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  • 平成22年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第9 農林水産省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

国営造成施設管理体制整備促進事業(管理体制整備型)の実施に当たり、管理主体の職員の業務従事実績に係る証拠書類の整備方法を明確にすることなどにより補助対象事業費の算定が適切に行われるよう改善させたもの


(1) 国営造成施設管理体制整備促進事業(管理体制整備型)の実施に当たり、管理主体の職員の業務従事実績に係る証拠書類の整備方法を明確にすることなどにより補助対象事業費の算定が適切に行われるよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)農林水産本省
(項)農業生産基盤整備・保全事業費
(項)北海道開発事業費
部局等 農林水産本省、6地方農政局
補助の根拠 予算補助
補助事業者 18道県(うち事業主体6県)
間接補助事業者
(事業主体)
市63、町28、村1計92事業主体
管理主体数 117管理主体
補助事業の概要 都道府県又は市町村が事業主体となり、事業実施地区において土地改良区等を対象として国営造成施設等の管理体制の整備に係る支援を行うもの
事業費 39億9318万余円 (平成20年度〜22年度)
上記に対する国庫補助金相当額 19億9658万余円
証拠書類が適切に整備・保管されていないため、管理主体の職員の人件費の額の妥当性が確認できない管理主体 (1) 15県計43地区77管理主体
管理主体の職員の人件費の区分が適切に行われていない管理主体 (2) 3道県計3地区3管理主体
上記に係る人件費計上額 (1) 10億0520万余円 (平成20年度〜22年度)
(2) 1370万余円 (平成20年度〜22年度)
上記に対する国庫補助金相当額 (1) 5億0260万円 (背景金額)
(2) 685万円

1 国営造成施設管理体制整備促進事業(管理体制整備型)の概要

 農林水産省は、農業者及び土地改良区に加え、地域住民等の多様な主体の参加により農地、農業用水等の適切な保全管理を確保し、水源が有するかん養機能、洪水防止機能等の多面的な機能を発揮させることなどに資するため、平成12年度から、国営造成施設管理体制整備促進事業(管理体制整備型)(以下「国造施設事業」という。)を実施している。
 国造施設事業は、「国営造成施設管理体制整備促進事業実施要綱」(昭和60年60構改D第302号農林水産事務次官依命通知。以下「要綱」という。)等に基づき、国営造成施設(国営土地改良事業等により整備した用排水路、揚排水機場等の農業水利施設をいう。)又はこれと一体不可分な国営附帯県営造成施設(以下、これらを合わせて「国営造成施設等」という。)を管理する土地改良区等(以下「管理主体」という。)を対象として、都道府県及び市町村が事業主体となり、管理体制の整備に係る計画の策定、推進及び支援の各事業を実施するものである。
 国造施設事業のうち管理体制の整備に係る支援(以下「支援事業」という。)は、要綱等によると、事業実施地区(以下「地区」という。)において管理主体が国営造成施設等の管理を行うために要する費用のうち、農村地域における都市化や非農家との混住化の進展に伴い増大した多面的機能の発揮に相当する費用(以下「多面的費用」という。)等に対して、都道府県又は市町村が事業主体となり、別途事業主体が定めるところにより支援を行うものである。そして、多面的費用は、管理主体による国営造成施設等の操作運転、点検整備その他の国営造成施設等の維持管理に要する経費等とされており、当該経費等のうち、国営造成施設等の維持管理に係る業務(以下「国造管理業務」という。)に従事した管理主体の職員の人件費は、操作運転費、点検整備費及び施設管理費の3項目に区分し、各業務に対する従事実績に応じてそれぞれ算出することとされている。さらに、上記の操作運転費及び点検整備費に係る技術者賃金等(以下「操作点検賃金等」という。)は、農林水産省及び国土交通省が定めた基準日額に勤務日数を乗じて算定した額(以下「限度額」という。)の範囲内とすることとされている。
 そして、上記のとおり算出された経費に1.6分の0.6を乗じて得た額(このうち、管理主体の職員の人件費に相当する額を「管理主体人件費」という。)を上限として支援することとされている。
 事業主体は、管理主体から報告書等の提出を受け、上記のとおり管理主体が補助事業に要した実支出額を適切に算定していることを確認して、多面的費用の支援を行い、その実績に基づき、補助金の交付申請を行っている。そして、農林水産省が国造施設事業における補助金を事業主体に交付するに当たっては、補助金の交付決定額と、これに対応する補助事業に要した実支出額のいずれか低い額により交付額の確定を行うこととされている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 農林水産省は、国造施設事業に対して、毎年度、多額の補助金を交付している。そして、支援事業においては、前記のとおり、多面的費用として、国造管理業務に対する従事実績に応じて算出された管理主体人件費等が支援の対象となる。また、管理主体は国営造成施設等以外の農業水利施設の維持管理に係る業務等も行っていることから、事業主体は、管理主体から提出される報告書等に基づいて国造管理業務の事業実績を適切に把握した上で、補助対象事業費を算定する必要がある。
 そこで、本院は、合規性、経済性等の観点から、事業主体における補助対象事業費の算定は適切に行われているかなどの点に着眼して、農林水産省及び18道県(注1 )において、98事業主体が実施した63地区117管理主体における国造施設事業の支援事業(20年度から22年度までの間における事業費計39億9318万余円、国庫補助金計19億9658万余円)を対象として、実績報告書等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行った。

 18道県  北海道、群馬、埼玉、石川、岐阜、静岡、滋賀、兵庫、奈良、和歌山、鳥取、岡山、徳島、香川、愛媛、福岡、熊本、大分各県

(検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 管理主体において職員の業務従事実績の確認に必要な証拠書類が適切に整備・保管されていないため、管理主体人件費の額の妥当性が確認できなかったもの

