地域支援事業交付金(以下「交付金」という。)は、介護保険法(平成9年法律第123号)に基づき、被保険者が要介護状態又は要支援状態となることを予防することなどを目的として、市町村(特別区、一部事務組合及び広域連合を含む。以下同じ。)が行う介護予防事業、包括的支援事業及びその他の地域支援事業(以下、これを「任意事業」という。)に要する費用の一部を、国が交付するものである。
交付金の交付額は、交付要綱等に基づき、次のとおり算定することとされている。
〔1〕 介護予防事業、包括的支援事業及び任意事業のそれぞれについて所定の方法により算定した基準額と、交付対象となっている経費(以下「対象経費」という。)の実支出額とを比較して少ない方の額と、総事業費から寄附金その他の収入額を控除した額とを比較して少ない方の額を選定する。
〔2〕 〔1〕 によりそれぞれの事業ごとに選定された額に、介護予防事業については100分の25、包括的支援事業及び任意事業については100分の40(平成20年度以前は100分の40.5)をそれぞれ乗じて得た額の合計額を交付額とする。
介護予防事業として実施される各種事業のうち、訪問型介護予防事業は、低栄養状態を改善するために特に必要と認められる者に対して、栄養改善プログラムの一環として配食の支援を実施するものとされている。そして、この事業を実施する場合の食材料費及び調理費相当分は、原則として利用者負担とすべきものとされていることから、これらの経費については対象経費から除くこととされている。
包括的支援事業は、被保険者が要介護状態又は要支援状態となることを予防するため必要な援助等を行う事業であり、市町村に設置された地域包括支援センターが行うこととされている。同センターは、包括的支援事業のほか、介護予防支援事業を行っているが、この事業は既に要支援状態にある者に介護サービスを提供するものであり、これに係る経費については介護報酬として支払いを受けることから、交付金の対象経費とはされていない。
任意事業として実施される各種事業のうち、地域資源を活用したネットワーク形成に資する事業は、栄養改善が必要な高齢者に対して地域の社会福祉法人等が実施している配食の支援を活用し、高齢者の状況を定期的に把握するものとされている。そして、この事業を実施する場合の食材料費及び調理費相当分は、介護予防事業と同様に、対象経費から除くこととされている。
本院は、25都府県の262市区町、5一部事務組合及び5広域連合において会計実地検査を行った。その結果、6県の6事業主体が18年度から21年度までの間に実施した介護予防事業又は任意事業において、利用者負担とすべきであった調理費相当分を対象経費に含めるなどしたり、包括的支援事業において、介護予防支援事業に係る経費を対象経費に計上したりしていたため、交付金交付額計1,183,046,323円のうち計52,505,088円が過大に交付されていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、上記の6事業主体において交付要綱等の理解が十分でなかったこと、6県において事業主体から提出された事業実績報告書の審査及び確認が十分でなかったことなどによると認められる。
これを部局等別・事業主体別に示すと次のとおりである。
部局等 | 補助事業者 (事業主体) |
年度 | 交付対象事業費 | 左に対する交付金交付額 | 不当と認める交付対象事業費 | 不当と認める交付金交付額 | 摘要 | |
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||||
(228) | 千葉県 | 流山市 | 18〜20 | 357,251 | 129,787 | 21,271 | 7,734 | 対象外の調理費相当分を含めていたものなど |
(229) | 神奈川県 | 逗子市 | 18〜20 | 196,294 | 71,757 | 23,135 | 7,905 | 同 |
(230) | 新潟県 | 新潟市 | 18〜20 | 1,906,110 | 727,492 | 20,403 | 8,263 | 同 |
(231) | 岐阜県 | 揖斐広域連合 | 18〜21 | 408,058 | 141,202 | 9,532 | 3,845 | 対象外の介護予防支援事業に係る経費を計上していたもの |
(232) | 愛媛県 | 伊予市 | 18、19 | 67,739 | 24,974 | 7,563 | 3,063 | 対象外の調理費相当分を含めていたものなど |
(233) | 福岡県 | 嘉麻市 | 18〜21 | 221,281 | 87,832 | 53,682 | 21,693 | 同 |
(228)—(233)の計 | 3,156,736 | 1,183,046 | 135,588 | 52,505 |