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  • 平成22年度|
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システムの開発、機器購入等に係る契約において、契約の履行が完了していないのに事実と異なる検査調書を作成して契約代金を支払うなどしていたり、システムの機能の一部が、検討が十分でなかったことから業務上の使用に耐えないなどのため全く利用されていなかったりしていたもの


(45)—(53) システムの開発、機器購入等に係る契約において、契約の履行が完了していないのに事実と異なる検査調書を作成して契約代金を支払うなどしていたり、システムの機能の一部が、検討が十分でなかったことから業務上の使用に耐えないなどのため全く利用されていなかったりしていたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)検疫所 (項)検疫業務等実施費
部局等 厚生労働本省、8検疫所
契約名 健康監視システムソフトウェア開発業務一式等12契約
契約の概要 検疫所等が管轄する空港や海港に来航する外国からの航空機や船舶に対して実施する検疫に関する各種の情報を管理する機能等を備えたシステムの開発、機器購入、運用、保守等を行うもの
契約の相手方 東芝ソリューション株式会社
契約 平成21年9月〜22年4月契約12件(随意契約4件、一般競争契約8件)
契約金額計
763,985,775円
(平成21、22両年度)

不適正な会計経理により支払われた額(1)
588,174,090円
(平成21、22両年度)

全く利用されていなかったシステムの機能の開発等に係る額(2)
57,146,273円
(平成21年度)

(1)及び(2)の純計
608,145,008円
(平成21、22両年度)

1 会計経理等の概要

(1) 健康監視システム等の概要

 厚生労働省は、新型インフルエンザの世界的な流行が発生した場合に、検疫所、検疫所支所及び出張所(以下、これらを合わせて「検疫所等」という。)から複数の自治体に対して情報を送付する機能と検疫所等が管轄する空港や海港に来航する外国からの航空機や船舶に対して実施する検疫に関する各種の情報を管理する機能(以下「通常検疫業務機能」という。)を備えた、データベースサーバ等で構成されている健康監視システムを、平成22年3月から運用を開始することとして、職員が在勤する51検疫所等のうち20検疫所等(注1) に導入している。また、同省は、これら20検疫所等を除いた31検疫所等(注2) に、健康監視システムの通常検疫業務機能をパーソナルコンピュータ単体で使用できるように改修したシステム(以下「通常検疫業務システム」という。)を、同年4月から運用を開始することとして導入している。
 そして、厚生労働本省(以下「本省」という。)及び8検疫所(注3) は、上記の全51検疫所等における健康監視システム又は通常検疫業務システムの導入に係る開発、機器購入(習熟研修等を含む。以下同じ。)、運用、保守等を実施するため、21年9月から23年4月までの間に、全て東芝ソリューション株式会社を契約相手方とする一般競争契約又は随意契約により、14契約を契約金額計812,630,175円で締結している。

(注1)
 20検疫所等  成田空港、横浜、関西空港、神戸、福岡各検疫所、千歳空港、仙台空港、東京空港、中部空港、広島空港、門司、福岡空港、長崎、鹿児島、那覇空港各検疫所支所、福島空港、新潟空港、富山空港、小松空港、岡山空港各出張所
(注2)
 31検疫所等  小樽、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、那覇各検疫所、千葉、川崎、清水、四日市各検疫所支所、稚内、函館、旭川空港、釧路、花咲、青森空港、秋田船川、鹿島、焼津、境、水島、福山、徳山下松・岩国、坂出、松山、高知、大分・佐賀関、厳原・比田勝、宮崎空港、石垣各出張所
(注3)
 8検疫所  小樽、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡、那覇各検疫所

(2) 契約等に関する会計法令等の内容

 国が行う会計経理については、財政法(昭和22年法律第34号)、会計法(昭和22年法律第35号)、予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号)等の会計法令等に基づき行うこととされている。すなわち、国の会計年度は、毎年4月1日から翌年3月31日までとされており、また、歳出の会計年度の所属に関しては、相手方の行為の完了があった後交付するものは、その支払をなすべき日の属する年度に所属するものとされている。また、契約が履行された場合は、給付の完了を確認するために必要な検査を行い、原則として検査調書を作成しなければならず、この検査調書に基づかなければ当該契約の代金を支払うことができないなどとされている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、合規性、有効性等の観点から、健康監視システム及び通常検疫業務システムの開発、機器購入、運用、保守等に係る契約手続等が会計法令等に従って適正に行われているかなどに着眼して検査した。
 検査に当たっては、本省及び6検疫所等(注4) において、契約書、仕様書等の関係書類、設置されている機器等を確認するなどして会計実地検査を行うとともに、残りの45検疫所等については、健康監視システムの通常検疫業務機能又は通常検疫業務システムに係る利用状況に関する調書等の提出を受け、その内容を確認するなどの方法により検査を行った。

 6検疫所等  小樽、成田空港、東京、横浜各検疫所、東京空港、川崎両検疫所支所

(2) 検査の結果

 検査したところ、次のとおり適正とは認められない事態が見受けられた(ア、イには事態が重複しているものが8契約、計37,175,355円ある。)。

ア 契約の履行が完了していないのに事実と異なる検査調書を作成して契約代金を支払うなどしていたもの

(11契約 588,174,090円)

