会計名及び科目 | 一般会計 | (組織)厚生労働本省 | (項)医療提供体制確保対策費 |
部局等 | 厚生労働本省 | ||
補助の根拠 | 予算補助 | ||
補助事業者 (事業主体) |
3県 | ||
交付金の概要 | 地震発生時において適切な医療提供体制の維持を図るため、都道府県に対して、医療施設耐震化臨時特例基金の造成に必要な経費を交付するもの | ||
上記の県に係る基金造成額 (交付金交付額) |
86億0838万余円(平成21、22両年度) | ||
上記のうち有効活用されていない交付金交付額 | 16億2985万円 |
(平成23年10月7日付け 厚生労働大臣宛て)
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。
記
貴省は、大規模地震等の災害時に重要な役割を果たす災害拠点病院等の医療機関の耐震化整備を行い、地震発生時において適切な医療提供体制の維持を図るため、平成21年度医療施設耐震化臨時特例交付金交付要綱(平成21年厚生労働省発医政第0605004号)等に基づき、都道府県に対して、医療施設耐震化臨時特例基金(以下「基金」という。)の造成に必要な経費について、医療施設耐震化臨時特例交付金(以下「交付金」という。)を、表1のとおり、平成21年度1222億1010万余円、22年度360億3387万余円、計1582億4398万余円交付している。
都道府県名 | 平成21年度 | 22年度 | 計 |
北海道 | 3,446,551 | 1,625,041 | 5,071,592 |
青森県 | 446,399 | — | 446,399 |
岩手県 | 2,453,402 | 180,600 | 2,634,002 |
宮城県 | 2,429,893 | 728,077 | 3,157,970 |
秋田県 | — | 1,048,537 | 1,048,537 |
山形県 | 528,165 | 177,744 | 705,909 |
福島県 | 2,474,161 | — | 2,474,161 |
茨城県 | 2,630,596 | 809,895 | 3,440,491 |
栃木県 | 2,552,195 | 847,578 | 3,399,773 |
群馬県 | 2,893,429 | 1,277,169 | 4,170,598 |
埼玉県 | 3,350,894 | 224,152 | 3,575,046 |
千葉県 | 2,909,007 | 1,011,530 | 3,920,537 |
東京都 | 4,176,967 | 3,095,693 | 7,272,660 |
神奈川県 | 2,800,917 | 876,809 | 3,677,726 |
新潟県 | 2,629,974 | 278,035 | 2,908,009 |
富山県 | 2,316,817 | — | 2,316,817 |
石川県 | 2,120,438 | 812,949 | 2,933,387 |
福井県 | 2,526,715 | 32,160 | 2,558,875 |
山梨県 | 1,879,226 | 594,247 | 2,473,473 |
長野県 | 2,555,949 | 448,825 | 3,004,774 |
岐阜県 | 976,578 | — | 976,578 |
静岡県 | 2,782,159 | 1,040,895 | 3,823,054 |
愛知県 | 3,910,479 | 2,927,454 | 6,837,933 |
三重県 | 2,566,596 | 140,500 | 2,707,096 |
滋賀県 | 2,717,485 | — | 2,717,485 |
京都府 | 3,121,699 | 832,082 | 3,953,781 |
大阪府 | 3,464,347 | 1,947,468 | 5,411,815 |
兵庫県 | 3,181,732 | 1,376,605 | 4,558,337 |
奈良県 | 2,976,098 | 847,578 | 3,823,676 |
和歌山県 | 2,540,659 | 748,919 | 3,289,578 |
鳥取県 | 482,134 | 136,384 | 618,518 |
島根県 | 1,855,157 | 168,962 | 2,024,119 |
岡山県 | 3,466,206 | 712,387 | 4,178,593 |
広島県 | 2,885,191 | 787,903 | 3,673,094 |
山口県 | 2,650,196 | 798,101 | 3,448,297 |
徳島県 | 2,524,036 | 1,184,787 | 3,708,823 |
香川県 | 2,967,586 | 1,324,058 | 4,291,644 |
