会計名及び科目 | 一般会計 国税収納金整理資金 | (款)歳入組入資金受入 (項)各税受入金 |
部局等 | 国税庁 | |
課税の根拠 | 所得税法(昭和40年法律第33号) | |
国有財産である畦畔を時効取得した場合における所得税の課税の概要 | 国有財産である畦畔を時効により取得した者に対して、その畦畔の価額を一時所得として所得税を課するもの | |
国有財産である畦畔を時効取得した個人のうち検査の対象とした人数 | 340人 | |
上記のうち時効取得に係る所得税の申告を適正に行っていなかった人数 | 333人 | |
上記の者が時効取得していた畦畔の価額(国有財産台帳価格) | 22億2551万円(背景金額)(平成19年度〜21年度) |
田畑等の耕地間に存在する「あぜ」など(以下「畦畔」という。)のうち公図上地番の記載がなく、いずれの者にも属さないため国有財産とされた畦畔(以下「国有畦畔」という。)について、個人が取得時効を援用して所有権を取得しようとする場合には、財務局長等に国有財産時効取得確認申請書を提出することとされている。そして、同申請書の提出を受けた財務局長等は、取得時効の完成を認定した場合は、申請者に対してその旨を通知し、当該国有畦畔を国有財産台帳から除却するとともに、当該国有畦畔について国に所有権の登記がある場合には、申請者への移転登記を行うこととされている。
このように、財務局等は、国有財産の時効取得に係る事務を行っていることから、時効により国有畦畔を取得した者(以下「時効取得者」といい、時効取得者が取得した国有畦畔を「時効取得畦畔」という。)についての情報を保有し管理している。
時効取得畦畔については、時効取得時の時価相当額が、労務その他の役務の対価又は資産の譲渡の対価としての性質を有しない一時的な所得(以下「一時所得」という。)として、所得税の課税の対象となる。
国税庁は、官公署等に所得税の調査に関し参考となるべき帳簿書類の提供等の協力を求めることができるとする所得税法(昭和40年法律第33号)の規定(以下、所得税法の規定に基づくこのような要請を「所得税法に基づく協力要請」という。)に基づき、時効取得畦畔に係る所有権の移転登記の情報を課税資料として収集している。そして、各税務署において、その課税資料を活用して、時効取得者が所得税を適正に申告しているかについて申告審理を行うこととしている。
前記のとおり、個人が国有畦畔を時効により取得した場合、その時価相当額は一時所得として所得税の申告が必要となるので、その申告漏れを未然に防止する意味でも国税庁による時効取得者の把握が重要である。
そこで、本院は、有効性等の観点から、国税庁において時効取得畦畔に係る課税に必要な資料が収集されているか、また、それらの資料が有効に活用されて、課税の対象者となる時効取得者が的確に把握され課税が行われているかなどに着眼して、平成19年から21年までの間に時効により国有財産台帳価格(注1)
で年間合計300万円以上の国有畦畔を取得した482人(時効取得畦畔の面積計57,720.6m2
、国有財産台帳価格計34億0328万余円)のうち、22税務署(注2)
管内の340人(同40,153.4m2
、23億2599万余円)を対象として、所得税の申告書等により会計実地検査を行った。
(注1) | 国有財産台帳価格 国有財産法施行令(昭和23年政令第246号)第21条の規定等に基づいて定まるものであって、一時所得の総収入金額に算入すべき時効取得時の価額とは異なる。
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(注2) | 22税務署 川越、蒲田、渋谷、中野、荻窪、板橋、立川、武蔵府中、鶴見、横浜中、横浜南、戸塚、緑、川崎南、川崎北、横須賀、平塚、静岡、沼津、富士、右京、神戸各税務署
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検査したところ、次表のとおり、上記の時効取得者340人のうち、333人(時効取得畦畔の面積計38,253.1m2
、国有財産台帳価格計22億2551万余円)は、時効取得畦畔の時価相当額を一時所得として適正に申告していなかった。そして、その内訳をみると、所得税の申告書を提出していなかった者が51人(同4,001.9m2
、2億6659万余円)、申告書は提出していたものの、時効取得畦畔について一時所得として申告していなかった者が282人(同34,251.1m2
、19億5892万余円)となっていた。
また、各税務署における申告審理の状況をみると、上記333人のうち4人(同349.7m2
