会計名及び科目 | 一般会計 (組織)国土交通本省 | |
(項)総合的バリアフリー推進費 | ||
(項)鉄道駅移動円滑化設備整備事業費 | ||
(項)鉄道網整備事業費 | ||
平成19年度以前は、 | (項)国土交通本省 | |
(項)都市鉄道・幹線鉄道整備事業費 | ||
部局等 | 国土交通本省 | |
補助の根拠 | 予算補助 | |
補助事業 | 交通施設バリアフリー化設備整備費補助金(平成22年度は交通施設バリアフリー化設備等整備費補助金) | |
鉄道駅移動円滑化施設整備事業費補助(平成19年度以前は鉄道駅総合改善事業費補助) | ||
地下高速鉄道整備事業費補助 | ||
鉄道駅等の移動等円滑化の概要 | 鉄道駅等において、エレベーター等の設置等による高齢者、障害者等の円滑な通行に適する経路の確保、転落防止設備の整備、誘導ブロックの整備等を実施するもの | |
補助事業が実施された駅数 | 54鉄道事業者等の929駅(平成18年度〜22年度) | |
上記に係る補助対象事業費 | 1670億2833万余円 | (平成18年度〜22年度) |
上記に対する国庫補助金交付額 | 452億5845万余円 | |
整備の効果が十分に発現していないなどの駅数 | 405駅(1日当たりの平均的な利用者数計16,121,372人) | |
上記に係る補助対象事業費 | 923億6360万余円 | (平成18年度〜22年度) |
上記に対する国庫補助金交付額 | 244億9911万円 | (背景金額) |
(平成23年10月28日付け 国土交通大臣宛て)
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。
記
国は、高齢者、障害者等の自立した日常生活及び社会生活を確保することの重要性に鑑み、平成18年6月に制定された「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(平成18年法律第91号。以下「法」という。)に基づき、旅客施設等の構造及び設備を改善するための措置等を講ずることにより、鉄道駅等(以下、単に「駅」という。)の公共交通機関等における移動等円滑化(注1)
の促進を図ることとしている。
国は、法に基づき、18年12月に「移動等円滑化の促進に関する基本方針」(平成18年国家公安委員会・総務省・国土交通省告示第1号。以下「基本方針」という。)を策定している。基本方針においては、駅の移動等円滑化の目標が定められており、1日当たりの平均的な利用者数(以下「1日当たり利用者数」という。)が5,000人以上の駅(以下「対象駅」という。)については、22年までに、原則として全ての駅について、エレベーター等の設置等による円滑な通行に適する経路の確保、ホームドア、点状ブロック等の転落防止設備の整備、視覚障害者誘導用ブロック(以下「誘導ブロック」という。)の整備、便所がある場合の障害者対応型便所の設置等の移動等円滑化を実施することとされている。
法によると、鉄道事業者等は、旅客施設等を新たに建設し又は旅客施設等について大規模な改良を行うときは、「移動等円滑化のために必要な旅客施設又は車両等の構造及び設備に関する基準を定める省令」(平成18年国土交通省令第111号。以下「円滑化基準」という。)に適合させなければならないこととされており、また、既存の旅客施設等については、円滑化基準に適合させるために必要な措置を講ずるよう努めなければならないこととされている。円滑化基準は、例えば次のような移動等円滑化のための設備(以下「移動等円滑化設備」という。)等が適合すべき基準について示すものである。
〔1〕 公共用通路と車両等の乗降口との間の経路であって、高齢者、障害者等の円滑な通行に適するもの(以下「移動等円滑化経路」という。)を乗降場ごとに1以上設けなければならないこと
〔2〕 傾斜路(スロープ)の勾配部分は、接続する通路との色の明度差等が大きいことにより容易に識別できるものであること
〔3〕 階段は、手すりが両側に設けられていること、また、階段の通ずる場所を示す点字を、手すりの端部の付近に貼り付けること
〔4〕 階段、傾斜路及びエスカレーターのそれぞれの上端及び下端に近接する通路等には、警告のため、点状ブロック(以下「警告ブロック」という。)を敷設しなければならないこと
