会社名 | (1) | 東日本高速道路株式会社 | |
(2) | 中日本高速道路株式会社 | ||
(3) | 西日本高速道路株式会社 | ||
(4) | 本州四国連絡高速道路株式会社 | ||
(5) | 首都高速道路株式会社 | ||
(6) | 阪神高速道路株式会社 | ||
科目 | (1)〜(6) 管理費用 | ||
部局等 | (1) | 本社、3支社 | |
(2) | 本社、4支社 | ||
(3) | 本社、4支社 | ||
(4) | 本社、4管理センター | ||
(5) | 本社、3管理局 | ||
(6) | 本社、2管理部及び1事業部(平成23年7月1日以降は管理所) | ||
トンネル照明設備を借り受けて管理運用する根拠 | 高速道路株式会社法(平成16年法律第99号)、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構法(平成16年法律第100号) | ||
トンネル照明設備の概要 | トンネル内の良好な視環境を確保して、交通の安全及び円滑化を図ることを目的として設置する蛍光灯等 | ||
トンネル照明設備の管理運用に要した電力量料金 | (1) | 4億8254万余円 | (平成21、22両年度) |
(2) | 6億2946万余円 | (平成21、22両年度) | |
(3) | 4億8958万余円 | (平成21、22両年度) | |
(4) | 7726万余円 | (平成21、22両年度) | |
(5) | 2億8620万余円 | (平成21、22両年度) | |
(6) | 5476万余円 | (平成21、22両年度) | |
計 | 20億1980万余円 | ||
上記のうち管理運用が適時適切でなかったトンネルの照明設備に要した電力量料金 | (1) | 3569万余円 | |
(2) | 7399万余円 | ||
(3) | 3147万余円 | ||
(4) | 283万余円 | ||
(5) | 2億0809万余円 | ||
(6) | 5107万余円 | ||
計 | 4億0314万余円 | ||
上記のうち節減できた電力量料金 | (1) | 539万円 | |
(2) | 2016万円 | ||
(3) | 533万円 | ||
(4) | 110万円 | ||
(5) | 3020万円 | ||
(6) | 1343万円 | ||
計 | 7561万円 |
東日本高速道路株式会社(以下「東会社」という。)、中日本高速道路株式会社(以下「中会社」という。)、西日本高速道路株式会社(以下「西会社」という。)、本州四国連絡高速道路株式会社(以下「本四会社」という。)、首都高速道路株式会社(以下「首都会社」という。)及び阪神高速道路株式会社(以下「阪神会社」といい、これらの高速道路株式会社を総称して「6会社」という。)は、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構(以下「機構」という。)から借り受けた高速道路の維持管理業務の一環として、機構と締結した協定等に基づき、トンネル内に設置している照明設備、換気設備等の各種設備の管理運用を行っている。
このうち、トンネル照明設備については、同設備に係る設計要領等(「設計要領第7集電気施設第5編トンネル照明設備」、「電気通信設備設計要領」等。以下、6会社が使用しているこれらの要領等を「設計要領」という。)に基づき、道路状況及び交通状況を的確に把握するための良好な視環境を確保して、道路交通の安全及び円滑化を図ることを目的として設置されている(参考図参照)
。
ア トンネル照明設備の設計
6会社は、設計要領に基づき、トンネルの出入口部以外の区間に係る基本照明部分(以下「基本部」という。)における照明設備の設計において、昼間時に適用される道路面の輝度(注1) の平均値(以下「路面輝度」という。)について、設計速度に応じて標準値を表1 のとおり定めるなどしている。
表1 設計速度に応じた路面輝度の標準値
設計速度(km/h) | 路面輝度の標準値(cd/m2 ) |
100 | 9.0 |
80 | 4.5 |
70 | 3.2 |
60 | 2.3 |
50 | 1.9 |
40 | 1.5 |
そして、東会社、中会社、西会社、本四会社及び阪神会社は、設計要領に基づき、ばい煙透過率(100m当たりの光の透過率)が70%を超えているトンネルであって、視環境が良い(視環境評価点(注2)
が80点以上)とされるトンネル又は平均日交通量が10,000台程度以下の一方通行のトンネルの場合には、路面輝度を標準値の1/2に減ずることができるなどとしている。
