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  • 平成22年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第13 防衛省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

りん議決裁システムを利用して起案する文書の対象を具体的に規定したり、積極的なシステム利用を促したりなどすることによりシステムの有効な利用が図られるよう改善させたもの


(1) りん議決裁システムを利用して起案する文書の対象を具体的に規定したり、積極的なシステム利用を促したりなどすることによりシステムの有効な利用が図られるよう改善させたもの

所管、会計名及び科目 防衛省所管 一般会計 (組織)防衛本省
 
(項)防衛本省共通費 (平成19年度は(項)防衛本省、平成18年度は
  (項)防衛本庁)
 
平成17年度以前は、
  内閣府所管 一般会計 (組織)防衛本庁 (項)防衛本庁
部局等 内部部局
りん議決裁システムの概要 起案文書の作成等に当たり、意思決定の迅速化や的確な情報管理を図るなどのため、起案、合議、審査、決裁等の業務を電子的に行うシステム
上記システムの運用等に係る経費
2億5558万円

(平成16年度〜22年度)


1 りん議決裁システムの概要

 防衛省は、「総合的な文書管理システムの整備について」(平成12年3月各省庁事務連絡会議及び行政情報システム各省庁連絡会議幹事会了承)において、行政機関が作成・取得した文書について、情報通信技術を活用して組織的に適正に管理するため、総合的な文書管理システムを整備することとされたことなどの政府の行政情報化の方針を受けて、起案文書の決裁等の業務を電子的に行うため、平成13年度からりん議決裁システムの開発等を行い、16年度から運用を開始している。
 りん議決裁システムは、各種サーバ、端末、ソフトウェア等で構成されており、防衛省の内部部局における起案文書の作成等に当たり、意思決定の迅速化や的確な情報管理を図るなどのため、起案、合議、審査、決裁等の業務を電子的に行うものである。
 りん議決裁システムの16年度から22年度までの運用等に係る経費は、サーバ等機器の借料2億2565万余円(16年度から22年度まで)及び改修費2992万余円(16年度から21年度まで)、計2億5558万余円となっている。
 そして、「文書管理業務の業務・システム最適化計画」(平成19年4月各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議決定)において、総務省が文書管理業務・システムの効率化・高度化を図る観点から、政府全体で利用可能な一元的な文書管理システム(以下「一元的システム」という。)を整備することとされたことを受けて、各府省は、一元的システムを最大限活用することとされた。防衛省は、現在のりん議決裁システムを廃止して、24年度からこの一元的システムに移行することとし、電子決裁は引き続き一元的システムの電子決裁機能を活用して行うこととしている。一元的システムへの移行に当たって、決裁業務の処理方法等の見直しは予定されておらず、また、両システムはどちらも防衛省内のネットワーク等を利用して決裁等を行うもので、その操作性には大きな違いはないことなどから、基本的な業務処理や操作方法等はそのままりん議決裁システムから一元的システムに引き継がれることとなる。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、有効性等の観点から、りん議決裁システムが有効に利用され、意思決定の迅速化や的確な情報管理が図られているかなどに着眼して、内部部局において、りん議決裁システムの利用データ等を基に同システムを利用した起案文書の件数等を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。

(検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) りん議決裁システムの利用状況

 りん議決裁システムは、防衛省の内部部局のうち、地方協力局を除く大臣官房及び4局の秘書課等29課(22年度末現在)において利用されることとなっており、これらの課が年間に起案する文書数は約14,000件となっている。そして、16年度から22年度までの間にりん議決裁システムを利用した実績がある課は、17課(16年度から22年度までの間に廃止等された課で利用があった場合は、その業務を承継した22年度末現在の該当課に振り分けた。)と全体の6割程度にとどまっており、その利用件数は、18年度の734件をピークに減少し、22年度は全く利用されていない状況となっていた(表参照)。

表 りん議決裁システムを利用した起案文書の件数等
年度
平成
16
17
18
19
20
21
22
利用件数
59
401
734
331
37
2
0
利用した課の数
6
10
17
15
5
1
0

(2) りん議決裁システムの運用管理状況等

 防衛省は、りん議決裁システムの運用のために、「内部部局におけるりん議決裁システムの運用要領について(通知)」(平成16年3月官文第1901号。以下「運用要領」という。)を制定している。そして、運用要領によれば、決裁者及び承認者が、防衛大臣、防衛副大臣、防衛大臣政務官及び防衛事務次官となる起案文書等については、りん議決裁システムを利用して起案する文書の対象から除くこととされている。また、これら以外の起案文書については活用に努めると規定されているだけで、りん議決裁システムを利用することで確実に事務の効率化等が図られる定型的な起案文書等も、同システムを利用すべき対象として定められておらず、その利用も義務付けられていなかった。このため、運用開始から一度も利用していない課があったり、利用の実績がある課においても、運用開始当初は利用がなかったり、2年間から3年間で利用しなくなったりしている課があるなど、各課におけるりん議決裁システムの利用状況は区々となっていた。
 そして、各課における利用件数の把握状況についてみたところ、りん議決裁システムには利用者の案件処理状況を帳票として出力できる機能が備わっており、これを活用することで利用件数を確認することができることとなっていたが、実際にはこの機能を活用した利用件数の確認は行われておらず、このため利用向上のための適切な措置も執られていない状況となっていた。
 また、導入当初は、りん議決裁システムの操作方法等に係る研修等に伴い利用啓発が行われていたが、その後は組織的な研修等は行われておらず各課にその取組が任されていたため、利用啓発が十分ではない状況となっていた。
 りん議決裁システムは行政の情報化という政府の方針に従って導入されたものではあるが、以上のように、同システムの運用管理体制等が整備されておらず、導入当初から利用が低調であり、22年度には全く利用されていない事態は適切とは認められず、また、24年度から移行する予定の一元的システムにおいても電子決裁機能が活用されないおそれもあることから、早急に改善の必要があると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、次のことなどによると認められた。

ア 運用要領において、基本的な利用の考え方として、前記のとおり、一定の起案文書以外のものについては、活用に努めると規定されているだけで、定型的な起案文書等も、りん議決裁システムを利用すべき対象として定められておらず、その利用も義務付けられていなかったこと
イ 各課ごとのりん議決裁システムの利用状況を的確に把握しておらず、このため、その利用向上に向けての取組が十分でなかったり、職員に対する研修等についても各課に任せるなど、利用啓発についての組織的な取組が十分でなかったりしたこと

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、防衛省は、りん議決裁システムの有効な利用が図られ、ひいては一元的システム移行後も電子決裁機能が活用されるよう、次のような処置を講じた。

ア 23年8月に新たに「りん議決裁システム運用管理要領」を制定し、原則としてりん議決裁システムを利用して起案する文書の対象として定型的な起案文書等を具体的に規定するとともに、同月各課に通知を発し、これらの起案文書については同システムの利用を義務付けることとして、これを周知徹底した。
イ 上記の通知において、ア以外の文書についても積極的にりん議決裁システムを利用することとして、同システムを管理する部署が利用件数及び利用対象について確認し、利用件数の少ない課及び利用対象となる起案文書にシステムを利用していない課については的確に指導するとともに、各課自らにも利用件数及び利用対象について点検させるなどして利用を促すこととした。また、りん議決裁システムの利用に係る研修を実施するなど、組織的な取組による利用啓発を継続的に行っていくこととした。