〔5〕 出入口の付近等に、駅の構造及び主要な設備の配置を音、点字その他の方法により視覚障害者に示すための設備(以下「触知案内図」という。)を設けなければならないこと
また、貴省は、19年7月に、「公共交通機関の旅客施設に関する移動等円滑化整備ガイドライン」(平成19年7月国土交通省。以下「ガイドライン」という。)を定めている。ガイドラインは、例えば次のような旅客施設の標準的な整備内容や、これ以外の望ましい整備内容等を示すものである。
〔1〕 エレベーターロビー付近に下りの段差や傾斜が近接しているなどの危険な状況を作り出さないこと
〔2〕 上り又は下り専用のエスカレーターの場合、乗降口付近の通路の床面等の分かりやすい位置等において、進入の可否を示すこと
〔3〕 階段への誘導ブロックの敷設経路は、手を伸ばせば手すりに触れられる程度の距離を離した位置とすること
〔4〕 警告ブロックと1本の線状突起を組み合わせたホーム縁端警告ブロックを、プラットホーム縁端部の警告のために敷設すること
貴省は、駅の移動等円滑化を促進するため、駅において移動等円滑化設備を整備する事業に対して、交通施設バリアフリー化設備整備費補助金(注2)
、鉄道駅移動円滑化施設整備事業費補助(注3)
及び地下高速鉄道整備事業費補助(以下、これらを合わせて「補助金」という。)を交付している。
そして、表1
のとおり、法が施行された18年度から22年度までの間に、54鉄道事業者等(注4)
の計929駅(以下「補助金交付駅」という。)において、補助金によりエレベーター等の移動等円滑化設備が整備されている(補助対象事業費計1670億2833万余円、国庫補助金交付額計452億5845万余円)。
表1 | 駅の移動等円滑化に関する補助金の交付状況 | (単位:百万円) |
年度 | 平成 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 計 |
補助対象事業費 | 21,833 | 25,900 | 25,683 | 36,617 | 56,992 | 167,028 |
国庫補助金交付額 | 5,428 | 6,793 | 6,981 | 9,604 | 16,449 | 45,258 |
交通施設バリアフリー化設備整備費補助金 | 2,325 | 2,726 | 3,125 | 4,955 | 12,216 | 25,349 |
鉄道駅移動円滑化施設整備事業費補助 | 1,374 | 2,191 | 2,369 | 1,792 | 832 | 8,561 |
地下高速鉄道整備事業費補助 | 1,728 | 1,875 | 1,486 | 2,856 | 3,400 | 11,347 |
鉄道事業者等数 | 31社等 | 32社等 | 34社等 | 32社等 | 40社等 | 54社等 |
整備駅数 | 266駅 | 262駅 | 229駅 | 293駅 | 387駅 | 929駅 |
注(1) | 東日本大震災により被災した東北地方等に所在する駅に係る補助対象事業費等は除外している。 |
注(2) | 地下高速鉄道整備事業費補助に係る補助対象事業費及び国庫補助金交付額は、大規模改良のうち移動等円滑化設備の整備に係るものを計上しており、整備駅数は、東京地下鉄株式会社の新線建設に係る4駅を含んでいる。 |
注(3) | 各年度の補助対象事業費等は、事業を実施した年度に計上している。 |
注(4) | 複数年度にわたり整備している鉄道事業者等及び駅があるため、各年度の鉄道事業者等数又は整備駅数を合計しても計欄の鉄道事業者等数又は駅数とは一致しない。 |
このように、国や鉄道事業者等において、駅の移動等円滑化を進めてきたことから、貴省は、22年度末における駅の移動等円滑化の状況について、表2 のとおり、全国の対象駅計2,813駅のうち2,401駅がエレベーター等により円滑化基準に適合して円滑な通行に適する経路を確保しているなどとしている。
表2 | 駅の移動等円滑化の状況 | (単位:駅、%) |
区分 | 駅数(%) |
平成22年度末時点の対象駅 | 2,813(100%) |
うちエレベーター等により円滑化基準に適合して円滑な通行に適する経路を確保している駅 | 2,401(85%) |