一方、首都会社は、ばい煙透過率が70%以上であって、視環境が良い(視環境評価点が80点以上)とされるトンネルで、平均日交通量が10,000台程度以下の場合には、路面輝度を標準値の1/2に減ずること、また、視環境が悪い(視環境評価点が65点以下)とされるトンネルで、平均日交通量が25,000台程度以上の場合には、路面輝度を標準値の2倍にすることができるとしている。
イ トンネル照明設備の管理運用
6会社は、基本部における照明設備について、上記の設計要領に基づいて定められた路面輝度により管理運用している。また、この管理運用に加えて、時間帯等によりトンネルの内外の明るさの差が変化することから、必要に応じて調光の管理運用を行うこととしている。そして、設計要領に基づき、調光を二段階とし、第一減光は路面輝度を1/2に、第二減光は路面輝度を1/4にそれぞれ減ずることとしている。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
トンネル照明設備の管理運用は、高速道路の重要な管理業務であり、これに毎年度多額の電力量料金等の経費を要している一方で、近年の自動車排出ガス規制等により、自動車から排出されるばい煙等が大幅に減少したことから、トンネル内の視環境は改善されてきている。
そこで、本院は、6会社において、経済性等の観点から、トンネル照明設備の管理運用が適切に行われ、電力量料金の節減が図られているかなどに着眼して会計実地検査を行った。そして、6会社がそれぞれの管内で供用しているトンネルのうち、路面輝度として標準値又は標準値の2倍を適用して照明設備を設置して、管理運用を行っている466トンネル(東会社110トンネル、中会社124トンネル、西会社173トンネル、本四会社12トンネル、首都会社31トンネル及び阪神会社16トンネル)の基本部における照明設備(これらの管理運用に要した平成21、22両年度の電力量料金、東会社4億8254万余円、中会社6億2946万余円、西会社4億8958万余円、本四会社7726万余円、首都会社2億8620万余円及び阪神会社5476万余円、6会社計20億1980万余円)を対象として、照明器具配置図等の関係書類及び現地を確認するなどして検査した。
(検査の結果)
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
6会社では、トンネル換気設備の設計の基準として、「設計要領第3集(2)トンネル換気」(東会社、中会社及び西会社)、社団法人日本道路協会制定「道路トンネル技術基準(換気編)・同解説」(本四会社及び阪神会社)及び「機械設備設計要領(トンネル換気設備編)」(首都会社)をそれぞれ使用することとしている。
これらのトンネル換気設備の設計の基準については、自動車から排出されるばい煙等の近年の大幅な減少に対応して、20年6月から21年7月までの間に、トンネル換気設備の能力の算定に用いる自動車1台当たりのばい煙排出量の数値を低減することなどを内容とした改訂等(以下、これらの改訂された要領や基準等を「改訂要領」という。)が行われ、以後に設置するトンネル換気設備の設計に適用することとしていた。
そして、上記の改訂要領を受けて、検査の対象とした6会社計466トンネルのうち210トンネル(東会社8トンネル、中会社29トンネル及び西会社173トンネル)については、これらを管理運用している支社等の判断により、改訂要領により低減した自動車1台当たりのばい煙排出量の数値を用いてばい煙透過率や視環境評価点を再計算して、路面輝度を標準値の1/2に減ずることができるかについての検討が行われていた。
しかし、残りの256トンネル(東会社102トンネル、中会社95トンネル、本四会社12トンネル、首都会社31トンネル及び阪神会社16トンネル)については、ばい煙等の大幅な減少が供用中のトンネル照明設備の管理運用にどのような影響を与えるかに関して、上記の再計算を行うことなどによる検討が行われていなかった。
そこで、上記の5会社が、本院の検査を踏まえて、改訂要領に基づいてばい煙透過率や視環境評価点を再計算するなどしたところ、路面輝度を標準値で管理運用している照明設備については標準値の1/2に、また、標準値の2倍で管理運用している照明設備については標準値(以下、単に「標準値の1/2又は標準値」という。)にそれぞれ減ずることができるトンネルが90トンネル見受けられた。そして、これら供用中のトンネル照明設備の管理運用の変更について、それぞれの会社と関係機関との間で道路交通管理上の安全性等を確認するための協議(以下「安全確認協議」という。)を行った結果、安全性等が確認できた36トンネルについては、路面輝度を標準値の1/2又は標準値に減じて管理運用することが可能であった。
