労働保険事務組合(以下「事務組合」という。)に対する労働保険料に係る報奨金について、現在の報奨金交付の意義が事務組合の労働保険料の収納率を高く維持することにあり、また、その使途が事務組合の人件費等の運営費に充当されている現状にあるのに、厚生労働省では、〔1〕 事務組合制度の普及発展、〔2〕 事務組合における労働保険の適用促進、〔3〕 事務組合に労働保険事務を委託した事業主に係る労働保険料の適正な徴収を図るためという従来どおりの交付目的のもとに、報奨金の交付額が労働保険料の納付額等に基づき上限なく算定されている事態や、事務組合において区分経理が十分に行われていないなどしていて、報奨金の使途が確認できない事態が見受けられた。
したがって、厚生労働省において、報奨金の交付目的が事務組合の労働保険料の収納率を高く維持することにあることを明示するとともに、交付額の算定方法を、上限額を設定するなど報奨金が事務組合の運営費に充てられている現状を考慮したものに改め、交付額の縮減を図ったり、事務組合に対して区分経理を適切に行うよう指導監査を徹底し、使途の透明性を確保したりして、報奨金の制度を見直すよう、厚生労働大臣に対して平成22年10月に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。
本院は、厚生労働本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、厚生労働省は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 労働保険事務組合報奨金交付要領を改正し、報奨金の交付目的が事務組合の労働保険料の収納率を高く維持することにあることを明示するとともに、「労働保険事務組合に対する報奨金に関する政令」(昭和48年政令第195号)等を改正し、上限額を設定するなど報奨金の交付額の算定方法を改め、交付額の縮減を図った。
イ 報奨金の使途の透明性を確保するため、上記要領の改正において、区分経理がなされていない事務組合については、報奨金の交付対象から除外することを明示するとともに、事務組合に対して区分経理を適切に行うよう指導監査を徹底するなどした。