うち円滑化基準に適合する誘導ブロックを敷設している駅 | 2,736(97%) |
うち円滑化基準に適合する案内設備を設置している駅 | 1,713(61%) |
うち円滑化基準に適合する便所を設置している駅 | 2,245(80%) |
うち円滑化基準に適合する転落防止設備を設置している駅 | 2,783(99%) |
(注2) | 平成22年度は交通施設バリアフリー化設備等整備費補助金であり、23年度から、新たに創設された地域公共交通確保維持改善事業費補助金に統合された。 |
(注3) | 平成19年度以前は鉄道駅総合改善事業費補助 |
(注4) | 54鉄道事業者等 東京地下鉄株式会社、北海道旅客鉄道株式会社、四国旅客鉄道株式会社、九州旅客鉄道株式会社、東日本旅客鉄道株式会社、東海旅客鉄道株式会社、西日本旅客鉄道株式会社、東武鉄道株式会社、西武鉄道株式会社、京成電鉄株式会社、京王電鉄株式会社、小田急電鉄株式会社、東京急行電鉄株式会社、京浜急行電鉄株式会社、相模鉄道株式会社、名古屋鉄道株式会社、近畿日本鉄道株式会社、南海電気鉄道株式会社、京阪電気鉄道株式会社、阪急電鉄株式会社、阪神電気鉄道株式会社、西日本鉄道株式会社、新京成電鉄株式会社、北大阪急行電鉄株式会社、神戸高速鉄道株式会社、神戸電鉄株式会社、山陽電気鉄道株式会社、札幌市、東京都、横浜市、名古屋市、大阪市、神戸市、長野電鉄株式会社、しなの鉄道株式会社、関東鉄道株式会社、秩父鉄道株式会社、北総鉄道株式会社、千葉ニュータウン鉄道株式会社、東葉高速鉄道株式会社、東京臨海高速鉄道株式会社、箱根登山鉄道株式会社、伊豆箱根鉄道株式会社、静岡鉄道株式会社、三岐鉄道株式会社、水間鉄道株式会社、能勢電鉄株式会社、土佐電気鉄道株式会社、愛知環状鉄道株式会社、土佐くろしお鉄道株式会社、東京モノレール株式会社、湘南モノレール株式会社、高尾登山電鉄株式会社、財団法人交通エコロジー・モビリティ財団
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(検査の観点及び着眼点)
我が国においては、本格的な高齢社会を迎えるなどして、高齢者、障害者等が自立した日常生活及び社会生活を営むことができる社会を構築することが求められており、駅における移動等円滑化は一層重要性を増してきている。そして、駅において、移動等円滑化設備が円滑化基準に適合し又はガイドラインの標準的な整備内容に沿って(以下、単に「ガイドラインに沿って」という。)適切に整備されれば、高齢者、障害者等の移動上及び施設の利用上の利便性及び安全性が向上し、当該駅の適切な移動等円滑化に資するものとなる。
そこで、本院は、効率性、有効性等の観点から、駅の移動等円滑化を促進するために交付された補助金により整備された移動等円滑化設備が円滑化基準に適合し又はガイドラインに沿って(注5)
適切に整備され、かつ、管理が適切に行われ、高齢者、障害者等の利便性及び安全性が確保されているか、駅前広場等の公共用通路までの移動等円滑化経路の確保が図られているかなどに着眼して検査した。
(検査の対象及び方法)
本院は、18年度から22年度までの間に補助金により移動等円滑化設備が整備された54鉄道事業者等の補助金交付駅929駅を対象として検査した。
検査に当たっては、上記929駅のうち380駅において、移動等円滑化実績等報告書等の関係書類及び現地の状況を確認するなどして会計実地検査を行うとともに、残りの549駅については関係書類の提出を受けるなどして検査を行った。
(検査の結果)
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
ア 補助金により整備された移動等円滑化設備が円滑化基準に適合せず又はガイドラインに沿っていないもの
202駅 補助対象事業費(注6) 計544億1552万余円 国庫補助金交付額計149億5597万余円
202駅(1日当たり利用者数計6,912,096人)において、表3 のとおり、傾斜路の勾配部分が接続する通路との色の明度等の差により容易に識別できなかったり、触知案内図による案内が適切でなかったりなどしていて、補助金により整備された移動等円滑化設備が円滑化基準に適合せず又はガイドラインに沿っていない事態が見受けられた。
事態 | 円滑化基準に適合していないもの | ガイドラインに沿っていないもの |