また、前記の支社等の判断により路面輝度の見直しについての検討を行っていた東会社、中会社及び西会社の210トンネルについては、標準値の1/2に減ずることができるとした検討の結果に関して、各会社の支社等が関係機関と安全確認協議を行っていた。そして、安全性等が確認できた54トンネルは、路面輝度を標準値の1/2に減じて管理運用していたが、このうち35トンネルについては、改訂要領の適用開始から運用開始までに1年程度経過しているなど、相当程度の期間を要する結果となっていた。
首都会社及び阪神会社は、基本部における照明設備の時間帯による調光について、慣例として、日の出時刻から日の入時刻までを昼間時間帯として所定の路面輝度で管理運用し、日の入時刻から22時まで及び翌朝4時から日の出時刻までを夜間時間帯として第一減光で、また、22時から翌朝4時までを深夜時間帯として第二減光でそれぞれ管理運用していた。
しかし、薄暮時や薄明時を除き、夜間時間帯と深夜時間帯ではトンネル外の明るさに大差がないことから、この間を第一減光と第二減光に区分して管理運用する必要はないと認められた。
そこで、首都会社及び阪神会社が、本院の検査を踏まえて、調光の管理運用方法についてそれぞれ改めて検討したところ、31トンネルについては、薄暮時や薄明時を除く夜間時間帯において、第一減光の管理運用に代えて第二減光で管理運用することが可能であった。
以上のように、自動車1台当たりのばい煙排出量の数値を低減する内容の改訂等が行われているのに、供用中のトンネルの基本部における照明設備の管理運用の見直しを行っていなかったり、路面輝度を見直して標準値の1/2に減じて管理運用していたものの、その運用開始までに相当程度の期間を要していたり、また、薄暮時や薄明時を除く夜間時間帯を第二減光とせず、第一減光で管理運用していたりして、消費電力量の低減を図るための管理運用の見直しを適時に行っていない事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
供用中の基本部における照明設備の管理運用の見直しを行っていなかったトンネルのうち、標準値の1/2又は標準値に減じた路面輝度による管理運用が可能であった36トンネル、路面輝度を見直して標準値の1/2に減じて管理運用していたものの、速やかに行われていなかった35トンネル、及び調光の管理運用が適切でなかった31トンネルそれぞれの基本部における照明設備について、安全性を考慮して適時適切な管理運用をしたとすれば、21、22両年度の電力量料金は、表2 のとおり節減できたと認められた。
表2 節減できた電力量料金
会社 | 管理運用が適時適切でなかったトンネルの照明設備に要した電力量料金 | 節減できた電力量料金 | 態様 | トンネル数 |
東会社 | 3569万余円 | 注(3)
539万余円 |
〔1〕 | 4 |
〔2〕 | 7 | |||
中会社 | 7399万余円 | 2016万余円 | 〔1〕 | 5 |
〔2〕 | 22 | |||
西会社 | 3147万余円 | 533万余円 | 〔2〕 | 6 |
本四会社 | 283万余円 | 110万余円 | 〔1〕 | 3 |
首都会社 | 2億0809万余円 | 注(3)
3020万余円 |
〔1〕 | 9 |
〔3〕 | 16 | |||
阪神会社 | 5107万余円 | 1343万余円 | 〔1〕 | 15 |
〔3〕 | 15 | |||
計 | 4億0314万余円 | 7561万余円 | / | / |
(発生原因)
このような事態が生じていたのは、次のようなことなどによると認められた。
ア 路面輝度の管理運用について
6会社において、改訂要領の適用が開始された際に、その内容を供用中のトンネルの基本部における照明設備の管理運用に反映させて、速やかに見直すよう指示する必要があったのに、このことについて支社等に通知等を行っていなかったこと
イ 調光の管理運用について
首都会社及び阪神会社において、調光の具体的な管理運用方法を定めておらず、調光の時間帯の見直しの検討も行っていなかったこと
上記についての本院の指摘に基づき、6会社は、次のような処置を講じた。
ア 標準値の1/2又は標準値に減じた路面輝度による管理運用が可能であった36トンネル及び夜間時間帯を第一減光で管理運用していた31トンネルについては、23年3月から9月までの間に、安全性を考慮した上でそれぞれ標準値の1/2又は標準値に減じた路面輝度で管理運用したり、薄暮時や薄明時を除き第二減光で管理運用したりして電力量料金の節減を図った(注3)
。
イ 6会社は、各支社等に対して、23年6月から9月までの間に、トンネル内の視環境の状況に応じた路面輝度の管理運用の見直しを定期的に行うこととする旨の通知を発した。
ウ 首都会社及び阪神会社は、それぞれ23年6月及び7月に、第一減光及び第二減光の調光時間帯を明確にすることなどを内容とした「トンネル照明設備運用マニュアル」を制定した。
トンネル照明設備の概念図