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  • 平成22年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第11 国土交通省|
  • 不当事項|
  • 補助金|
  • 補助事業の実施及び経理が不当と認められるもの

落橋防止システムの設計が適切でなかったもの


(2) 工事の設計が適切でなかったもの

7件 不当と認める国庫補助金 154,469,716円

落橋防止システムの設計が適切でなかったもの

(1件 不当と認める国庫補助金 114,091,500円)

  部局等 補助事業者等
(事業主体)
補助事業等 年度 事業費
(国庫補助対象事業費)
左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める事業費
(国庫補助対象事業費)
不当と認める国庫補助金等相当額
千円 千円 千円 千円
(363) 大阪府 大阪府 住宅市街地基盤整備、河川総合開発 18〜22 1,086,892
(1,059,975)
568,611 208,772
(208,772)
114,091

 この補助事業は、大阪府が、茨木市安威地内において、橋りょう(上下線完成後の道路中心における橋長46.0m、幅員22.8m〜24.5m)を新設するため、下部工として逆T式橋台2基の築造等を、下り線の上部工として鋼単純合成桁の製作・架設等をそれぞれ実施したものである。そして、上部工については、上り線と下り線で分離した構造となっていて、本件工事においては、下り線の上部工(2車線分)を上り線に先行して架設し、これを上り下りで1車線ずつ供用することとしている。また、この下り線の道路中心における橋長は50.3mとなっており、終点側の橋台において、橋軸と支承の中心線とのなす角(以下「斜角」という。)が49.5度の斜橋となっている(参考図参照)
 本件橋りょうの設計は、「道路橋示方書・同解説」(社団法人日本道路協会編。以下「示方書」という。)等に基づいて行われている。そして、示方書によると、設計で想定されない地震動が作用するなどした場合でも上部構造の落下を防止することができるように、落橋防止システムを設けることとされている。この落橋防止システムの構成は、落橋防止構造、桁かかり長(注1) 、変位制限構造(注2) 等の中から、橋りょうの形式、地盤条件等に応じて適切に選定することとされている。
 このうち落橋防止構造は、両端の橋台がI種地盤(注3) に支持されていて上部構造の長さが50m以下の橋りょうについては、橋軸方向の変位が生じにくい橋りょうに該当して、その設置を省略することができるとされている。ただし、所定の判定式により斜角の小さい斜橋であると判定される場合には、予期しない大きな変位が生ずることがあるため、落橋防止構造の設置を省略してはならないとされている。
 また、落橋防止構造と変位制限構造の機能は異なっていて、これらを兼用すると、一方の機能の喪失が他方の機能の喪失に結びつくため、原則として兼用してはならないとされている。
 同府は、本件橋りょうについては、上下線完成後の道路中心における橋長46.0mを基に、両端の橋台がI種地盤に支持された長さが50m以下の橋りょうであるとし、また、所定の判定式により斜角の小さい斜橋であると判定したが、終点側の橋台の変位制限構造が落橋防止構造の役割を兼ねているなどとして、落橋防止構造の設置を省略することとし、これにより施工していた。
 しかし、本件橋りょうの下り線については、所定の判定式により斜角の小さい斜橋であると判定されていることから、落橋防止構造の設置を省略してはならない橋であること、前記のとおり落橋防止構造と変位制限構造を原則として兼用してはならないとされていること及び下り線の道路中心における橋長が50.3mで50mを超えていることから、落橋防止構造を設置する必要があったと認められるのに、同府は、誤ってこれを省略していた。
 したがって、本件橋りょうの下り線の上部工等(これらの工事費相当額208,772,000円)は、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金相当額114,091,500円が不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、同府において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのにこれに対する検査が十分でなかったこと、示方書についての理解が十分でなかったことなどによると認められる。

 落橋防止構造、桁かかり長  桁と橋台の胸壁をPC鋼材で連結するなどして、上下部構造間に予期しない大きな相対変位が生じた場合に、これが桁かかり長(桁端部から下部構造頂部縁端までの長さ)を超えないようにする構造

(参考例)

落橋防止構造、桁かかり長概念図

 変位制限構造  支承と補完し合って、上下部構造間の相対変位が大きくならないようにするためのもので、桁と橋台をアンカーバーで連結するなどしてその相対変位を制限する構造

(参考例)

変位制限構造概念図

 I種地盤  地震による揺れの大きさは、地盤の硬さなどにより異なり、耐震設計上ではこれを考慮する必要がある。示方書では、地盤の揺れの程度に応じて、I種地盤、II種地盤及びIII種地盤に分類している。概略の目安としては、良好な洪積地盤及び岩盤等はI種地盤に該当する。

(参考図)

橋りょう概念図

橋りょう概念図