科目 | 委託費 | |
部局等 | 独立行政法人国立印刷局岡山工場 | |
契約名 | 原材料等運搬その他作業外1件委託契約等2契約 | |
契約の概要 | 工場に納入された印刷用紙の原材料等の運搬等を行わせるものなど | |
契約の相手方 | 株式会社大金、鳳産業株式会社 | |
契約 | 平成22年3月 一般競争契約(単価契約) | |
積算額 | 5967万余円 | (平成22年度) |
低減できた積算額 | 710万円 | (平成22年度) |
独立行政法人国立印刷局岡山工場(以下「岡山工場」という。)は、日本銀行券の印刷用紙等の製造を行っている。この印刷用紙は、パルプ類を水に解きほぐす工程、解きほぐされたパルプ類と薬品類を混ぜ合わせる工程、紙をすき乾燥させて巻き取る工程、巻き取られた紙を所定の寸法に断裁する工程等を経て製造される。
岡山工場は、平成22年度に、一般競争契約により、原材料等運搬その他作業外1件委託契約(以下「原材料運搬契約」という。)を株式会社大金と、故紙仕込み等作業委託契約(以下「故紙仕込み契約」という。)を鳳産業株式会社と、それぞれ締結して工場内における作業を行わせており、これらに係る支払金額はそれぞれ3374万余円、2393万余円となっている。
原材料運搬契約の内容は、岡山工場に納品される原材料等をフォークリフトによりトラックから複数の倉庫へ搬入する作業、工場内において原材料等を運搬車により倉庫から複数の製造現場へ運搬する作業等を行うものであり、運搬対象である原材料等の種類が複数あることなどから、28作業に細分化されている。
故紙仕込み契約の内容は、巻き取られた紙を断裁する工程で発生する印刷用紙の断裁くずなどを印刷用紙の原材料として再利用するために倉庫から製造現場へ運搬し、製造機械に投入する作業等を行うものであり、運搬、投入等の作業ごとに7作業に細分化されている。
岡山工場は、前記2契約の予定価格を次の手順に基づくなどしてそれぞれ3401万余円、2566万余円、計5967万余円と積算している。
〔1〕 作業ごとに標準的な作業数量(以下「標準作業数量」という。)を設定して、標準作業数量に係る作業を行うのに必要な作業人員及び作業時間については、過去に締結した契約の予定価格の積算時に計測した数値を使用する。
〔2〕 作業ごとに作業人員に作業時間を乗じて、標準作業数量に係る延べ作業時間を算出する。
〔3〕 延べ作業時間に1時間当たりの労務単価を乗じて得た金額を標準作業数量で除して、単位数量当たりの単価を算出する。
〔4〕 単位数量当たりの単価に作業ごとの年間発注予定数量を乗ずるなどする。
印刷用紙の原材料等の運搬等の業務は、毎年度、岡山工場において委託により実施されており、これに係る費用は多額に上っている。
そこで、本院は、経済性等の観点から、岡山工場が予定価格の積算に用いた各作業の延べ作業時間が適切なものとなっているかなどに着眼して、前記の2契約を対象として、岡山工場において会計実地検査を行った。そして、原材料等の運搬作業に立ち会い、延べ作業時間の調査を行うとともに、岡山工場に対して、本院が立ち会いを行わなかった残りの作業について同様の調査を行いその結果を報告するよう求め、その内容を確認するなどの方法により検査を行った。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
岡山工場は、前記のとおり、各作業の積算上の延べ作業時間は過去に計測した数値であるため実際の延べ作業時間と同等であるとしていた。
しかし、本院が原材料運搬契約の28作業のうち「パルプAの運搬作業」及び「パルプBの運搬作業」に立ち会い、実際の延べ作業時間を計測して調査したところ、積算上の延べ作業時間に対する実際の延べ作業時間の比率は、「パルプAの運搬作業」で29.9%、「パルプBの運搬作業」で59.4%となっていて、積算上の延べ作業時間は実際の延べ作業時間を大きく上回っていた。
そして、上記の2作業を含む前記2契約の各作業について岡山工場から報告された実際の延べ作業時間の調査結果を確認したところ、積算上の延べ作業時間が実際の延べ作業時間を上回っているものが、原材料運搬契約では28作業中25作業(89.2%)、故紙仕込み契約では7作業中5作業(71.4%)と多数見受けられた。
このように、前記の2契約について実際の延べ作業時間を大きく上回る延べ作業時間により予定価格を積算している事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
そして、延べ作業時間の調査の結果、前記の2契約における予定価格の積算には、倉庫間等の移動に要する時間や印刷用紙等の製造に合わせて作業するために発生している待機時間(以下「移動時間等」という。)に係る経費が計上されておらず積算過小となっていたが、移動時間等は不確定要素が多く、作業別の延べ作業時間に個別に反映させることが困難であることから、これに代えて、作業別の延べ作業時間を基にして、必要とされる常駐作業人員の数を算定することとすれば、移動時間等を適切に計上した積算とすることができるものと認められた。
(低減できた積算額)
前記2契約の予定価格を実際の延べ作業時間を基にして算定した常駐作業人員の数によるなどして修正計算すると、原材料運搬契約は3050万余円、故紙仕込み契約は2197万余円、計5247万余円となり、前記の予定価格をそれぞれ約350万円、約360万円、計約710万円低減できたと認められた。
(発生原因)
このような事態が生じていたのは、岡山工場において、前記2契約の予定価格の積算に当たり、作業の実態に即したものとすることについての認識が十分でなかったことによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、岡山工場は、原材料運搬契約及び故紙仕込み契約について、23年度の契約から、実際の延べ作業時間を反映させて予定価格の積算を適切に行う処置を講じた。