医薬品の安心使用促進アクションプログラム」(平成19年10月策定)に基づき、後発医薬品の安定供給、品質の確保、情報提供体制の強化等、後発医薬品に対する患者及び医療関係者の信頼を高めるための取組を進めている。そして、厚生労働省は、20年4月から、投薬を行うに当たっては、後発医薬品の使用を考慮するように努めなければならないなどとして、保険医療機関に対して後発医薬品の使用を促している。
本院は、経済性等の観点から、医薬品等の調達は経済的なものとなっているかなどに着眼して、外務本省において、20年度から22年度までの間に外務本省が調達した医薬品等を対象として、仕様書等の書類により会計実地検査を行った。
検査したところ、外務本省は、20年度5267万余円、21年度5087万余円、22年度5078万余円、計1億5433万余円の医薬品等を調達していた。そして、調達した医薬品延べ1,125品目についてみると、後発医薬品がなかったり、後発医薬品があっても先発医薬品に比べて信頼性や安定供給等の面から不安があったりするとして、仕様書に特定の先発医薬品等の商品名を記載して、調達する医薬品を限定していたものが834品目あったが、このうち238品目については、調達した先発医薬品の単価に比べて薬価が安価で有効成分等について同一性を有する後発医薬品があるものであった。
しかし、前記のように、政府においても、後発医薬品の安定供給、情報提供体制等について、後発医薬品の使用を促進できるような環境を整えてきている。このため、医薬品の調達に当たっては、医務官が診療上の必要に基づいて医薬品を指定する場合を除いて、仕様書に一般名を記載するなどして医薬品を広く選定できるようにすれば、より経済的に医薬品を調達することが可能であった。
したがって、経済的な医薬品の調達について十分な検討を行わないまま、先発医薬品を調達していた事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
20年度から22年度までの間に調達した先発医薬品のうち、仕様書に特定の先発医薬品の商品名を記載していた前記の238品目について後発医薬品を調達できるようにし、最も高価な後発医薬品の薬価により調達することとして計算すると、医薬品等の調達に要する額はそれぞれ、5025万余円、4855万余円、4796万余円となり、前記の調達額5267万余円、5087万余円、5078万余円に比べて、それぞれ242万余円、231万余円、282万余円、計755万余円節減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、外務本省において、後発医薬品の使用促進を図るための安定供給や情報提供体制の整備等に関する政府の取組についての認識が十分でなかったため、医薬品をより広く選定することによる経済的な医薬品の調達の検討が十分でなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、外務省は、23年4月の契約から、医務官が診療上の必要に基づいて医薬品を指定する場合を除き、仕様書に一般名を記載することとして、後発医薬品をより広く選定できるよう処置を講じた。