外務省又は独立行政法人国際協力機構(以下「機構」という。)が行う政府開発援助について、〔1〕 スマトラ沖大地震及びインド洋津波被害に対するノン・プロジェクト無償資金協力事業において、整備した施設等の稼働が低調となっている事態、〔2〕 草の根・人間の安全保障無償資金協力事業において、援助した外来患者区画を含む保健センターが完成しておらず、使用開始のめどが立っていない事態、〔3〕 一般文化無償資金協力事業において、供与した国立博物館の視聴覚機材の一部が使用されていない事態、〔4〕 円借款事業において、建設された脱硫プラントが稼働していない事態が見受けられた。
したがって、外務省及び機構において、援助の効果が十分に発現するよう、上記の事態を改善するための働きかけなどを相手国政府等に対して行うとともに、外務省において、〔1〕 大規模な地震・津波等の被害に対する復旧支援事業の実施に当たっては、被災地の状況等についての調査・検討を可能な限り十分に行ったり、〔2〕 一体的に運用される施設の一部のみを援助する案件として審査する場合は、施設の全体計画が資金面で実現可能か審査したりするよう、また、機構において、〔3〕 新たな視聴覚機材を調達する案件を実施する際は、事業実施機関が要請する機材の調達数量等の妥当性について十分に検討したり、〔4〕 複雑なプラント等の設備の建設事業を実施する際は、修理等による設備の稼働停止時間を最小限に抑えるよう事業実施機関等と事業完了後も必要に応じて十分に協議・検討したりするよう、外務大臣及び独立行政法人国際協力機構理事長に対して平成22年10月に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。
本院は、外務本省及び機構本部において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、外務省及び機構は、本院指摘の趣旨に沿い、相手国政府等に対して、指摘を受けた改善を要する案件の事業効果の早期発現に向けた働きかけを行うとともに、類似の案件における同様の事態の再発防止のために次のような処置を講じていた。
ア 大規模な地震、津波等の被害に対する復旧支援事業の実施について、外務省は、被災地の状況、現地関係機関の能力、住民等の需要を踏まえた質の高い調査・検討を十分に行うとともに、事業着手後において可能な限り被災地の状況に柔軟に対応することとした。
イ 草の根・人間の安全保障無償資金協力事業について、外務省は、23年5月に同事業のガイドラインを改定して、一体的に運用される施設の一部のみを援助する案件として審査する場合は、施設の全体計画が資金面で実現可能か審査することとした。
ウ 一般文化無償資金協力事業について、機構は、23年6月に文書を発して、新たな視聴覚機材を調達する案件を実施する際は、事業実施機関が要請する機材の調達数量等の妥当性を検討するよう機構内部に周知した。
エ 複雑なプラント等の設備の建設事業について、機構は、23年7月に在外事務所等に通知を発して、修理等による設備の稼働停止時間を最小限に抑えるよう、事業実施機関等との間で事業完了後も稼働の状況や修理の方法等について必要に応じて十分に協議・検討するよう指示した。