愛媛県 | 2,390,360 | 712,387 | 3,102,747 |
高知県 | 2,976,802 | 1,365,449 | 4,342,251 |
福岡県 | 5,371,791 | 1,118,687 | 6,490,478 |
佐賀県 | 2,805,833 | 217,162 | 3,022,995 |
長崎県 | 2,902,658 | 785,464 | 3,688,122 |
熊本県 | 4,183,408 | 906,543 | 5,089,951 |
大分県 | 2,454,206 | 970,659 | 3,424,865 |
宮崎県 | 2,561,160 | — | 2,561,160 |
鹿児島県 | 2,541,313 | 914,399 | 3,455,712 |
沖縄県 | 1,832,545 | — | 1,832,545 |
計 | 122,210,109 | 36,033,874 | 158,243,983 |
都道府県は、貴省が定めた医療施設耐震化臨時特例基金管理運営要領(平成21年医政発第0605010号。以下「運営要領」という。)に基づき、交付金により造成した基金を管理、運用し、災害拠点病院等の医療機関の耐震化整備に必要な経費を基金から取り崩して支出する事業(以下「基金事業」という。)を実施している。
この基金は、経済対策の一環として、21年度補正予算による交付金で新たに造成されたものであり、短期間に集中して事業を実施するために、あらかじめ基金事業の実施期限が定められている。
運営要領によると、都道府県は、基金事業の実施に当たり、災害拠点病院等の医療機関のうち、緊急に耐震化整備を行う医療機関を22年度末までに指定することとなっている(以下、基金事業において指定されるこの医療機関を「耐震化整備指定医療機関」という。)。そして、都道府県は、耐震化整備指定医療機関の開設者が実施する耐震化のための新築、増改築又は耐震補強に係る事業(以下「耐震化整備事業」という。)に必要な経費について、当該開設者に対する助成金を、基金から取り崩して支出することとなっていて、基金事業の実施期限である22年度末までに基金を解散することとされている。しかし、工事規模等により耐震化整備事業が複数年に及ぶなどやむを得ない理由がある場合、厚生労働大臣の承認を受けた上で、都道府県が策定する基金事業に係る計画(以下「基金事業計画」という。)に記載された全ての耐震化整備事業が完了するまで、基金事業の実施期限については延長を行うことができることとなっている。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
本院は、有効性等の観点から、都道府県において、基金が有効に活用されているか、また、貴省において基金事業の状況を適時、適切に把握し、状況に応じて基金事業の見直しを行っているかなどに着眼し、17都道府県(注) における17基金(交付金交付額726億1863万余円)を対象として、基金事業計画等の関係書類により会計実地検査を行った。
(検査の結果)
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
広島、愛媛、沖縄各県において、当初予定していた診療を継続しながらの既存施設の耐震補強では耐震性能が十分でないことが判明したことから、新築移転を検討しなければならないような大幅な計画の見直しが必要となったことなどにより、耐震化整備指定医療機関として指定する予定だった一部の医療機関が指定を辞退したり、指定後に一部の耐震化整備指定医療機関が耐震化整備事業の実施を辞退したりしていた。このため、3県において、一部の交付金が不要となる事態となっていた。
しかし、運営要領では、耐震化整備指定医療機関を22年度末までに指定することとなっているため、耐震化整備指定医療機関等が耐震化整備事業の実施を辞退して、助成金の交付予定額が減少し、交付金の交付額に対して残余が生ずることとなっても、23年4月以降、新たに耐震化整備指定医療機関を指定して、耐震化整備事業を実施させることはできない取扱いとなっている。また、このように残余が生じた場合に、不要となる交付金を基金の解散前に国庫に返還させる取扱いについては明確にされていない。
また、広島県は、基金事業の実施期限を全ての耐震化整備事業が完了する26年9月まで、愛媛、沖縄両県は27年3月までそれぞれ延長していた。
このため、上記3県の基金(交付金交付額、広島県36億7309万余円、愛媛県31億0274万余円、沖縄県18億3254万余円、計86億0838万余円)において、延長した基金事業の終了年度である26年度まで計16億2985万余円(広島県7億7642万余円、愛媛県4億1589万余円、沖縄県4億3754万余円)が滞留すると見込まれる状況となっていた。
