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雇用保険の失業等給付金の支給が適正でなかったもの


(55) 雇用保険の失業等給付金の支給が適正でなかったもの

会計名及び科目 労働保険特別会計(雇用勘定) (項)失業等給付費
部局等 厚生労働本省(支給庁)
106公共職業安定所(支給決定庁)
支給の相手方 365人
不当と認める失業等給付金 (1) 求職者給付
(2) 就職促進給付
失業等給付金の支給額の合計 (1) 240,072,100円(平成20年度〜23年度)
(2) 22,316,177円(平成20年度〜22年度)
262,388,277円
不当と認める支給額 (1) 64,251,753円(平成20年度〜23年度)
(2) 22,316,177円(平成20年度〜22年度)
86,567,930円

1 保険給付の概要

(1) 雇用保険

 雇用保険は、常時雇用される労働者等を被保険者として、被保険者が失業した場合、被保険者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合等に、その生活及び雇用の安定を図るなどのために失業等給付金の支給を行うほか、雇用安定事業等を行う保険である。

(2) 失業等給付金の種類

 失業等給付金には、次の求職者給付及び就職促進給付のほか、教育訓練給付及び雇用継続給付の4種がある。

ア 求職者給付には7種の手当等があり、このうち基本手当は、失業等給付金の支給額の大半を占めており、失業者の生活の安定を図る上で基本的な役割を担うもので、受給資格者(注1) が失業している日について所定給付日数を限度として支給される。
イ 就職促進給付には5種の手当等があり、このうち再就職手当は、受給資格者が基本手当を受給できる日数を所定給付日数の3分の1以上かつ45日以上(注2) 残して安定した職業に就いた場合に支給される。

(注1)
 受給資格者  被保険者が、離職して労働の意思及び能力を有するにもかかわらず職業に就くことができない状態にあり、原則として、離職日以前2年間に被保険者期間が通算して12か月以上(倒産等により離職した者(特定受給資格者)及び特定受給資格者以外の者であって期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新を希望したにもかかわらず、当該更新がないことなどにより離職した者については、離職日以前1年間に被保険者期間が通算して6か月以上)あることの要件を満たしていて、公共職業安定所において基本手当を受給する資格があると決定された者
(注2)
 所定給付日数の3分の1以上かつ45日以上  平成21年3月31日から24年3月31日までの間は、暫定措置として「45日以上」の要件は適用されないこととなっている。

(3) 失業等給付金の支給

 上記の手当は、公共職業安定所が次のように支給決定を行い、これに基づいて厚生労働本省が支給することとなっている。

ア 基本手当については、受給資格者から提出された失業認定申告書に記載されている就職又は就労(臨時的に短期間仕事に就くこと)の有無等の事実について確認して、失業の認定を行った上、支給決定を行う。
イ 再就職手当については、受給資格者から提出された再就職手当支給申請書に記載されている雇入年月日等について調査確認の上、支給決定を行う。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

 本院は、全国47都道府県労働局(以下、都道府県労働局を「労働局」という。)の437公共職業安定所(平成23年3月末現在)のうち、18労働局管内の152公共職業安定所において会計実地検査を行い、主として20年度から22年度までの間に失業等給付金の支給を受けた者(以下、失業等給付金の支給を受けた者を「受給者」という。)から8,962人を選定して、合規性等の観点から、これらの受給者に対する失業等給付金の支給決定が適正に行われているかに着眼して、受給者から提出された失業認定申告書等の書類により検査した。そして、適正でないと思われる事態があった場合には、他の年度分も含めて更に当該公共職業安定所に調査及び報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査を行った。

(2) 不適正支給の事態

 検査の結果、18労働局の106公共職業安定所管内における20年度から23年度までの間の受給者365人については、再就職した後も引き続き失業等給付金の支給を受けるなどしており、これらに対する失業等給付金の支給額262,388,277円のうち86,567,930円は支給の要件を満たしていなかったもので支給が適正でなく、不当と認められる。これを給付の種別に示すと次のとおりである。

ア 求職者給付
 105公共職業安定所管内の受給者360人に対する基本手当の支給額240,072,100円のうち、64,251,753円は支給の要件を満たしていなかった。
イ 就職促進給付
 42公共職業安定所管内の受給者61人に対する再就職手当の支給額22,316,177円全額が支給の要件を満たしていなかった。

 このような事態が生じていたのは、受給者が誠実でなかったため、失業認定申告書及び再就職手当支給申請書の記載内容が事実と相違するなどしていたのに、前記の106公共職業安定所において、これに対する調査確認が十分でないまま支給決定を行っていたことによると認められる。
 なお、これらの不当と認める支給額については、本院の指摘により、全て返還の処置が執られた。
 以上を労働局ごとに示すと次のとおりである。

労働局名 公共職業安定所 本院の調査に係る受給者数 不適正受給者数 左の受給者に支給した失業等給付金 左のうち不当と認める失業等給付金
    千円 千円
秋田 秋田等7 578 25 23,150 5,253
大曲等2 30 3 2,182 2,182
小計     25,332 7,435
茨城 水戸等7 361 20 15,051 6,127
水戸 53 1 430 430
小計     15,481 6,558
群馬 前橋等7 454 18 15,217 5,290
前橋等3 115 3 1,293 1,293
小計     16,511 6,583
神奈川 横浜等7 455 39 24,906 6,665
横浜等3 144 4 923 923
小計     25,829 7,588
新潟 新潟等3 234 9 3,273 920
新潟等2 82 2 256 256
小計     3,530 1,176
富山 富山等4 380 18 13,761 3,521
富山等3 135 8 3,162 3,162
小計     16,924 6,684
静岡 静岡等8 630 37 20,882 2,008
三島等2 72 2 911 911
小計     21,794 2,919
三重 四日市等5 448 17 10,697 2,017
四日市等4 184 7 1,728 1,728
小計     12,425 3,745
大阪 梅田等10 596 25 11,221 4,576
大阪東等2 95 2 644 644
小計     11,865 5,220
鳥取 鳥取等2 184 10 6,435 2,171
鳥取等2 75 3 1,075 1,075
小計     7,511 3,247
島根 松江等5 285 20 9,800 2,747
松江等3 79 4 1,205 1,205
小計     11,006 3,953
岡山 岡山等7 514 17 11,871 3,260
津山等3 124 4 1,726 1,726
小計     13,597 4,986
山口 下関等5 277 12 5,645 1,912
 
小計     5,645 1,912
徳島 徳島等5 250 16 10,899 2,510
阿南等2 19 3 1,410 1,410
小計     12,309 3,920
高知 須崎等2 85 4 5,206 1,165
 
小計     5,206 1,165
福岡 福岡中央等10 563 29 17,125 6,414
八幡等5 170 6 2,225 2,225
小計     19,351 8,639
大分 大分等5 399 21 18,413 4,316
別府 47 4 1,378 1,378
小計     19,791 5,695
鹿児島 鹿児島等6 364 23 16,510 3,372
鹿児島等4 102 5 1,761 1,761
小計     18,271 5,133
求職者給付計 105か所 7,057 360 240,072 64,251
就職促進給付計 42か所 1,526 61 22,316 22,316
合計       262,388 86,567
注(1)  上段は求職者給付に係る分、下段は就職促進給付に係る分である。
注(2)  公共職業安定所数及び不適正受給者数については、各給付間で重複しているものがあり、実数はそれぞれ106か所、365人である。

 上記の事態については、厚生労働省は、従来発生防止に取り組んでいるところであるが、さらに、受給資格者に対する指導を強化するとともに受給資格者から提出された失業認定申告書等に係る調査確認の強化を図る必要があると認められる。