会計名及び科目 | 一般会計 | (組織)農林水産本省 | ||
(項) | 農林水産本省共通費(平成19年度は、(項)農林水産本省) 等 | |||
(組織)農林水産技術会議 | ||||
(項) | 農林水産業研究開発費 | |||
食料安定供給特別会計 | (農業経営基盤強化勘定) | |||
(項) | 農業経営基盤強化事業費 | |||
(国営土地改良事業勘定) | ||||
(項) | 土地改良事業費 等 | |||
部局等 | 農林水産本省、4地方農政局 | |||
契約の概要 | 総合評価落札方式による一般競争入札を実施して締結された調査、広報及び研究開発に係る契約 | |||
検査対象とした契約件数及び契約金額 | 317件 | 70億3010万余円 | (平成19年12月〜22年9月) | |
予定価格の算定が適切でなかった契約件数及び契約金額 | 204件 | 57億7347万円 | (平成19年12月〜22年9月) |
国が契約を締結する場合には、公正性、透明性及び競争性を確保するため、会計法(昭和22年法律第35号)、予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号。以下「予決令」という。)等により、原則として一般競争に付することとされている。
総合評価落札方式は、一般競争入札による落札者の決定方法の一つであって、価格以外の要素と価格とを総合的に評価し、国にとって最も有利な入札をした者を落札者とする方式である。この方式により落札者を決定するに当たっては、各省各庁の長は、予決令第91条第2項の規定により財務大臣に協議することとされている。
農林水産省は、平成18年6月に、「随意契約見直し計画」を策定して、これまで導入を進めてきた公共工事の設計業務等に加えて、研究開発、調査研究、広報業務等についても総合評価落札方式による一般競争入札を導入することを検討するとともに、それを支援するための業務マニュアルを作成することとした。
一方、同年7月に、財務省から「調査の業務委託に関する入札に係る総合評価落札方式について」(平成18年7月財計第1953号財務大臣通知)等が発出されたことにより、各省各庁においては、入札者の提示する専門的知識等によって、調達価格の差異に比して、事業の成果に相当程度の差異が生ずると大臣が認める調査、広報及び研究開発に係る契約(以下「調査等契約」という。)を締結しようとする場合は、総合評価落札方式による一般競争入札を実施する際に必要とされる前記の財務大臣への協議は整ったものとすることとされ、この場合の予定価格は、予決令第80条の規定に基づき算定する価格とすることとされた。そして、同条第2項において、予定価格は、取引の実例価格、数量の多寡、履行期間の長短等を考慮して適正に定めなければならないとされている。
また、「公共調達の適正化について」(平成18年8月財計第2017号財務大臣通知)により、各省各庁の長は、国の支出の原因となる契約を締結したときは、契約金額、予定価格等の情報を公表することとされた。 農林水産省は、上記の経緯から、19年9月に、調査等契約における総合評価落札方式による一般競争入札に係る事務処理の方法を具体的に示した業務マニュアルとして「総合評価落札方式マニュアル」(以下「マニュアル」という。)を制定した。
マニュアルによると、総合評価落札方式による一般競争入札の作業手順は、図 のとおりとされていた。
また、マニュアルには作業手順の各段階における具体的な事務処理の方法が示されており、そのうちの仕様書及び予定価格の作成に係るものは、次のとおりとされていた。
本院は、合規性等の観点から、総合評価落札方式による一般競争入札を実施した調査等契約が、会計法等に基づいた事務手続により適正に処理されているかなどに着眼して、農林水産本省(以下「本省」という。)及び6地方農政局(注1)において、19年12月から22年9月までに総合評価落札方式による一般競争入札を実施して締結された調査等契約317件(契約金額計70億3010万余円)を対象として検査した。
検査に当たっては、上記の本省及び6地方農政局のうち本省及び4地方農政局(注2
)において、契約関係資料等の書類を確認するなどして会計実地検査を行うとともに、残りの2地方農政局(注3
)については、農林水産省から契約関係資料等の提出を受けて検査した。
検査したところ、本省及び4地方農政局(注4
)は、総合評価落札方式による一般競争入札を実施して締結していた調査等契約311件(契約金額計69億9831万余円)のうち204件(契約金額計57億7347万余円)については、契約の目的を達成するために必要とされる技術、性能等の具体的な仕様を仕様書に明示しないまま入札公告を行い、入札者に入札書及び提案書を提出させていた。そして、技術審査で最も高い技術点を付与した入札参加者(以下「最高技術点入札者」という。)の提案内容を標準仕様として最高技術点入札者から参考見積書を徴取し、その内容を検証することなく、参考見積額をそのまま予定価格としていた。
しかし、本省及び4地方農政局が、上記のように最高技術点入札者の参考見積額をそのまま予定価格とする取扱いを行っていることは、過去の入札において最高技術点入札者となった者からすれば、その際に公表された入札結果の内容等から推測できる状況になっていた。このようなことなどにより、上記204件の調査等契約全件において、最高技術点入札者となって参考見積書の提出を求められた者は、参考見積額を自らの入札金額以上の額にして、自らが失格しない予定価格になるようにしており、その入札金額は、全て予定価格の制限の 範囲内に収まっていた。
したがって、上記のように、本省及び4地方農政局において、具体的な仕様書を定めないまま入札公告を行い、入札書、提案書等を受領した後に最高技術点入札者から徴取した参考見積額をそのまま予定価格としている事態は、国が発注者として取引の実例価格、需給の状況、履行の難易等の様々な要素を考慮して自ら適正な予定価格を定めることを求めた予決令の趣旨に沿わないばかりか、最高技術点入札者が予定価格を自己に有利になるように取り扱うことができることになっていて、会計法令に基づき契約事務手続の公正性、透明性等を確保する面から適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
このような事態が生じていたのは、本省及び4地方農政局において、総合評価落札方式による一般競争入札を実施するに当たり、契約事務手続の公正性、透明性等を確保することについての認識が十分でなかったことなどにもよるが、農林水産省において、価格以外の要素と価格とを総合的に評価し、国にとって最も有利な入札をした者を落札者とする総合評価落札方式の趣旨を十分に踏まえず、最も技術点が高い提案内容が採用されるように、入札後に最高技術点入札者の提案内容を標準仕様にして、最高技術点入札者から徴取した参考見積額をそのまま予定価格とするようマニュアルを定めていたことなどによると認められる。
上記についての本院の指摘に基づき、農林水産省は、23年7月に、総合評価落札方式による一般競争入札を実施するに当たっては、入札公告前に資料等の提供を広く招請するなどした上で、具体的な仕様書を基にして、予定価格を適正に算定することとするようマニュアルを改正するとともに、関係部局等に通知を発してその旨を周知する処置を講じた。
(注1) | 6地方農政局 東北、北陸、東海、近畿、中国四国、九州各農政局
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(注2) | 4地方農政局 東北、近畿、中国四国、九州各農政局
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(注3) | 2地方農政局 北陸、東海両農政局
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(注4) | 4地方農政局 北陸、近畿、中国四国、九州各農政局
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