会計名及び科目 | 一般会計 (組織)文部科学本省 (項)公立文教施設整備費 | |
部局等 | 文部科学本省 | |
交付の根拠 | 義務教育諸学校等の施設費の国庫負担等に関する法律(昭和33年法律第81号) | |
交付金事業者 (事業主体) |
府1、県10、市88、町7、村1、計107事業主体 | |
交付金事業の概要 | 公立の義務教育諸学校等施設の整備に要する経費に充てるため、予算の範囲内で、地方公共団体に対して交付金を交付するもの | |
107事業主体に対する交付金交付額の合計 | 673億2986万余円(平成20、21両年度) | |
上記のうち契約金額に基づき算定した場合の交付金の減少額 | 52億7203万円 |
文部科学省は、「義務教育諸学校等の施設費の国庫負担等に関する法律」(昭和33年法律第81号)等に基づき、地方公共団体が作成する公立の義務教育諸学校等施設の整備に関する施設整備計画によって実施される施設整備事業に要する経費に充てるため、地方公共団体に対し、安全・安心な学校づくり交付金(以下「交付金」という。)を交付する事業(以下「交付金事業」という。)を実施している。
この交付金は、公立の義務教育諸学校等施設の整備に要する経費について、従来、国が事業ごとに契約金額に基づき一定割合を補助していた補助金等をまとめて、地方公共団体ごとに一括して交付することにより、施設整備計画の範囲内での事業間の経費流用など弾力的な執行を可能とすることで地方の裁量を高め、地方公共団体が地域の実情を踏まえて主体的に効率的な施設整備を推進することを目的として、平成18年度に創設されたものである。
文部科学省は、交付金の交付額の算定について、安全・安心な学校づくり交付金交付要綱( 平成18年文部科学大臣裁定。以下「交付要綱」という。)等により、次のとおり定めている。
〔1〕 施設整備計画を提出する時点で、同計画に記載する交付金の算定の対象となる事業に要する経費の額については、工事請負契約が既に締結されている場合は契約金額に基づき算定した額とする。ただし、この時点で工事請負契約が締結されていない場合は、設計金額、予定価格、過去の実績額等の根拠のある金額(以下「設計金額等」という。)に基づき算定した額とする。そして、この額の一定割合を合計するなどして地方公共団体ごとに交付金の交付決定額を算定する。
〔2〕 事業が完了した時点で、実績報告書に記載する交付金の算定の対象となる事業に要する経費の額については、同計画に契約金額に基づき算定した額を記載していた場合は、実績報告書においても契約金額に基づき算定した額を記載する。ただし、同計画に設計金額等に基づき算定した額を記載していた場合は設計金額等に基づき算定した額とする。その際、入札による設計金額等から契約金額への減額は反映させないこととしている一方、設計変更等による工事費の増減は反映させることとしている。そして、この額の一定割合を合計するなどして交付金の確定額を算定する。
〔3〕 〔1〕 の交付金の交付決定額と〔2〕 の交付金の確定額とを比較して、いずれか少ない額により額の確定を行い、この額を交付金の交付額とする。
なお、交付金は23年4月1日に廃止されて、これに代わり新たに学校施設環境改善交付金が創設されたが、交付手続等の基本的な仕組みは交付金と同様なものになっている。
本院は、交付金事業について、経済性、効率性等の観点から、交付金の交付額の算定は国費の経済的かつ効率的な執行を十分に確保するものとなっているかなどに着眼して、文部科学省及び11府県(注) において会計実地検査を行った。そして、11府県及びその管内の96市町村計107地方公共団体が、20、21両年度に実施した公立の義務教育諸学校等施設の耐震補強工事等を対象とした327交付金事業(交付額計673億2986万余円)について、実績報告書等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、多くの地方公共団体では、施設整備計画を提出する時点では工事請負契約が締結されていなかったため、交付要綱等の定めに従って、当初の設計金額等に基づき交付決定額を算定しており、実績報告書では最終の設計金額等に基づき確定額を算定していた。
しかし、設計金額等に基づき確定額を算定し、これにより額の確定を行うと、従来の補助金等において契約金額に基づき額の確定を行っていたのに比べて、設計金額等と契約金額との差額相当分について交付金の交付額が増加し開差が生ずることになる。また、仮に契約金額が同額の事業を複数の地方公共団体がそれぞれ実施する場合でも、上記の開差は請負比率(設計金額等に対する契約金額の割合)の違いなどにより地方公共団体ごとに異なることになる。そこで、交付金事業の建築工事について地方公共団体ごとの請負比率の平均値を算定したところ、地方公共団体により最大で30ポイント以上の開きが見受けられるなど、同額の事業を実施した場合でも地方公共団体間で交付金の交付額が区々となる状況となっていた。
上記の事態について、契約金額に基づき確定額を算定することとすれば、設計金額等と契約金額の差額相当分について交付金の交付額が減少するとともに、同額の事業を実施した場合でも地方公共団体間で交付金の交付額が区々となる状況は解消することになる。さらに、文部科学省においてこの減少した額を他の施設整備事業に充当することにより、公立の義務教育諸学校等施設の整備を一層促進することが可能になる。
そして、前記の327交付金事業について、契約金額に基づき確定額を算定したところ、確定額が交付決定額より少額となっている229交付金事業(交付額計532億1264万余円)については交付金の交付額が計479億4061万余円となり、52億7203万余円減少することとなった。
このように、交付金事業について、設計金額等に基づき確定額を算定していたため、契約金額に基づき確定額を算定した場合と比較して交付金の交付額が増加していて、同額の事業を実施した場合でも地方公共団体間で交付金の交付額が区々となったり、交付金をより多数の施設整備事業に充当する機会を逸していたりする事態は、国費の経済的かつ効率的な執行の重要性からみて適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、文部科学省において、次のことなどによると認められた。
ア 確定額を設計金額等に基づき算定することにより、契約金額に基づき算定する場合と比較して交付金の交付額が増加し、同額の事業を実施した場合でも地方公共団体間で交付額が区々となる結果となっていることに対する認識が十分でなかったこと
イ 確定額を契約金額に基づき算定することにより、交付金の交付額を減少させ、この減少した額を他の施設整備事業に充当することにより、経済的かつ効率的に交付金事業を実施することに対する認識が十分でなかったこと
上記についての本院の指摘に基づき、文部科学省は、交付金に代えて23年度から執行される学校施設環境改善交付金について、同額の事業を実施した場合でも地方公共団体間で交付金の交付額が区々となる状況を解消するとともに、昨今の我が国の財政状況を踏まえ、限られた予算で、より多数の公立の義務教育諸学校等施設の整備の促進を図るため、23年6月に各都道府県に通知を発して、契約金額に基づき確定額を算定し、これに基づき額の確定を行うこととする処置を講じた。