〔1〕 エレベーターの鏡が設置されていないなどしていて、エレベーターの設備が適切に整備されていないもの | — | 2駅 |
〔2〕 傾斜路の勾配部分が接続する通路との色の明度等の差により容易に識別できないなどしていて、傾斜路の安全性が十分に確保されていないもの | 47駅 | 3駅 |
〔3〕 階段又は傾斜路の手すりに点字による案内が貼付されていないなどしていて適切でないもの | 16駅 | 33駅 |
〔4〕 誘導ブロックによる誘導経路に障害物があるなどしていて、誘導経路の安全性が十分に確保されていないもの | — | 15駅 |
〔5〕 誘導ブロックが階段の手すりに手を伸ばせば触れられる程度の距離を離した位置に敷設されていないなどしていて、その敷設が適切でないもの | 4駅 | 73駅 |
〔6〕 警告ブロックが階段の上下端に敷設されていないなどしていて、その敷設が適切でないもの | 19駅 | 4駅 |
〔7〕 触知案内図等による案内が駅の主要な設備の配置等と相違するなどしていて適切でないもの | 16駅 | 36駅 |
〔8〕 便所の案内図等による案内が便所の構造を示していないなどしていて適切でないもの | 28駅 | 6駅 |
〔9〕 ホーム縁端警告ブロックの敷設長が不足しているなどしていて、その敷設が適切でないもの | 1駅 | 15駅 |
〔10〕 その他 | 8駅 | 1駅 |
これらの事態は、補助金により整備された移動等円滑化設備が円滑化基準に適合せず又はガイドラインに沿っておらず、高齢者、障害者等の利便性又は安全性が十分に確保されていない状況になっていて、移動等円滑化設備の整備の効果が十分に発現していないと認められる。
イ 補助金により整備された移動等円滑化設備の周辺の整備等が適切でなく、当該設備の利用に当たっての安全性が十分に確保されていないもの
16駅 補助対象事業費計51億4828万余円 国庫補助金交付額計14億2532万余円
16駅(1日当たり利用者数計596,784人)において、表4 のとおり、補助金により整備されたエレベーターの前に下り傾斜があり、乗降ロビーが十分に確保されないなどの事態が見受けられた。
事態 | 駅数 |
〔1〕 エレベーターの前に下り傾斜があり、乗降ロビーが十分に確保されないなどしているもの | 8駅 |
〔2〕 既設の誘導ブロックによる誘導経路が階段の手すりに衝突するようになっているなど誘導経路が適切でないもの | 3駅 |
〔3〕 その他 | 5駅 |
これらの事態は、補助金により整備された移動等円滑化設備の周辺の整備等が適切でないため、当該設備の利用に当たっての安全性が十分に確保されていない状況になっていて、移動等円滑化設備の整備の効果が十分に発現していないと認められる。
ウ 補助金により整備された移動等円滑化設備に対する案内設備の整備等が適切でなく、整備の効果が十分に発現していないもの
285駅 補助対象事業費計584億8967万余円 国庫補助金交付額計146億1050万余円
285駅(1日当たり利用者数計12,388,454人)において、表5 のとおり、触知案内図が整備されていなかったり、触知案内図は整備されているものの、補助金により整備された移動等円滑化設備が表示されていなかったりなどしている事態が見受けられた(これらの中には、アの事態と重複しているものがある。)。
事態 | 駅数 |
〔1〕 誘導ブロックが敷設されていないなどしていて、補助金により整備された移動等円滑化設備に対する誘導が適切でないもの | 16駅 |
〔2〕 触知案内図が整備されていないもの | 252駅 |
〔3〕 触知案内図に補助金により整備された移動等円滑化設備が表示されないなどしているもの | 20駅 |
〔4〕 その他 | 8駅 |
これらの事態は、補助金により整備された移動等円滑化設備の利用のための案内設備の整備等が適切でないため、高齢者、障害者等が利用しやすいものとなっておらず、移動等円滑化設備の整備の効果が十分に発現していないと認められる。
エ 補助金により整備された移動等円滑化設備が破損するなどしていて、その管理が適切でないもの
27駅 補助対象事業費計84億0131万余円 国庫補助金交付額計23億4998万余円
