児童扶養手当(以下「手当」という。)は、都道府県、市(特別区を含む。)及び福祉事務所を管理する町村が、児童扶養手当法(昭和36年法律第238号)に基づき、父又は母と生計を同じくしていない児童(注)
が育成される家庭の生活の安定と自立の促進に寄与することを目的として、児童の父母が婚姻を解消するなどしている場合に、これらの児童を、監護する母、監護し生計を同じくする父又は養育する者(以下、これらを「受給資格者」という。)に対して支給するものである。国は、手当の支給に要する費用の3分の1(平成17年度以前は4分の3)を児童扶養手当給付費負担金として交付している。
手当は、毎年4月、8月及び12月の3回、所定の額(児童1人の場合は月額で14年度42,370円、15年度は9月まで42,370円、10月から42,000円、16、17両年度41,880円、18年度から22年度までの各年度41,720円)を支給することとなっている。ただし、受給資格者の前年の所得が、所得税法(昭和40年法律第33号)に規定する扶養親族等の数に応じて定められている額以上の場合は、手当の全部又は一部を支給しないこととなっている。
また、受給資格者が老齢福祉年金以外の公的年金(以下「公的年金」という。)の給付を受けることができる場合は、手当を支給しないこととなっている。
さらに、児童が児童養護施設等の児童福祉施設に入所している場合、当該児童の母については、当該児童を監護しないものとして、当該児童について手当を支給しないこととなっている。
事業主体は、受給資格者から児童扶養手当認定請求書(以下「認定請求書」という。)が提出された場合、受給資格者の公的年金の受給状況、児童の監護状況、受給資格者等の所得等を調査確認して、支給要件を満たすと認定したときは、手当を支給することとなっている。
また、事業主体は、毎年8月に、手当の受給者から児童扶養手当現況届(以下「現況届」という。)を提出させて、受給資格や受給者等の前年の所得等を調査確認して、支給要件を満たさない場合には、支給停止の手続を行うこととなっている。
本院が、25都府県の132市区町において、会計実地検査を行ったところ、3都県の4市区において、受給者が公的年金の給付を受けることができたり、児童が児童福祉施設に入所したりしていて、支給要件を満たしていないにもかかわらず手当を支給していたため、国庫負担金8,810,920円が過大に交付されていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、4市区において、受給者の公的年金の受給状況及び児童の監護状況の調査確認等が十分でなかったこと、厚生労働省において、事業主体に対する適正な事務処理の執行についての指導が十分でなかったことなどによると認められる。
前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
A市は、児童Bを監護する養育者Cについて、提出された認定請求書により手当の受給資格があると認定していた。そして、養育者Cから提出された平成21年の現況届等によれば、養育者Cが公的年金の給付を受けることができないとしていたことなどから、同市は、21年度318,120円、22年度111,240円、計429,360円の手当を支給していた。
しかし、実際には、養育者Cは、20年12月分から老齢厚生年金の給付を受けており、支給要件を満たしていなかったことから、20年12月から22年3月までに係る手当として支給された21年度318,120円、22年度111,240円、計429,360円は支給の必要がなかった。
以上を部局等別・事業主体別に示すと次のとおりである。
部局等 | 都県名 | 補助事業者 (事業主体) |
年度 | 児童扶養手当支給額 | 左に対する国庫負担金交付額 | 支給すべきでなかった児童扶養手当の額 | 不当と認める国庫負担金交付額 | 摘要 | |
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||||
(194) | 厚生労働本省 | 東京都 | 大田区 | 14〜21 | 5,163 | 2,473 | 4,696 | 2,318 | 支給要件を満たしていない者に対して支給していたもの |
(195) | 同 | 同 | 多摩市 | 17〜21 | 4,433 | 1,694 | 4,064 | 1,571 | 同 |
(196) | 同 | 石川県 | 金沢市 | 14〜22 | 4,686 | 2,346 | 4,686 | 2,346 | 同 |
(197) | 同 | 山口県 | 下関市 | 15〜22 | 5,257 | 2,656 | 5,146 | 2,574 | 同 |
(194)—(197)の計 | 19,540 | 9,172 | 18,594 | 8,810 |