 事業主体において検査したところ、前記の98事業主体のうち、66事業主体において、管理主体から提出され、保管されていた報告書等には、国造管理業務に対する従事実績を示す証拠書類が添付されていなかった。
 そこで、管理主体において、国造管理業務に対する従事実績を記録した業務日誌等の証拠書類が適切に整備・保管されているかについて確認したところ、15県 (注2 )の66事業主体が実施した43地区77管理主体における支援事業(管理主体人件費計上額計10億0520万余 円、国庫補助金相当額計5億0260万余円)については、業務日誌等の証拠書類が全く整備・保管されていなかったり、記録内容が十分でなかったりしていた。このため、国造管理業務に実際に従事した日数等が確認できず、管理主体人件費の額の妥当性が確認できな い状況となっていたのに、事業主体は、管理主体から提出された報告書に記載された管理主体人件費等の額に基づいて補助対象事業費を算定していた。

<事例1>

 奈良県は、平成20年度から22年度までの間に大和平野、大和高原北部両地区において、国造施設事業の支援事業を事業費計2億5380万円(国庫補助金計1億2690万円)で実施している。そして、管理主体である大和平野、大和高原北部両土地改良区の職員の人件費のうち計8999万余円(国庫補助金相当額計4499万余円)を管理主体人件費としていた。しかし、上記の両土地改良区は、国造管理事務に従事した実績を記録するための業務日誌等の証拠書類を全く整備・保管していなかったため、国造管理業務に対する従事実績と国営造成施設等以外の農業水利施設の管理業務等に対する従事実績を明確に区分できないのに、国造管理業務に従事した管理主体の職員の年間給与総額又はこれに国造管理業務に従事したとする割合を乗じて得た額により管理主体人件費の額を算出していた。そして、奈良県は、管理主体から提出された報告書に記載された管理主体人件費等の額に基づいて補助対象事業費を算定していた。

 15県  群馬、埼玉、石川、岐阜、静岡、滋賀、奈良、和歌山、鳥取、岡山、徳島、香川、愛媛、福岡、熊本各県

(2) 管理主体人件費の区分が適切に行われていなかったもの

 前記の98事業主体のうち、3道県(注3 )の5事業主体が実施した3地区3管理主体における支援事業については、業務日誌等の証拠書類を整備・保管しており、事業主体に対して提出した報告書において、管理主体人件費計3157万余円を前記の3項目に区分し、操作運転費を555万余円、点検整備費を0円及び施設管理費を2602万余円として計上していた。
 しかし、これらの区分が適切なものとなっているかについて業務日誌等で確認したところ、施設管理費に計上すべき工事の立会い作業に係る人件費が操作運転費に含まれていたり、操作運転費に計上すべきゲートの操作作業に係る人件費が施設管理費に含まれていたりしていた。このため、業務日誌等の証拠書類に基づいて適切に区分して算出したところ、管理主体人件費の区分が適切に行われていないものが計1370万余円(国庫補助金相当額計685万余円)あった。また、操作点検賃金等は、前記のとおり、限度額の範囲内とすることとされているが、管理主体人件費の区分が適切に行われていなかったことにより操作点検賃金等が限度額を超えて過大に計上されていたものが、2管理主体において計41万余円(国庫補助金相当額計20万余円)見受けられた。

<事例2>

 北海道は、平成20年度から22年度までの間にオホーツク支庁管内の北見地区において、国造施設事業の支援事業を事業費計5528万余円(国庫補助金計2764万余円)で実施している。そして、管理主体である北見土地改良区の職員の人件費のうち計1128万余円(国庫補助金相当額計564万余円)を管理主体人件費としていた。同土地改良区は、管理主体の職員が業務日誌等の証拠書類を整備・保管して、国造管理業務に対する従事実績とそれ以外の管理業務等に対する従事実績に区分し、半日単位等で記録していた。しかし、操作運転費及び施設管理費に係る作業内容を業務日誌で確認したところ、操作運転費には揚水機場等の操作運転作業のほかに、点検整備費や施設管理費に計上すべき工事の立会い作業が含まれていたり、施設管理費には、点検整備費や操作運転費に計上すべき作業が含まれていたりしていて、計451万余円(国庫補助金相当額計225万余円)について、管理主体人件費の区分が適切に行われていなかった。

 3道県  北海道、和歌山、福岡両県

 補助対象事業費を算定するに当たっては、支援事業の事業主体において、国造管理業務に対する従事実績と他の業務に対する従事実績との区分を明確にした業務日誌等の証拠書類に基づき、国造管理業務に対する従事実績を確認する必要がある。
 しかし、(1)及び(2)のとおり、管理主体において、必要な証拠書類が適切に整備・保管されていないため、管理主体人件費の額の妥当性が確認できなかったり、管理主体人件費が適切に区分されていなかったりしていた事態は適切とは認められず、改善を図る必要があると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、次のようなことによると認められた。

ア 支援事業の事業主体において、管理主体人件費を適正に算定することについての認識が十分でなく、管理主体から提出された報告書等の審査及び確認が十分でなかったこと。また、管理主体人件費の算出根拠となる業務日誌等の証拠書類の整備・保管について、管理主体に対して周知徹底していなかったこと
イ 農林水産省において、管理主体人件費の算出方法及び管理主体人件費を適切に区分して算出することについて、支援事業の事業主体が管理主体に対して周知徹底するよう指導していなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、農林水産省は、23年9月に通知を発して、支援事業の事業主体から、管理主体に対して、管理主体人件費の算出方法等を周知徹底し、操作運転費、点検整備費及び施設管理費の各経費に人件費を適切に区分して算出するとともに、人件費の算出根拠となる業務日誌等の整備・保管を適切に行うよう周知徹底するなどの処置を講じた。