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  • 平成22年度|
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  • (3) 工事の施工が設計と相違していたもの

公営住宅の施工が設計と相違していたもの


公営住宅の施工が設計と相違していたもの

(1件 不当と認める国庫補助金 4,695,750円)

  部局等 補助事業者等
(事業主体)
補助事業等 年度 事業費
(国庫補助対象事業費)
左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める事業費
(国庫補助対象事業費)
不当と認める国庫補助金等相当額
千円 千円 千円 千円
(371) 茨城県 久慈郡大子町 地域住宅交付金
(公営住宅等整備)
20 10,720
(10,720)
4,824 10,436
(10,435)
4,695

 この交付金事業は、大子町が、同町大字矢田地内において、町営えのき台住宅6号棟(木造平屋建て1戸)の建設工事を実施したものである。
 同町は、この住宅について、柱、土台、筋交いなどの部材で骨組みを構成する木造軸組工法により建設することとし、建築基準法(昭和25年法律第201号)等に基づき、地震や風により生ずる水平力に抵抗するため、柱と柱との間に一方向筋交いを設置した壁を耐力壁として、張り間方向(注1) 8か所及び桁行方向(注1) 7か所にそれぞれ配置することとしていた。そして、耐力壁を構成する柱については、水平力により生ずる引抜き力に抵抗するため、同法等に基づく告示「木造の継手及び仕口の構造方法を定める件」(平成12年建設省告示第1460号。以下「告示」という。)に基づき、筋交いの種類等別に定められている金物等(以下「接合金物」という。)を用いて土台等と接合することとしていた。
 同町は、上記のように耐力壁を配置すれば、張り間方向及び桁行方向について、設計計算上の耐力壁の長さが、水平力に対して必要とされる耐力壁の長さをそれぞれ上回ることなどから安全であるとして設計し、これにより施工することとしていた。
 しかし、請負人は、出隅の柱(注2) で構成された桁行方向の壁のうち2か所について、接合金物は設計に基づいた一方向筋交いを設置する場合のものを用いていたが、筋交いは誤って設計と異なるたすき掛け筋交いを設置していた(参考図参照) 。このように、たすき掛け筋交いを設置した場合には、一方向筋交いを設置した場合よりも水平力に対して壁が変形しにくいために柱に大きな引抜き力が生ずることとなるので、引抜き力に対してより大きな耐力を有する接合金物を用いることが必要となる。
 このため、取り付けられている接合金物が引抜き力に抵抗できるものとなっているか告示により確認したところ、引抜き力に対して抵抗できない状態になっていて、桁行方向2か所の壁は耐力壁とは認められないものとなっていた。そこで、改めて有効な設計計算上の耐力壁の長さを算出すると、桁行方向は9.00mとなり、水平力に対して必要な耐力壁の長さ12.84mを大幅に下回っていた。
 したがって、本件公営住宅(工事費相当額10,436,172円、交付対象工事費10,435,000円)は、筋交いの施工が設計と相違していたため、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る交付金相当額4,695,750円が不当と認められる。
 このような事態が生じていたのは、請負人が設計図書、法令等についての理解が十分でないまま施工していたのに、これに対する同町の監督及び検査が十分でなかったことによると認められる。

(注1)
 張り間方向、桁行方向  一般的に屋根の構造から建物の短辺方向を張り間方向、長辺方向を桁行方向という。
(注2)
 出隅の柱  建物の外側の隅の柱

(参考図)

耐力壁概念図

耐力壁概念図

引抜き力の概念図

引抜き力の概念図