上記の事態について、一例を示すと次のとおりである。
愛媛県では、表2のとおり、平成21年度に23億9036万円、22年度に7億1238万余円、計31億0274万余円の交付金の交付を受けて基金を造成していた。そして、厚生労働大臣の承認を得て全ての耐震化整備事業が完了する27年3月まで基金事業の実施期限を延長していた。
このうち、21年度の交付金による基金事業において、愛媛県は、21年8月の基金事業計画では5医療機関(A〜E)を指定して助成金を交付することを予定していたが、指定前に2医療機関(A及びB)が耐震化整備指定医療機関の指定を辞退したため、残る3医療機関(C〜E)に新たに1医療機関(F)を加えた4医療機関(C〜F)を、22年4月に耐震化整備指定医療機関に指定した。そして、指定後、23年1月に、1医療機関(C)が耐震化整備事業の実施を辞退したため、3医療機関(D〜F)に対して助成金を交付することとなった。
このようなことから、医療機関に対する助成金の交付予定額が計19億7446万余円となり、貴省からの21年度の交付金23億9036万円のうち4億1589万余円が、基金事業の終了年度である26年度まで基金に滞留すると見込まれる状況となっている。
医療機関 | 交付金所要額 | 厚生労働省からの交付金交付額 | 医療機関に対する助成金の交付予定額 | 基金に滞留すると見込まれる額 | 耐震化整備事業の完了予定年月 | 備考 |
(千円) | (千円) | (千円) | (千円) | |||
A | 712,387 | / | — | / | — | 指定前辞退 |
B | 451,502 | — | — | 指定前辞退 | ||
C | 49,936 | — | — | 指定後辞退 | ||
D | 497,496 | 549,695 | 23年10月 | — | ||
E | 712,387 | 712,387 | 25年3月 | — | ||
F | — | 712,387 | 25年8月 | 追加 | ||
平成21年度 | 2,423,708 | 2,390,360 | 1,974,469 | 415,891 | — | — |
G | 712,387 | / | 712,387 | / | 27年3月 | — |
22年度 | 712,387 | 712,387 | 712,387 | — | — | — |
計 | — | 3,102,747 | 2,686,856 | 415,891 | — | — |
なお、広島、愛媛、沖縄各県以外の14都道府県は、22年度末とされていた基金事業の実施期限の延長を行っているが、22年度末時点において、交付金が基金に滞留すると見込まれる状況ではなかった。
(改善を必要とする事態)
貴省が22年1月に公表した調査結果によると、災害拠点病院及び救命救急センターの耐震化率は62.4%と十分とは言えない状況であり、貴省は、引き続き病院の耐震化の促進に努めることとしている。また、貴省では、東日本大震災を受けて、交付金の交付により基金を更に積み増して、耐震化整備事業を推進することについて検討を進めているところである。
したがって、22年度末までとなっている耐震化整備指定医療機関の指定期限を延長し耐震化整備事業を推進して基金の活用を図った上で、新たに指定する医療機関がないなど基金活用の見込みがなく不要となる交付金については、基金の解散前に国庫に返還させるなどその取扱いを明確にして、交付金が基金に滞留することがないよう改善の要があると認められる。
(発生原因)
このような事態が生じているのは、貴省において、耐震化整備指定医療機関の指定を22年度末までとしていたため、耐震化整備指定医療機関等の辞退が生じた場合、代替の医療機関を新たに指定するための期間が十分確保できない状況となっていること、また、運営要領等において、不要となる交付金について、基金の解散前に国庫に返還させるなどの取扱いが明確にされていないことなどによると認められる。
基金は、大規模地震等の災害時に重要な役割を果たす災害拠点病院等の医療機関の耐震化整備事業に助成することにより、地震発生時における医療提供体制の維持に資することを目的とするものである。
ついては、貴省において、上記を踏まえて、交付金により都道府県に造成された基金の有効活用を図るよう、次のとおり改善の処置を要求する。
ア 耐震化整備指定医療機関等が耐震化整備事業の実施を辞退して、助成金の交付予定額が減少し、貴省からの交付金の交付額に対して残余が生ずることとなった場合、新たに耐震化整備指定医療機関を指定することが可能となるように運営要領等を改正するなどして耐震化整備事業を推進し、基金の有効活用を図ること
イ アにおいて、新たに指定する医療機関がないなど基金を活用する見込みがない場合は、活用されずに不要となる交付金について、基金の解散を待つことなく、早期に国庫に返還させる仕組みを作ること