、2464万余円)については、時効取得畦畔の移転登記が行われていて、課税資料が収集されていたが、税務署においてその課税資料が申告審理に活用されていなかった。そして、残りの329人(同37,903.4m2
、22億0087万余円)については、時効取得時に国に所有権の登記がなかったため時効取得畦畔の移転登記が行われていなかったことから、国税庁において課税資料が収集されておらず、税務署において時効取得者と認識できない状況となっていた。
上段:人数(単位:人) | ||
中段:面積(単位:m2 ) | ||
下段:国有財産台帳価格(単位:千円) |
区分 | 全体 | 申告状況 | 課税資料の収集状況 | ||
\ | 申告書を提出していなかった者 | 申告書を提出していたものの時効取得畦畔について一時所得として申告していなかった者 | 課税資料が収集されていた者 | 課税資料が収集されていなかった者 | |
年 | |||||
平成 19年 |
125 | 14 | 111 | − | 125 |
15,775.2 | 1,154.4 | 14,620.8 | − | 15,775.2 | |
902,395 | 89,203 | 813,191 | − | 902,395 | |
20年 | 92 | 14 | 78 | 3 | 89 |
9,868.4 | 1,325.6 | 8,542.7 | 296.7 | 9,571.6 | |
641,920 | 74,932 | 566,988 | 20,435 | 9,571.6 | |
21年 | 116 | 23 | 93 | 1 | 115 |
12,609.4 | 1,521.9 | 11,087.5 | 52.9 | 12,556.4 | |
681,203 | 102,455 | 578,748 | 4,212 | 676,990 | |
計 | 333 | 51 | 282 | 4 | 329 |
38,253.1 | 4,001.9 | 34,251.1 | 349.7 | 37,903.4 | |
2,225,519 | 266,591 | 1,958,928 | 24,648 | 2,200,870 |
しかし、前記のとおり、時効取得者に関する情報は財務局等において保有され管理されて いることから、国税庁において所得税法に基づく協力要請を行い、その情報を時効取得者の 把握及び課税に必要な資料として収集し、税務署において申告審理に活用することにより、 時効取得畦畔の所有権の移転登記が行われていない場合であっても、時効取得者を的確に把 握することが可能であった。
このように、国税庁において、課税資料があるのに申告審理に活用されていなかったり、 所有権の移転登記が行われていない時効取得畦畔について時効取得者に係る課税資料を収集 することとされていなかったため、申告審理に当たり時効取得者の把握ができなかったりし ていて、検査の対象とした340人のうち333人に係る時効取得畦畔(国有財産台帳価格計22 億2551万余円)について課税が行われていない事態は適切とは認められず、改善の必要があ ると認められた。
このような事態が生じていたのは、時効取得者において、時効取得畦畔の時価相当額が一 時所得として所得税の課税の対象になることについての理解や認識が不足していたことにも よるが、次のことなどによると認められた。
ア 国税庁において、所有権の移転登記が行われていない時効取得畦畔についても、時効取 得者に係る課税資料を収集し、申告審理に活用することについての検討が十分でなかった こと
イ 国税庁、国税局等及び税務署において、時効取得畦畔の時価相当額が一時所得として所 得税の課税の対象になることについて、時効取得者に対する周知が十分なものとなってい なかったこと
上記についての本院の指摘に基づき、国税庁は、時効取得者を的確に把握して課税を行う ことなどができるよう、23年6月及び7月に、個人課税部門の事務処理手続を定めている 個人課税事務提要を改正したり、国税局等に通知を発したりするなどして、次のような処置 を講じた。
ア 申告審理に活用するため、財務省に対して所得税法に基づく協力要請を行い、時効取得 者についての情報を課税資料として収集することとした。また、収集した時効取得者に係 る課税資料を申告審理に活用することとする手続を定めるとともに、国税局等への周知徹 底を図るなどして、時効取得者に係る課税資料が有効に活用されるよう事務処理体制の整 備を図った。
イ 時効取得畦畔の時価相当額が一時所得として所得税の課税の対象になることについて、 時効取得者に対してリーフレットを配布したり、国税庁のホームページに掲載したりする などの方法により周知徹底を図った。