部局等 | 補助事業者等 (事業主体) |
補助事業等 | 年度 | 事業費 (国庫補助対象事業費) |
左に対する国庫補助金等交付額 | 不当と認める事業費 (国庫補助対象事業費) |
不当と認める国庫補助金等相当額 | |
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||||
(367) | 兵庫県 | 神戸市 | 都市河川改修 | 20、21 | 233,082 (218,339) |
72,779 | 19,443 (19,443) |
6,481 |
この補助事業は、神戸市が、西区別府地区において、都市部の浸水被害等に対処するために、二級河川伊川に堰(せき)本体工として堰本体(幅34.9m、延長11.0m)、取付擁壁(高さ3.6m〜5.8m、延長計72.0m)等を築造するとともに、護岸工、護床工等を実施したものである(参考図1参照)
。
本件堰本体工の設計は、安定計算等の詳細な設計基準を定めた「建設省河川砂防技術基準(案)同解説」(社団法人日本河川協会編)等に基づいて行われている。これによると、地震時の滑動に対する安全率は、1.2以上を確保することとされている。
そして、同市は、取付擁壁の大部分(延長計72.0mのうちの68.5m。以下「本件取付擁壁」という。)の設計については、安定計算において、土圧、地震時慣性力及び底面摩擦力から算出される地震時の滑動に対する安全率が許容値の1.2を下回るものの、本件取付擁壁の前面に設置する護床ブロック(2t型のコンクリートブロックを金具で連結して河床に敷き詰めたもの)等による受働土圧を考慮して安定計算を行えば安全率が1.22から1.50までとなり、安全であるとして、これにより施工していた(参考図2参照)
。
しかし、「解説・河川管理施設等構造令」(財団法人国土技術研究センター編)によると、取付擁壁の構造は、河床の洗掘等に対処するために設置される所要の長さを有する一体の構造物である水叩(たた)きなどが仮に流失しても、安定である構造とすることとされている。このため、本件の護床ブロックのように水叩きよりも一体性がない構造物が流失した場合においても、本件取付擁壁は安定である構造とする必要があると認められた。
そこで、護床ブロック等による受働土圧を考慮せずに改めて安定計算を行ったところ、本件取付擁壁は、地震時の滑動に対する安全率が0.86から1.08までとなり、許容値の1.2を下回っていて、安定計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。
したがって、本件取付擁壁(工事費相当額19,443,000円)は、設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る国庫補助金相当額6,481,000円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同市において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのに、これに対する検査が十分でなかったことなどによると認められる。
堰本体工概念図
地震時の滑動に対する安定計算に関係する外力の作用状況図