科学研究費補助金は、我が国の学術を振興するために、人文・社会科学から自然科学まであらゆる分野における優れた独創的・先駆的な研究を格段に発展させることを目的として、科学研究を行う研究者の代表者(以下「研究代表者」という。平成15年度以前は、研究代表者又は研究代表者の所属する大学、大学共同利用機関等の学術研究を行う機関(以下「研究機関」という。)の代表者)等に対して、科学研究等に必要な経費を国が補助するものである。
この補助金の交付額は、「科学研究費補助金(科学研究費及び学術創成研究費)の取扱いについて」(平成15年文科振第92号文部科学省研究振興局長通知)等により、研究に使用する消耗品等(以下「研究用物品」という。)の購入費等の研究計画の遂行等に必要な経費(直接経費)のほか、一部の研究種目については、研究の実施に伴い研究機関において必要となる管理等に係る経費(間接経費)を補助対象経費とし、その全額を補助することとなっている。
本院が、27研究機関に係る86事業主体(1大学長及び85研究代表者等)が行っている122研究課題を対象として会計実地検査を行ったところ、国立大学法人山口大学(以下「山口大学」という。)及び学校法人獨協学園獨協医科大学(以下「獨協医科大学」という。)に所属する研究代表者3名は、業者に架空の取引を指示して虚偽の納品書、請求書等を作成させ、これによりそれぞれの大学に購入代金計7,573,206円を支払わせていた。そして、山口大学に所属する研究代表者Bは、計1,056,564円を納品書等に記載された内容とは異なる機器の購入代金に充てており、また、獨協医科大学に所属する研究代表者C及びDは、計6,516,642円を業者に預けて別途に経理していた。このため、国庫補助金計7,573,206円が過大に交付されていて不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、研究代表者において、補助金の原資は税金等であり、事実に基づく適正な会計経理を行うという基本的な認識が欠けていたこと、補助金を管理する研究機関において、研究用物品の納品検査等が十分でなかったこと、及び文部科学省において、研究代表者及び研究機関に対して補助金等の不正使用の防止について必要な措置の導入や指導を行っていたものの、その周知徹底が十分でなかったことによると認められる。
これを事業主体(研究代表者(注)
)別に示すと、次のとおりである。
事業主体(研究代表者) | 補助事業 | 年度 | 補助対象経費 | 左に対する国庫補助金交付額 | 不当と認める補助対象経費 | 不当と認める国庫補助金 | 摘要 | |
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||||
(39) | B (B) |
科学研究費補助 | 19 | 1,800 | 1,800 | 1,056 | 1,056 | 不適正な経理処理 |
(40) | 大学長及びC
(C)
|
同 | 15、16 | 21,200 | 21,200 | 5,281 | 5,281 | 同 |
(41) | 大学長及びD
(D)
|
同 | 15〜17 | 3,600 | 3,600 | 1,234 | 1,234 | 同 |
(39)−(41)の計 | 26,600 | 26,600 | 7,573 | 7,573 |