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  • 平成22年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第13 防衛省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

借地上に新築等した庁舎等の建物について登記が必要となる場合を明確に定めることなどにより、国有財産の管理が適切に行われるよう改善させたもの


(5) 借地上に新築等した庁舎等の建物について登記が必要となる場合を明確に定めることなどにより、国有財産の管理が適切に行われるよう改善させたもの

部局等 3地方防衛局
国有財産の区分 一般会計所属 (分類)行政財産 (種類)公用財産
登記所に嘱託すべき登記の概要 借地上に新築等した国有財産である建物について、財産の保全のために行う登記
登記の嘱託を行っていなかった国有財産である建物に係る面積 2,834.2m2 (建面積)/10,165.0m2 (延べ面積)(平成22年3月末現在)
上記建物の国有 財産台帳価格 5億3287万円

1 防衛省における国有財産の管理等の概要

(1) 国有財産の管理

 国は、国の事務、事業又は国の職員の住居の用に供するなどのため庁舎、宿舎等として所有する土地、建物等について、国有財産法(昭和23年法律第73号)に基づき、取得、維持、保存及び運用(以下、これらを「管理」という。)並びに処分を行うこととされている。
 国有財産の管理のうち、取得には、購入、寄附等による場合があり、建物の取得には、これらの場合以外に新築、増築等する場合がある。また、保存は、国有財産の保全に必要な行為と解されており、修繕、盗難の防止対策、未登記財産に係る登記等が行われている。
 そして、防衛省は、所管する国有財産の取扱いに関して、防衛省所管国有財産取扱規則(平成18年防衛庁訓令第118号)を定め、各地方防衛局及び各地方防衛支局(注1) の長を部局長として、それぞれの部局に所属する国有財産に関する管理等の事務を分掌させることとしており(以下、当該事務を分掌する部局長を「国有財産部局長」という。)、国有財産部局長に対して、常時その管理する国有財産の現状を把握させて、その管理及び処分を適正に行わせることとしている。

 各地方防衛局及び各地方防衛支局  北海道、東北、北関東、南関東、近畿中部、中国四国、九州、沖縄各防衛局及び帯広、東海、熊本各防衛支局

(2) 不動産登記の概要

 不動産の登記制度は、不動産の表示及び不動産に関する権利を公示するための制度であり、民法(明治29年法律第89号)第177条の規定により、不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成16年法律第123号)その他の登記に関する法律の定めるところに従い、その登記をしなければ第三者に対抗することができないとされている。
 不動産登記法によれば、登記には、不動産の表示に関する登記と不動産の所有権、地上権等の権利に関する登記がある。そして、土地又は建物を取得した者は、当該土地又は建物に係る権利に関する登記の申請をすることができるとされており、土地又は建物を取得した者が国であって、国がその取得した土地又は建物について権利に関する登記をするときは、遅滞なく、当該登記を登記所に嘱託しなければならないこととなっている。
 そして、権利に関する登記は、表示に関する登記がなされていることが必要であることから、表示に関する登記がない新築の建物等を取得した場合には、取得した日から1月以内に、表示に関する登記を申請しなければならないこととなっている。
 ただし、この表示に関する登記の申請義務については、国が所有する土地又は建物は、一般的に、直ちに取引の対象となるわけではないこと、国有財産台帳で管理されていることなどの理由から、国に対して適用しないこととされている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 防衛省は、庁舎、宿舎等の設置に際して、自己所有の用地が確保できない場合に、借地に庁舎、宿舎等の建物を新築等しているが、借地上に新築等したこれらの建物について、財産の保全のため必要がある場合には、当該建物の所在地を管轄する登記所に登記を嘱託するなどして、その適切な管理を図ることが求められることとなる。
 そこで、本院は、合規性等の観点から、財産の保全のため必要がある場合に登記の嘱託が適切に行われているかなどの点に着眼して検査した。そして、各国有財産部局長が管理している借地上に新築等した庁舎等の建物のうち、駐屯地、基地等の内側に所在していて登記の嘱託の必要性が乏しいものを除外した、市中の一般の事務所や住宅等と変わらない建物(以下「市中に新築等した民有地上の建物」という。)6口座に係る21棟(平成22年3月末現在の国有財産台帳価格計619,437,206円)を対象として検査した。
 検査に当たっては、3地方防衛局(注2) において、借地上に新築等した建物の登記状況に関する調書、国有財産台帳等の書類と現地の建物の状況とを照合するなどして会計実地検査を行った。

 3地方防衛局  北関東、南関東、沖縄各防衛局

(検査の結果)

 検査したところ、前記の6口座に係る21棟の建物については、国が所有する建物は表示に関する登記の申請義務が適用されないとして、いずれも登記の嘱託が行われていなかった。
 しかし、これらの市中に新築等した民有地上の建物のうち、取壊しが予定されているため既に用途廃止が決定しているなどの宿舎(2口座に係る8棟)を除いた4口座に係る13棟(国有財産台帳価格計532,876,316円。表参照)の庁舎、宿舎等の建物については、第三者に不正に登記される可能性があることなどから、財産の保全のため登記の嘱託を行う必要があると認められた。

表 市中に新築等した民有地上の建物のうち登記の嘱託を行う必要があるもの
地方防衛局名 口座数 建物数(棟) 建面積/延べ面積(m2 ) 国有財産台帳価格(円)
北関東防衛局 1 1 238.0 / 633.3 27,087,184
南関東防衛局 2 7 1,228.1 / 3,590.6 213,604,721
沖縄防衛局 1 5 1,368.0 / 5,941.0 292,184,411
4 13 2,834.2 / 10,165.0 532,876,316

 このように、上記の4口座に係る13棟の建物について、財産の保全のため登記の嘱託を行う必要があるかどうかについて十分検討することなく、登記の嘱託を行わないままとなっている事態は、国有財産の管理として適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、防衛省において、借地上に新築等した建物について、財産の保全のため、どのような場合に登記の嘱託を行わなければならないかを明確にしていなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、防衛省は、23年8月に通知を発して、市中に新築等した民有地上の建物について、登記の嘱託を行うことを明確に定めて、財産保全上必要な登記の嘱託を確実に実施できるよう各国有財産部局長に周知するとともに、前記の4口座に係る13棟の建物について、登記の嘱託を行う処置を講じた。