平成20年度決算検査報告 参照
平成21年度決算検査報告 参照
防衛省は、駐留軍が軍用車両により移動する際には、日米地位協定に基づき道路使用料が課されないとされていることから、有料道路事業者に対して、有料道路の通行料金相当額を補償している。しかし、駐留軍が有料道路を使用した際に提出した通行証において、発行責任者の署名及び官職等の必要事項が記載されていなかったり、駐留軍の構成員等に対して福利厚生活動を行っている機関がレンタカー業務を実施するために所有する車両(以下「福利厚生機関所有の車両」という。)で休日等に使用されていたりしているのに、記載状況の確認や、駐留軍に対する事実確認の照会等の調査が十分行われず、「公の目的」のために使用されたものであることなどが確認されないまま補償額が支払われている事態が見受けられた。
したがって、防衛省において、駐留軍が使用した通行証について、記載状況を十分確認するとともに、駐留軍側と調整を図り、「公の目的」のために使用されていることを確認するなどのための調査体制を整備する処置を講ずるよう、防衛大臣に対して平成21年10月に、会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求した。
本院は、防衛本省、地方防衛局等において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、防衛省は、本院指摘の趣旨に沿い、22年5月に事務連絡を発し、各地方防衛局等において通行証に記入すべき項目について記載漏れがないかなどを確認する手順を指示するとともに、駐留軍と調整を図り、発行責任者の署名又は官職等が記載されていないなどの通行証について、その写しを駐留軍に送付して事実を確認するなどの調査体制を整備する処置を講じていた。
また、防衛省は、「公の目的」のための通行証の使用について、福利厚生機関所有の車両で個人的なレジャーや観光等を目的とする使用には通行証を発給しないよう駐留軍に申し入れていたが、この申入れに対する駐留軍からの回答は、日米地位協定等により、福利厚生機関所有の車両は全て、公式の合衆国政府公用車両と同様に通行証を使用することが認められているとの主張であった。このため、防衛省は、本件については、日米地位協定上の解釈に係る事案であることから、同協定の実施に関して両国政府間の協議を必要とする全ての事項に関する協議機関である日米合同委員会の下で協議が行われるよう、関係機関と調整することとする処置を講じていた。
今後、本院としては、日米合同委員会の協議の状況について注視していくこととする。