「農」の雇用事業による農業法人に対する助成が補助の対象とならないもの
「農」の雇用事業は、全国農業会議所が、担い手育成・確保対策事業実施要領(平成14年13経営第6627号農林水産事務次官依命通知。以下「実施要領」という。)等に基づき、就農意欲のある若者等多様な人材が農業法人等に就業することを促進し、農業の担い手として定着することを支援するため、農業法人等に対して、農業法人等が新たに雇用する者等に対して実施する実践研修に要した経費や実践研修を受ける者に対して支払った住居手当等の経費(以下、これらの経費を「実践研修等に要した経費」という。)を助成するもの(以下、この事業を「助成事業」という。)である。
そして、農林水産省は、助成事業の実施に必要な資金の財源に充てるため、全国農業会議所に対して国庫補助金を交付して資金を造成させており、全国農業会議所は、実施要領等に基づき、この資金を取り崩して農業法人等に対して助成を行っている。
実施要領等によると、助成事業により実践研修を受けられる者の要件は、農業法人等が新たに雇用する者又は雇用してから6か月未満の者であることなどとされている。
本院が、全国農業会議所及び12道府県管内の29農業法人等において、会計実地検査を行ったところ、2農業法人において、実際には実践研修を受けていない者や、助成事業による実践研修が受けられる者の要件を満たしていない者を対象として助成金の交付を受けていたため、これらの助成金は補助の対象とは認められず、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、2農業法人において、本件助成事業の適正な実施に対する認識が十分でなかったこと、全国農業会議所において、本件助成事業の審査及び確認が十分でなかったことなどによると認められる。
これを事業主体別に示すと次のとおりである。
部局等 | 補助事業者等 | 間接補助事業者等 | 補助事業等 | 年度 | 事業費 | 左に対する国庫補助金等交付額 | 不当と認める事業費 | 不当と認める国庫補助金等相当額 | |
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||||
(311) | 農林水産本省 | 全国農業会議所 | 有限会社舟善食品工業 (事業主体) |
「農」の雇用 | 21、22 | 1,560 | 1,560 | 1,560 | 1,560 |
有限会社舟善食品工業(茨城県筑西市所在)は、職員Aに対して平成21年5月から1年間の実践研修を実施したとして、実践研修等に要した経費に係る助成金交付申請書等を全国農業会議所に提出して、全国農業会議所から助成金1,560,000円の交付を受けていた。
しかし、実際には、同社は、Aを職員として雇用したときから別の会社に派遣しており、Aは実践研修を全く受けていないことから、この職員に対する実践研修等に要した経費は発生しておらず、助成の対象とはならないものであった。
したがって、全国農業会議所が同社に交付した助成金計1,560,000円は、補助の対象とは認められず、これに係る国庫補助金計1,560,000円が不当と認められる。
部局等 | 補助事業者等 | 間接補助事業者等 | 補助事業等 | 年度 | 事業費 | 左に対する国庫補助金等交付額 | 不当と認める事業費 | 不当と認める国庫補助金等相当額 | |
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||||
(312) | 農林水産本省 | 全国農業会議所 | 有限会社さくらファーム (事業主体) |
「農」の雇用 | 21、22 | 2,972 | 2,972 | 2,972 | 2,972 |
有限会社さくらファーム(山梨県韮崎市所在)は、職員Bに対して平成21年4月から1年間、職員Cに対して同年8月から5か月間、職員Dに対して同年8月から1年間の実践研修をそれぞれ実施したとして、実践研修等に要した経費に係る助成金交付申請書等を全国農業会議所に提出して、全国農業会議所から助成金計2,972,000円の交付を受けていた。
しかし、実際には、職員B、職員C及び職員Dは、本件事業による実践研修が受けられる者の要件とされている「新たに雇用する者又は雇用してから6か月未満の者」に該当せず、これらの職員に対する実践研修等に要した経費は、助成の対象とはならないものであった。
したがって、全国農業会議所が同社に交付した助成金計2,972,000円は、補助の対象とは認められず、これらに係る国庫補助金計2,972,000円が不当と認められる。
(311)(312)の計 | 4,532 | 4,532 | 4,532 | 4,532 |