国立大学法人は、毎事業年度の損益計算において生じた利益のうち、法人の当該事業年度における経営努力により生じたと認定された額を目的積立金として積み立てて、中期計画に定める使途に充てることとしている。しかし、各国立大学法人は、自主的な努力の成果とは認められない利益等を目的積立金として積み立てている一方で、目的積立金の具体的な使途や目的を定めたり公表したりしていなかった。
したがって、文部科学省において、各国立大学法人における目的積立金の計上や使途の実態を把握し、法人の自主的な努力の成果の範囲を明確なものにしたり、目的積立金の望ましい使途について基準等を定めたりなどするとともに、各国立大学法人に対して、目的積立金の具体的な使途を公表するよう指導等することなどにより、目的積立金の取扱いを合理的なものとするよう、文部科学大臣に対して平成22年9月に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。
本院は、文部科学本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、文部科学省は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 22年12月に各国立大学法人に対して通知を発して、法人の自主的な努力の成果とは認められないものや使途として適切でないものの基準を示すなどして、目的積立金の計上のために必要な法人の自主的な努力の成果の範囲や目的積立金の詳細な使途及び目的について明確にするとともに、国立大学法人に対する説明会において、その内容を周知徹底した。
また、23年4月に各国立大学法人に対して通知を発して、剰余金の発生要因及び目的積立金の取崩しの明細に係る関係調書を新たに財務諸表等の補足資料として徴することとし、これを目的積立金の計上及び使途の実態把握や目的積立金の承認に当たっての審査に活用することとした。
イ 23年2月に「「国立大学法人会計基準」及び「国立大学法人会計基準注解」に関する実務指針」(平成15年7月国立大学法人会計基準等検討会議)を改訂し、各国立大学法人が目的積立金の具体的な使途を財務諸表附属明細書において事業ごとに明示して公表するよう、各国立大学法人に対して指導等を行った。