厚生年金保険等の適用事業所において、被保険者全員が被保険者資格を喪失した場合には、事業主は、全喪届を提出することとされている。しかし、日本年金機構(以下「機構」という。)の年金事務所等において、全喪届に第三者の確認がない書類が添付されている場合の実地調査等が適切に行われていなかったり、納入告知額一覧表に被保険者が0人になった旨が表示された場合の調査等が長期間にわたって十分に行われていなかったりしている事態や、これらに係る内部統制における監視活動が十分に機能していない事態が見受けられた。
したがって、機構において、全喪届の事務処理等についての改善策を策定し、各年金事務所に対して周知徹底したり、内部監査の指摘事項に対する改善に向けた取組を徹底して、不適切な事務処理の再発防止を図ったりするとともに、厚生労働省において、機構が行う処理に対する監督を的確に実施したり、機構に内部統制の確立に向けた取組を実施させたりする処置を講ずるよう、厚生労働大臣及び日本年金機構理事長に対して平成22年10月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。
本院は、厚生労働本省及び機構本部において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、厚生労働省及び機構は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 機構において
(ア) 23年5月に全喪届の様式を改正して、全喪届に添付する書類は、原則として、第三者の確認がある書類とすることを明確にした。
(イ) 23年3月に年金事務所等に対して通知を発して、全喪届に第三者の確認がない書類が添付されているなどの場合には、法人登記簿を取得して解散の登記を確認するなどして適正な実地調査等を行うよう周知徹底した。
(ウ) 22年12月に年金事務所等に対して通知を発して、納入告知額一覧表に被保険者が0人である旨が長期間にわたって出力され続けている事業所については、実地調査等により事業実態の確認を行うよう指示した。
(エ) 23年1月に内部監査要領を改正して、被監査部署から監査部署宛てに提出される改善計画書に改善に向けた取組内容等を明確に記載することを定めた。
(オ) 23年1月に内部監査要領を改正して、不適切な事務処理について、被監査部署における取組だけでなく、本部関連部署による対応が必要な場合には、当該部署に対し改善提言を行うことを定めた。
イ 厚生労働省において
(ア) 機構が講じた処置について報告させて、その内容を確認するとともに、22年9月以降に実施した機構に対する監査を通じて、全喪届の事務処理及び納入告知額一覧表で長期間にわたって被保険者が0人となっている事業所の事務処理に対する監督を実施することとした。
(イ) 22年9月以降に実施した機構に対する監査を通じて、機構に内部統制の確立に向けた取組を確実に実施させることとした。