 本省が21年12月に締結した健康監視システムの機器購入に係る1契約及び8検疫所が22年3月にそれぞれ締結した通常検疫業務システムの開発等に係る8契約、計9契約、契約金額計567,425,355円については、履行期限が22年2月28日又は同年3月31日までとなっていた。しかし、いずれの契約も履行が完了したのは翌年度の22年6月1日から同月24日までの間であったにもかかわらず、本省及び8検疫所は、それぞれ適正に履行されたとする事実と異なる検査調書を作成することなどにより、現年度に履行されたこととして契約代金を支払っていた。
 また、本省は、健康監視システムの機器購入に係る契約により設置された機器等の運用及び保守について、この機器購入に係る契約の履行期限(22年2月28日)の翌日から行わせるため、22年3月及び22年度を契約期間とする2契約、契約金額計70,560,420円を締結していた。しかし、上記のとおり、健康監視システムの機器購入に係る契約の履行完了日が22年6月24日であったにもかかわらず、本省は、履行が完了していなかった同年3月1日から6月24日までの期間についても、運用及び保守の期間に含めて、この期間に係る契約金額相当額20,748,735円を支払っていた。

イ 健康監視システムの通常検疫業務機能のうち海港に係る業務に対応する機能及び通常検疫業務システムが、検討が十分でなかったことから業務上の使用に耐えないなどのため全く利用されていなかったもの

(9契約 57,146,273円)

 本省は、健康監視システムの開発を契約金額126,000,000円で行っており、このうち通常検疫業務機能の開発に当たっては、空港を管轄する検疫所等の担当者から意見を徴するなどしていた。しかし、検疫所等が空港及び海港に係る検疫業務のうち海港に係る業務を通常検疫業務機能を利用して実施する際に必要となる機能については、十分に検討していなかった。このため、前記の20検疫所等に導入した健康監視システムの通常検疫業務機能のうち海港に係る業務に対応する機能(同機能の開発に係る契約金額相当額19,970,918円)については、船舶の船名を入力する場合に、入力欄の桁数が不足しているなどして入力作業が著しく煩雑となるなどの状態となっていて、業務上の使用に耐えないものとなっていた。
 また、8検疫所が31検疫所等に導入した通常検疫業務システム(開発等に係る契約金額計37,175,355円)は、健康監視システムの通常検疫業務機能の仕様に基づいて開発されていたことから、通常検疫業務システムのうち海港に係る業務に対応する機能は健康監視システムと同様に、業務上の使用に耐えないものとなっていた。
 このようなことから、健康監視システムの通常検疫業務機能のうち海港に係る業務に対応する機能については、導入後全く利用されておらず、また、通常検疫業務システムについては、空港に係る業務に対応する機能も含めて導入後全く利用されていなかった。なお、検疫所等は、市販のソフトウェアを利用して支障なく業務を実施していた。

 したがって、本省及び8検疫所において、契約の履行が完了していないのに事実と異なる検査調書を作成して契約代金を支払うなどしていたり、健康監視システムの通常検疫業務機能及び通常検疫業務システムは、検討が十分でなかったことから機能の一部が業務上の使用に耐えないなどのため全く利用されていなかったりしていて、表のとおり、健康監視システム等の開発、機器購入、運用、保守等に係る契約金額763,985,775円のうち608,145,008円が不当と認められる。

  表 不当と認められる契約金額 (単位:円)
  部局等 年度 契約件名 契約金額 不当と認められる契約金額 指摘の態様
(45) 厚生労働本省 平成        
21 健康監視システムソフトウェア開発業務一式 126,000,000 19,970,918
21 健康監視システム動作環境等一式 530,250,000 530,250,000
21 平成22年3月分健康監視システム運用・保守業務一式 5,460,000 5,460,000
22 平成22年度健康監視システム運用・保守業務一式 65,100,420 15,288,735
(46) 小樽検疫所 21 健康監視システム通常検疫機能改修及び設定動作確認作業一式 7,195,230 7,195,230 ア、イ
(47) 仙台検疫所 21 健康監視システム通常検疫機能改修及び設定動作確認作業一式 3,597,615 3,597,615 ア、イ
(48) 東京検疫所 21 健康監視システム通常検疫機能改修及び設定動作確認作業一式 4,796,820 4,796,820 ア、イ
(49) 名古屋検疫所 21 健康監視システム通常検疫機能改修及び設定動作確認作業一式 4,796,820 4,796,820 ア、イ
(50) 大阪検疫所 21 健康監視システム通常検疫機能改修及び設定動作確認作業一式 1,199,205 1,199,205 ア、イ
(51) 広島検疫所 21 健康監視システム通常検疫機能改修及び設定動作確認作業一式 9,593,640 9,593,640 ア、イ
(52) 福岡検疫所 21 健康監視システム通常検疫機能改修及び設定動作確認作業一式 3,597,615 3,597,615 ア、イ
(53) 那覇検疫所 21 健康監視システム通常検疫機能改修及び設定動作確認作業一式 2,398,410 2,398,410 ア、イ
  763,985,775 608,145,008  

 このような事態が生じていたのは、厚生労働省において、次のことなどによると認められる。

ア 契約事務の実施に当たり、会計法令等を遵守することなどの基本的な会計経理を適正に行う認識が欠けていたこと
イ 検疫所等に導入した健康監視システム等の契約の履行状況を確認しないまま運用及び保守契約を締結していたこと
ウ 健康監視システム等の導入や開発に当たり、検疫所等が海港に係る業務を各システムを利用して実施する必要性や実施する際に必要となる機能についての検討が十分でなかったこと