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  • 平成22年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第13 防衛省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

多連装ロケットシステムの演習弾の調達に当たって、再利用可能なコンテナの予備数の算定を見直すことにより、必要と認められる予備数を超えて保有しているコンテナを製造会社に官給して効率的に活用するよう改善させたもの


(4) 多連装ロケットシステムの演習弾の調達に当たって、再利用可能なコンテナの予備数の算定を見直すことにより、必要と認められる予備数を超えて保有しているコンテナを製造会社に官給して効率的に活用するよう改善させたもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)防衛本省 (項)武器車両等整備費
部局等 陸上幕僚監部、陸上自衛隊補給統制本部
再利用コンテナの概要 多連装ロケット弾を装弾するコンテナのうち、ロケット弾発射時に排出される燃焼ガス等から保護する断熱ゴムを装着することにより再利用が可能なコンテナ
平成22年度当初に保有していた再利用コンテナの数及び価格相当額
59個
2億4216万余円

上記のうち効率的に活用されていなかった再利用コンテナの数及び価格相当額
3個

1231万円


1 多連装ロケットシステムの演習弾の調達の概要

 陸上自衛隊は、主として遠距離における相手部隊等の広域目標を瞬間的に撃破することを目的として、自走発射機、指揮装置等から構成されている多連装ロケットシステムを平成4年度から16年度にかけて調達し、野戦特科部隊等に配備しており、国内での発射訓練を8年度以降毎年度実施している。
 上記の訓練に使用するロケット弾は6発ずつ専用のコンテナに収められており、当初調達していた演習弾1型のコンテナは、発射訓練実施後は再利用できないため廃棄していた。しかし、陸上自衛隊は、演習弾をより経済的に調達するため、11年度から15年度にかけてこのコンテナが再利用できるよう研究を進め、ロケット弾発射時に排出される燃焼ガス等からコンテナを保護する断熱ゴムを装着することにより、1回に限り再利用が可能なコンテナ(以下「再利用コンテナ」という。)を開発した。そして、15年度に3か年度の国庫債務負担行為により、再利用コンテナに入った演習弾1型(B)の調達を開始し、17年11月に1回目の納入がなされ、陸上自衛隊は18年9月に演習弾1型(B)による発射訓練を初めて実施した。なお、1回目のロケット弾を発射した後の再利用コンテナについては、陸上自衛隊北海道補給処白老弾薬支処等で保管していた。
 陸上自衛隊は、再利用コンテナを製造会社に官給して演習弾1型の構成品としてこのコンテナを利用する演習弾1型の調達契約を17年度に初めて締結し、同契約に基づき19年度から再利用コンテナを製造会社に官給している。そして、再利用コンテナに入った演習弾1型は20年2月に納入され、20年度から発射訓練に使用しており、18年度以降も毎年度同様の契約を締結して再利用コンテナを官給している。
 そして、陸上自衛隊は、前記の弾薬支処等において、22年度当初に再利用コンテナ計59個(コンテナ価格相当額(注) 計2億4216万余円)を保有していた。

(注)
コンテナ価格相当額  本件コンテナは単体としての調達がなかったことなどのため物品管理簿上の価格は計上されていないことから、平成17年度から21年度までの過去5か年間の調達契約による演習弾1型(B)と再利用コンテナ利用の演習弾1型の単価差の平均額4,104,435円を基に算定した額

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、効率性等の観点から、現在保有している再利用コンテナが効率的に活用されているかなどに着眼して、前記の22年度当初に保有していた再利用コンテナ59個を対象として、陸上幕僚監部、補給統制本部等において、多連装ロケットシステムの演習弾等の調達に係る契約関係書類やコンテナの再利用の状況を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。

(検査の結果)

 検査したところ、再利用コンテナの官給数等の状況について、次のような事態が見受けられた。
 陸上自衛隊は、22年度の演習弾の調達に当たり、再利用コンテナの官給数を、22年6月に、次の式のとおり算定していた。

〔1〕平成22年度契約の官給予定数28個=〔2〕当初保有数59個+〔3〕1回発射等による返納予定数24個−〔4〕既に官給が決定している数50個−〔5〕支処予備数5個

〔1〕  平成22年度契約の官給予定数:28個の内訳は、演習弾1型の製造用26個、射撃試験用1個、製造会社へ官給する予備数1個となっている。
〔2〕  当初保有数:各弾薬支処で保有していた再利用コンテナの22年度当初の数
〔3〕  1回発射等による返納予定数:22年度中に部隊が訓練により演習弾1型(B)を発射した後に弾薬支処に返納される再利用コンテナ23個及び製造会社に予備として官給していた再利用コンテナで弾薬支処に返納されるコンテナ1個の合計数
〔4〕  既に官給が決定している数:21年度以前の演習弾の調達契約に基づき22年度以降に官給が決定している再利用コンテナの数
〔5〕  支処予備数:弾薬支処で検査した再利用コンテナや演習弾の調達契約に基づき官給した再利用コンテナに不具合が発見されて利用できなかったときのために弾薬支処で保有している再利用コンテナの数

 このうち、支処予備数5個と22年度契約の官給予定数に含まれている製造会社へ官給する予備数(以下「会社予備数」という。)1個はいずれも官給した再利用コンテナが利用できなかった場合に備えた予備のコンテナであり、陸上幕僚監部によれば、再利用コンテナの予備数を計6個とした理由は14年度の不具合1個及び21年度の不具合2個の計3個に予備係数として2を乗じて算定したものであるとしている。
 その後、陸上幕僚監部は、補給統制本部に再利用コンテナの部隊からの実際の返納状況や過年度契約に係る官給状況等の確認をさせるとともに、調達要領指定書の作成を指示し、これに基づき製造会社への官給数を当初に算定したとおりに28個と決定し、22年10月に装備施設本部に仕様書、調達要領指定書等を添えて演習弾の調達要求を行っている。
 しかし、会社予備数と支処予備数を合わせた予備数の算定に当たり、過去の不具合実績の累計に予備係数として2を乗ずることについては具体的な根拠等は特になく、再利用コンテナの予備数をこのように見積もる合理的な理由は認められない。
 そこで、過去5か年間における再利用コンテナの不具合実績を確認したところ、年間の最大の不具合発生個数が2個であることなどから、再利用コンテナに突発的な不具合が発生するなど不測の事態に備えて更に1個見込んだとしても予備数は3個で足りると認められた。 したがって、必要と認められる予備数を超えて保有している再利用コンテナ3個(前記に基づき算定したコンテナ価格相当額1231万余円)については速やかに官給することとして効率的な活用を図るべきであると認められた。
 以上のように、陸上自衛隊が、再利用コンテナの予備数を過大に見積もり、調達契約において製造会社に官給をしていない事態は、国の資産の効率的な活用の面から適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、陸上幕僚監部において、再利用コンテナを効率的に活用するための予備数の算定方法の検討が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、陸上幕僚監部は、23年8月に補給統制本部に対して通知を発し、23年度以降の多連装ロケットシステムの演習弾の調達における再利用コンテナの官給数算定について、会社予備数と支処予備数を合わせた予備数は過去5年間の年間最大不具合実績に不測の事態に備えた数を加えた数とするとともに、必要と認められる予備数を超えて保有している再利用コンテナについては、次回の調達契約で官給して効率的な活用を図る処置を講じた。