国土交通省は、一般国道等の整備事業を実施しており、所管する公共事業の効率性及びその実施過程の透明性の向上を図るため、新規事業採択時評価、再評価及び完了後の事後評価等(以下「新規事業採択時評価等」という。)において、費用便益比を算定するなどの費用便益分析を行うことなどとしている。しかし、分析業務の成果品として、分析結果を一覧表にした整理表以外には分析結果の算出の根拠資料を入手しておらず、便益の具体的な計算過程について確認できない状況となっている事態や、総事業費の具体的な算出方法や算出根拠が明確でない上、費用の具体的な算出内訳についても明確な根拠資料により確認できない状況となっている事態が見受けられた。
したがって、国土交通省において、費用便益比等の数値の算出方法等について、便益の算出根拠となる分析データ等の成果品の提出を分析業務の発注先に求め、便益の算出根拠を明確にして、その根拠資料を保存し、また、費用便益比の算定の基礎となる総事業費について、費用の算出方法及び算出根拠を明確にして、その根拠資料を保存するよう、国土交通大臣に対して平成22年10月に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。
本院は、国土交通本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、国土交通省は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。
ア 23年3月に各地方整備局等に対して事務連絡を発して、道路事業における新規事業採択時評価等の際に実施する費用便益分析に用いる便益については、費用便益分析業務の成果品として発注先から算出に用いた分析データ等の提出を受け、便益の算出根拠を明確にしてその根拠資料を保存することとした。
イ 22年12月に各地方整備局等に対して事務連絡を発して、道路事業における新規事業採択時評価等の際に実施する費用便益分析に用いる費用については、総事業費の算出方法及び算出根拠を明確にして、その根拠資料を適切に整理し、保存することとした。