部局等 | 補助事業者等 (事業主体) |
補助事業等 | 年度 | 事業費 (国庫補助対象事業費) |
左に対する国庫補助金等交付額 | 不当と認める事業費 (国庫補助対象事業費) |
不当と認める国庫補助金等相当額 | |
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||||
(365) | 青森県 | 青森県 | 地域住宅交付金 (公営住宅等整備) |
20 | 21,801 (21,801) |
9,810 | 20,230 (20,230) |
9,103 |
この交付金事業は、青森県が、弘前市大字浜の町東地内において、県営住宅浜の町団地集会所(木造平屋建て1棟)の建設工事を実施したものである。
同県は、この集会所について、柱、土台、筋交いなどの部材で骨組みを構成する木造軸組工法により建設することとし、建築基準法(昭和25年法律第201号)等に基づき、地震や風により生ずる水平力に抵抗するため、柱と柱との間に筋交いを設置した壁を耐力壁として、張り間方向(注1)
に10か所及び桁行方向(注1)
に9か所それぞれ配置することとしていた。そして、耐力壁を構成する柱については、水平力により生ずる引抜き力に抵抗するため、同法等に基づく告示「木造の継手及び仕口の構造方法を定める件」(平成12年建設省告示第1460号)等に基づき、壁倍率(注2)
を基に計算するなどして選定した金物等(以下「接合金物」という。)を用いて土台等と接合することとしていた。そして、耐力壁を構成する柱のうち、出隅の柱(注3)
3か所については、張り間方向のたすき掛け筋交いを設置した耐力壁の壁倍率4と桁行方向の一方向筋交いを設置した耐力壁の壁倍率2との差2を基に計算するなどして選定した8.5kNの耐力を有する接合金物を用いて土台等と接合することとしていた(参考図参照)
。
同県は、上記のように耐力壁を配置すれば、張り間方向及び桁行方向について、設計計算上の耐力壁の長さが、水平力に対して必要な耐力壁の長さをそれぞれ上回ることなどから安全であるとして設計し、これにより施工していた。
しかし、前記の告示等によると、接合金物を選定する際の計算は、柱の両側に同一方向で耐力壁が配置される場合は二つの耐力壁の壁倍率の差を基に行うこととされているが、柱の片側のみに耐力壁が配置される場合は当該耐力壁の壁倍率を基に行うこととされている。そして、出隅の柱には、耐力壁が張り間方向及び桁行方向のいずれも片側のみに配置されていることから、上記の計算は、当該耐力壁の壁倍率を基に行うべきであったのに、同県は誤って前記のとおり、直交する方向の耐力壁の壁倍率の差を基に行っていた。
このため、前記の出隅の柱3か所について、たすき掛け筋交いを設置した張り間方向の耐力壁の壁倍率4を基に改めて計算を行うと、いずれも15kNの耐力を有する接合金物により柱と土台、基礎コンクリート等とを接合する必要があると認められた。
このように接合方法が適切でない出隅の柱で構成される張り間方向の壁3か所は耐力壁とは認められないことから、改めて有効な設計計算上の耐力壁の長さを算出すると、張り間方向は16.38mとなり、水平力に対して必要な耐力壁の長さ25.96mを大幅に下回っていた。
したがって、本件集会所(工事費相当額20,230,973円、交付対象工事費20,230,000円)は、設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る交付金相当額9,103,500円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同県において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのに、これに対する検査が十分でなかったことなどによると認められる。
(注1) | 張り間方向、桁行方向 一般的に屋根の構造から建物の短辺方向を張り間方向、長辺方向を桁行方向という。
|
(注2) | 壁倍率 筋交いの種類等に応じて建築基準法等において定められている耐力壁の強さを表す数値。この数値は、壁の実長に乗じて設計計算上の耐力壁の長さを算出する際にも用いられる。
|
(注3) | 出隅の柱 建物の外側の隅の柱
|
耐力壁概念図
接合金物概念図
引抜き力の概念図