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  • 平成22年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第13 防衛省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

学士の学位授与に係る学位審査手数料について、国費負担をしないことにより、経費の節減を図るよう改善させたもの


(2) 学士の学位授与に係る学位審査手数料について、国費負担をしないことにより、経費の節減を図るよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)防衛本省 (項)人材確保育成費
部局等 内部部局(防衛大学校及び防衛医科大学校の管理等の所掌部局)、防衛大学校(支払部局)、防衛医科大学校(同)
学士の学位授与に係る学位審査手数料の概要 学士の学位授与の申請に際し、独立行政法人大学評価・学位授与機構に対して支払う学位審査手数料
学士の学位授与申請者数 916人(平成21、22 両年度)
上記に係る学位審査手数料の合計
2290万円

1 学士の学位授与に係る審査手数料の概要

 防衛省は、防衛省設置法(昭和29年法律第164号)第14条等の規定に基づき防衛大学校及び防衛医科大学校(以下「防大等」という。)を設置し、幹部自衛官及び医師である幹部自衛官となるべき者に対して教育訓練を行っている。
 防大等の教育課程は、学校教育法(昭和22年法律第26号)の規定に基づき定められている大学設置基準(昭和31年文部省令第28号)等の規定に準拠して行われているが、防大等は、同法に規定する大学ではないことから、防大等の卒業生に対して、同法で定める学士の学位(以下「学位」という。)を授与することはできないこととなっている。
 そこで、防衛省は、防大等の卒業生に対する学位取得のため、平成3年に学位授与機構(16年4月以降は独立行政法人大学評価・学位授与機構。以下「機構」という。)に対して、防大等の教育課程が大学の学部等と同等の水準にあることについての認定を受けるための申出書を提出し、同年に、機構から、大学の学部等に相当する教育課程としての認定を受けている。
 したがって、3年度以降の防大等の卒業予定者で、学位を申請する者は、防大等を通じて機構に対して学位授与申請書等を提出し、機構が行う審査に合格した場合は、機構から学位が授与されることとなっている。その際、学位の授与を申請するに当たっては、あらかじめ学位審査手数料(以下「手数料」という。)として1人当たり25,000円を機構に支払うこととなっている。そして、防衛省は、この手数料について予算措置を行い、3年度以降は手数料を全額国費で負担している。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、経済性等の観点から、手数料を国費負担とする必要性があるかなどに着眼して、内部部局及び防大等において、21、22両年度に防衛省が負担した手数料を対象として、手数料を国費負担とすることとした理由等を聴取するなどの方法により会計実地検査を行うとともに、他省庁の大学校における手数料の取扱いなどについても調査を行った。

(検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。
 防衛省が、21、22両年度において国費負担した手数料は、表のとおりであり、計916人を対象として計2290万円負担していた。

表 手数料の国費負担状況
申請者数 左に係る手数料の国費負担額
平成21年度 防衛大学校 376人 9,400,000円
防衛医科大学校 63人 1,575,000円
439人 10,975,000円
22年度 防衛大学校 410人 10,250,000円
防衛医科大学校 67人 1,675,000 円
477人 11,925,000円
合計 916人 22,900,000円

 そして、手数料を国費負担としている理由について、防衛省は、防大等における教育の成果として、その卒業生全員に学位を取得させ、学位を有する幹部自衛官とすることが職務の遂行上必要であると判断したためであるとしていた。
 しかし、学位の取得は、自衛官の任官の要件とはなっていないこと、また、学位は、取得した個人にとって大学院等への進学等をはじめ様々な面で社会的価値を有するものであることから、基本的に個人に帰属するものであると認められる。
 また、他省庁の大学校における手数料の取扱いなどについて調査したところ、他省庁の大学校は、手数料を個人で負担しており、防大等における手数料の国費負担は公平性の観点から均衡を欠いていると認められた。
 以上のとおり、防大等の卒業生に対する学位の授与は本人の申請によるものであり、基本的に個人に帰属するものであることなどから、手数料を国費負担としている事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、防衛省において、自衛官の任官に当たっては、学位の取得は要件とされておらず、また、学位は基本的に個人に帰属するものであるにもかかわらず、手数料を国費負担とする必要性について、十分な検討を行っていなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、防衛省は、23年8月に24年度以降の防大等の卒業生については、手数料を個人負担とすることについて、防大等の学生に対して周知するとともに、手数料に係る24年度の予算要求を行わないこととする処置を講じた。