部局等 | 補助事業者等 (事業主体) |
補助事業等 | 年度 | 事業費 (国庫補助対象事業費) |
左に対する国庫補助金等交付額 | 不当と認める事業費 (国庫補助対象事業費) |
不当と認める国庫補助金等相当額 | |
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||||
(377) | 広島県 | 三原市 | 地方道路交付金、地域活力基盤創造交付金 | 20、21 | 107,779 (107,779) |
69,664 | 29,281 (29,281) |
18,732 |
この交付金事業は、三原市が、同市木原町地内において、内畠川に橋りょう(橋長10.0m、幅員8.2m)を新設するため、下部工として逆T式橋台2基の築造等を、上部工としてプレテンション方式PC床版桁の製作・架設等をそれぞれ実施したものである。
このうち、右岸側の橋台(以下「A1橋台」という。)の基礎杭は、外径600mm、杭長7.0mの鋼管杭6本を打設するものである。
本件橋りょうの設計は、「道路橋示方書・同解説」(社団法人日本道路協会編)、「杭基礎設計便覧」(社団法人日本道路協会編)等(以下、これらを「示方書等」という。)に基づいて行われている。示方書等によると、基礎杭を支持杭とする場合、杭先端を支持層へ根入れすることなどとされている。また、支持層については、ボーリング調査、標準貫入試験等(以下「ボーリング調査等」という。)を行った結果、砂層については、地盤強度(N値)が30程度以上であれば良質な支持層とみなすとされている。さらに、示方書等に示されている杭先端の支持力は、良質な支持層が十分な厚さを有する場合を前提とするとされている。
そして、同市は、左岸側の橋台付近のボーリング調査等の結果、花こう岩が風化して土砂化したN値30以上の層があり、これをA1橋台の基礎杭の支持層とすれば、杭1本当たりの許容鉛直支持力(注)
は、常時568kN、地震時847kNとなり、杭に作用する鉛直力(注)
常時561kN、地震時716kNを上回ることから安定計算上安全であるとして、これにより施工することとしていた。
また、本件橋りょうの施工は、広島県制定の「土木工事共通仕様書」を準用して行っている。これによると、請負人は、杭先端が設計図書に示された支持層付近に達した時点で支持層の確認をしなければならないなどとされている。
そして、請負人は、同市と協議の上、現場で杭先端の支持層の確認をするため、杭を所定の深さまで打設した後、杭先端の土を採取し、この土を用いて土質試験を行った。その結果、N値30以上の良質な支持層であるとして同市に報告し、同市もこれを承認していた。
しかし、請負人が支持層を確認するために行った土質試験の方法は、粘性土を対象としたものであり、本件のように風化して土砂化した花こう岩を対象としたものではないと認められた。
そこで、同市が本院の検査を踏まえて、杭先端の支持層の確認をするため、A1橋台付近で新たに2か所のボーリング調査等を行った結果、杭先端の層のN値は、30以上でなかったり、30以上であるものの、支持層としては十分な厚さを有していなかったりしていて、いずれも良質な支持層とは認められなかった。
上記の結果に基づき、改めて杭先端の支持力を考慮しないで本件基礎杭の安定計算を行うと、杭1本当たりの許容鉛直支持力は、常時251kN、地震時371kNとなり、杭に作用する鉛直力常時561kN、地震時716kNを大幅に下回っていて、安定計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。
したがって、本件橋りょうは、基礎杭の設計及び施工が適切でなかったため、A1橋台及びこれに架設された上部工等(これらの工事費相当額29,281,000円)は、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る交付金相当額18,732,085円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同市において、示方書等についての理解が十分でなかったこと、また、請負人が支持層の確認を適切に行っていなかったのに、これに対する監督及び検査が十分でなかったことなどによると認められる。