会計名及び科目 | 一般会計 国税収納金整理資金 | (款)還付金 (項)各税還付金 |
部局等 | 広島西税務署 | |
還付金等の支払額 | 8,866,652円(平成22年度) | |
不当と認める還付金等の支払額 | 8,866,652円(平成22年度) |
国税の納税者は、国税通則法(昭和37年法律第66号。以下「通則法」という。)等の定めるところにより、課税標準額、税額等を記載した確定申告書を法定申告期限までに税務署長に提出して、国税を納付しなければならないこととされている。
一方、納税者は、国税として納付した税額が本来納税すべき税額より多いためその全部又は一部について還付を求める場合等には、還付申告書(還付金額を記載した確定申告書)を税務署長に提出することとされている。そして、税務署長は、通則法第56条等の規定に基づき、還付申告書に記載された還付金額について還付加算金が生じた場合は還付加算金を含めて遅滞なく納税者に支払うこととされている。
税務署長は、通則法第57条の規定に基づき、還付金又は過誤納金の支払を受けるべき納税者に国税の未納があるときには、還付金又は過誤納金の還付に代えてこれを国税の未納額に充当しなければならないこととされている。
ただし、消費税及び地方消費税に係る還付金又は過誤納金(これらに加算すべき還付加算金を含む。以下「還付金等」という。)の還付を受けるべき納税者に国税の未納がある場合等については、地方税法(昭和25年法律第226号)附則第9条の10の規定に基づき、その納税者は、税務署長に対し、還付金等により未納額を納付することを委託したものとみなすこととされている(以下、この納付を「委託納付」という。)。そのため、このような場合には、税務署長は、未納額に相当する還付金等を自ら受領して、納税者に代わって未納額を納付しなければならないこととされている。
国税の徴収は、通則法第43条の規定に基づき、その国税の納税地を所轄する税務署において行われることとされている。このため、納税地に異動があった場合には、異動前の納税地を所轄する税務署から、異動後の納税地を所轄する税務署に徴収の引継ぎを行うこととされている。そして、この徴収の引継ぎは、国税総合管理システム(以下「KSKシステム」という。)により税目別、年度別等の徴収決定口座(以下「口座」という。)が自動的に作成されることにより行われることとなっている。
一方、国税の滞納の金額が一定金額以上になるなどの場合には、その滞納となった国税の徴収については国税局に引き継ぐことができることとされている(以下、国税局に徴収の引継ぎが行われた納税者を「引継納税者」という。)。この場合、滞納となった国税以外の徴収は、引き続き引継ぎを行った税務署が行うこととなっている。
そして、引継納税者の納税地に異動があった場合には、滞納となった国税の口座が前記のようには自動的に作成されないため、異動後の納税地を所轄する税務署は、各口座の作成状況を確認した上で口座を作成することとなっている。
還付金等の支払事務に当たっては、国税収納金整理資金事務取扱規則(昭和29年大蔵省令第39号)等の規定により、国税の未納状況を確認することとされている。そして、その事務については、還付金等の支払事務の担当者(以下「担当者」という。)、審査担当者及び統括国税徴収官等により、おおむね次のとおり行うこととされている。
ア 担当者は、KSKシステムにより、還付金発生チェックリスト(注1)
(以下「チェックリスト」という。)、還付金未納口座一覧表(注2)
(以下「未納一覧表」という。)等を出力して、未納の内容を確認するなどした上で、これらの帳票等を審査担当者に回付する。
なお、引継納税者については国税局に徴収の引継ぎが行われていることから、税務署においては未納一覧表に国税局への連絡等の確認が必要となる注意メッセージが表示されることとなっている。
イ 審査担当者は、未納一覧表の内容等を審査し、担当者に必要な処理を行わせた上で、未納一覧表その他の関係帳票を統括国税徴収官等に回付する。
ウ 統括国税徴収官等が回付を受けた帳票の確認・決裁を行った後に、統括国税徴収官は支払決定を行う。
(注1) | 還付金発生チェックリスト 引継納税者等に還付金等が発生した場合に国税の未納状 況を確認するよう注意を喚起するため口座に基づき自動的に作成される帳票
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(注2) | 還付金未納口座一覧表 還付金等が発生した納税者のうち国税の未納がある納税者を一覧表にした帳票
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本院は、平成23年4月に、予算執行職員等の責任に関する法律(昭和25年法律第172号)第4条第4項の規定に基づき財務大臣から、広島西税務署において広島国税局に徴収の引継ぎが行われていたA法人に対する還付金等の支払事務に当たり法令に違反して支払命令を行ったとの通知を受けた。このため、合規性等の観点から、上記の還付金等の支払事務が適切に行われたかなどに着眼して、国税庁、広島国税局及び広島西税務署において関係資料の提出を求めるなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、本件還付金等の支払事務において、次のような適切とは認められない事態が見受けられた。
A法人は、滞納の金額が一定金額以上となったため、B税務署から広島国税局に徴収が引き継がれていたが、納税地が22年6月にB税務署から広島西税務署に異動した際に、広島西税務署においてA法人の口座の作成状況の確認が行われなかったため、口座が作成されないままとなっていた。その後、23年1月に、消費税及び地方消費税の還付金額を8,697,452円と記載した還付申告書がA法人から提出されたことにより還付金等が発生したが、口座が作成されていなかったため、本来出力されるはずのチェックリストが出力されず、また、未納一覧表に注意メッセージが表示されていたにもかかわらず、担当者及び審査担当者は注意メッセージを見落とすなどしたため、広島国税局に対してA法人に未納となっている国税があることを確認していなかった。そして、審査担当者は、未納一覧表その他の関係帳票を統括国税徴収官に回付していなかったため、統括国税徴収官は、未納一覧表その他の関係帳票の確認・決裁を行わずに支払決定を行っていた。
したがって、広島西税務署において、委託納付により未納となっている国税に充てるべき消費税及び地方消費税の還付金等8,866,652円(うち還付加算金169,200円)をA法人に還付したことは、法令に違反していて不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、広島西税務署において引継納税者の未納状況の確認が十分に行われていなかったことなどによると認められる。