27駅(1日当たり利用者数計974,383人)において、表6 のとおり、警告ブロックが破損したままとなっていたり、誘導ブロックによる誘導経路上にごみ箱等の移動の支障になる物が置かれていたりなどしている事態が見受けられた。
事態 | 駅数 |
〔1〕 整備した誘導ブロックを無断で撤去するなどしているもの | 3駅 |
〔2〕 誘導経路上に移動の支障になる物が置かれているなどしているもの | 5駅 |
〔3〕 触知案内図等の整備後に適切に改修等を行っていないため、実態と相違しているなどしているもの | 9駅 |
〔4〕 警告ブロック等が破損等したままとなっているもの | 10駅 |
〔5〕 その他 | 2駅 |
これらの事態は、補助金により整備された移動等円滑化設備が破損したままとなっているなどしていてその管理が適切でないため、移動等円滑化設備の整備の効果が十分に発現していないと認められる。
7駅 補助対象事業費計27億6124万余円 国庫補助金交付額計7億0974万余円
7駅(1日当たり利用者数計763,937人)において、補助金により整備されたエレベーターの稼働時間に制限があったり(3駅)、円滑化基準において、駅の営業時間内に、隣接した他の施設のエレベーターを利用することにより公共用通路までの円滑な移動ができる場合は移動等円滑化経路に代えることができる旨の規定があるが、そのような公共用通路への経路となっている隣接施設のエレベーターの稼働時間に制限があったり(4駅)していて、駅の営業時間内に移動等円滑化経路が確保されていない時間がある状態になっている事態が見受けられた。
これらの事態は、移動等円滑化経路が十分に確保されていないものと認められる。
上記の各項目に係る駅には重複しているものがあり、その重複を除くと、計405駅、1日当たり利用者数計16,121,372人、補助対象事業費計923億6360万余円、国庫補助金交付額計244億9911万円となる。
(改善を必要とする事態)
以上のように、補助金により整備された移動等円滑化設備について、駅における高齢者、障害者等の移動上及び施設の利用上の利便性及び安全性の確保が十分に図られておらず、整備の効果が十分に発現していないなどの事態は適切とは認められず、改善の要があると認められる。
(発生原因)
このような事態が生じているのは、鉄道事業者等において、駅の全面的な改修が困難な場合があることにもよるが、円滑化基準及びガイドラインの理解が不足していたり、移動等円滑化を適切に実施することに対する認識が十分でなかったりしていること、また、貴省において、鉄道事業者等に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。
国は、23年3月に基本方針を見直して、「移動等円滑化の促進に関する基本方針」(平成23年国家公安委員会・総務省・国土交通省告示第1号)を策定している。これによれば、1日当たり利用者数が3,000人以上である駅については、32年度までに、原則として移動等円滑化を実施することなどとされている。
移動等円滑化設備の整備は、高齢者、障害者等の交通弱者の安全や安心の確保とも密接に関わるものであり、鉄道事業者等においても、様々な制約条件の中で駅の移動等円滑化に努めているところではあるが、移動等円滑化設備を適切に整備するとともに、整備された移動等円滑化設備が老朽化するなどして、その整備の効果が薄れていないかについても、不断に点検し改善していく必要がある。
ついては、貴省において、移動等円滑化設備が円滑化基準に適合し又はガイドラインに沿って適切に整備されるとともに、整備の効果が十分に発現するよう、次のとおり改善の処置を要求する。
ア 移動等円滑化設備の整備に対する補助金の交付に当たっては、当該設備が円滑化基準に適合し又はガイドラインに沿って、高齢者、障害者等にとって安全で利用しやすいものとなるよう、鉄道事業者等に対して、円滑化基準及びガイドラインについて周知徹底を図るとともに、補助金により整備する移動等円滑化設備については原則として円滑化基準に適合させることを明確にすること
イ 鉄道事業者等に対して、補助金により整備された移動等円滑化設備の整備の効果が十分に発現するよう、当該設備周辺の整備の適切な実施に努めること、当該設備を適切に管理すること、移動等円滑化経路が隣接施設を経由する場合においては当該移動等円滑化経路の適切な確保に努めることなどについて周知すること