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  • 平成22年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第26 独立行政法人理化学研究所|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

任期制職員のうち事業所の所長等に係る年俸の決定の取扱いを給与の支給基準に明示し、これを文部科学大臣に届け出るとともに公表して、年俸の決定過程の透明性を確保するよう改善させたもの


任期制職員のうち事業所の所長等に係る年俸の決定の取扱いを給与の支給基準に明示し、これを文部科学大臣に届け出るとともに公表して、年俸の決定過程の透明性を確保するよう改善させたもの

科目 経常費用
部局等 独立行政法人理化学研究所本所
任期制職員の概要 独立行政法人理化学研究所との間で雇用期間、給与等を定めて雇用契約を締結し、同研究所の業務に従事する者
年俸の決定過程が透明性を欠いたものとなっていた任期制職員の数 役員相当職延べ43名 研究系管理職延べ446名(平成20、21両年度)
上記に係る年俸支給総額 55億2981万円 (背景金額)
給与支給基準によることなく年俸が決定されていた任期制職員の数 役員相当職延べ33名(平成20、21両年度)
上記に係る年俸支給総額 4億5952万円  

1 任期制職員の給与の概要

 独立行政法人理化学研究所(以下「理研」という。)は、独立行政法人理化学研究所法(平成14年法律第160号)に基づき、科学技術(人文科学のみに係るものを除く。)に関する試験及び研究等の業務を総合的に行うことにより、科学技術の水準の向上を図ることを目的として設置されており、その前身である特殊法人理化学研究所の当時から、科学・技術に関する政府の方針を踏まえて、雇用期間、給与(年俸及び諸手当)等を定めて雇用契約を締結し業務に従事する任期制職員を中心とした研究組織を発足させて各種の業務を実施してきている。
 理研は、任期制職員のうち、各事業所の所長及び各事業所に設置された研究センターの長等の職にある者(以下、これらを「センター長等」という。)について、独立行政法人に移行した平成15年10月から、その職務水準の高度性、責任の重さ及び高度な経営判断に資する提言等の役割を担うことの重要性に鑑みて、役員報酬年額の水準を参考にしつつ年俸を決定する職員(以下「役員相当職」という。)として処遇している。また、センター長等の下において研究主宰者としての役割を担うチームリーダー、ユニットリーダー等の職にある者を、研究系の管理職の職員(以下「研究系管理職」という。)として処遇している。
 独立行政法人は、その業務の公共性が高く、運営費の大部分を国の財源措置によっていることなどから、独立行政法人通則法(平成11年法律第103号。以下「通則法」という。)に基づいて、その業務の内容を公表することなどを通じて、その組織及び運営の状況を国民に明らかにするよう努めなければならないとされている。そして、独立行政法人は、その職員の給与の支給の基準(以下「給与支給基準」という。)を定め、これを主務大臣に届け出るとともに、公表しなければならないとされており、職員の給与についても、その決定過程の透明性を確保することが求められている。
 理研は、上記に基づき、任期制職員に係る給与支給基準として、任期制職員給与規程(平成18年規程第7号。以下「任期制規程」という。)を定めて、文部科学大臣に届け出るとともに公表している。

2 検査の結果

 (検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、理研本所において、合規性等の観点から、役員相当職及び研究系管理職に係る年俸の決定の根拠となる給与支給基準が適切なものとなっているか、年俸の決定過程の透明性が確保されているかなどに着眼して、20、21両年度に支給された役員相当職の年俸(20年度19名分計2億8575万余円、21年度24名分計3億3943万余円、延べ43名分合計6億2518万余円)及び研究系管理職の年俸(20年度225名分計24億7223万余円、21年度221名分計24億3240万余円、延べ446名分合計49億0463万余円)計55億2981万余円を対象として、雇用契約書等の関係書類により会計実地検査を行った。

 (検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。
 任期制規程は、前記のとおり、任期制職員の給与支給基準として届出、公表されているが、任期制職員のうち役員相当職及び研究系管理職に係る年俸の決定の取扱いについては明確に示されておらず、これらの職員を除く任期制職員にしか適用されていない状況であった。
 理研は、役員相当職の年俸の決定については、任期制規程が制定される以前の12年3月に定めた「任期制研究員制度における所長等の謝金額算定の考え方」(平成12年3月理事長決定。以下「役員相当職の謝金額の算定方法」という。)に基づいて行っており、また、研究系管理職の年俸の決定についても、同様に、12年2月に定めた「契約研究員制度におけるグループディレクター等採用時の謝金額算定の考え方」(平成12年2月理事長決定。以下「研究系管理職の謝金額の算定方法」という。)に基づいて行っていた。
 そして、役員相当職の謝金額の算定方法は、役員相当職の年俸について、対象となる役員相当職を限定列挙した上で、総括理事の報酬の年額の範囲内で決めることができるとしているものの、年俸決定の実態についてみると、事業所等の組織変更や卓越した研究者等の招へいに伴う改正を適切に行っていなかったことなどから、20、21両年度における役員相当職の中に、限定列挙された職名以外の職名の者(延べ32名、年俸支給額計4億3808万余円)が含まれていたり、総括理事の報酬の年額を超える年俸とされている者(1名、年俸支給額2144万余円)がいたりするなどしていて、その内容が実態とかい離している状況となっていた。
 また、研究系管理職の謝金額の算定方法は、研究系管理職の年俸について、原則として、就任直前の年収額と理研が定めた算定方法による金額とを比較して、前者が上回る場合には、後者に一定の率を乗じて加算した額とするなどとしている一方で、特に理事長が必要と認める場合には、例外的取扱いができるとしていた。
 そして、年俸決定の実態についてみると、20、21両年度における研究系管理職の中に、例外的取扱いにより年俸を決定されている者が相当数見受けられ、また、それらの理由等についても十分に示すことができない状況となっていて、その運用が不明瞭なものとなっていた。
 さらに、理研は、上記のとおり、役員相当職の謝金額の算定方法及び研究系管理職の謝金額の算定方法を、役員相当職及び研究系管理職に係る年俸の決定の根拠として取り扱っていたのに、これらについて、任期制規程と同様の給与支給基準として文部科学大臣への届出及び公表も行っていなかった。
 上記のように、給与支給基準として文部科学大臣への届出及び公表も行われないまま、内容が実態とかい離した役員相当職の謝金額の算定方法や運用が不明瞭なものとなっていた研究系管理職の謝金額の算定方法により、役員相当職及び研究系管理職の年俸の決定が行われている事態は、その決定過程が透明性を欠いており、通則法の趣旨に沿わないものとなっていて適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

 (発生原因)

 このような事態が生じていたのは、理研において、役員相当職の謝金額の算定方法について事業所等の組織変更等に伴う改正を適切に行っていないなど、役員相当職及び研究系管理職の年俸の決定について通則法の趣旨に沿ってその決定過程の透明性を確保することの重要性に対する認識が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、理研は、23年3月に任期制規程を改正して、役員相当職及び研究系管理職の年俸の決定について、役員相当職の謝金額の算定方法及び研究系管理職の謝金額の算定方法に代わる新たな取扱いを明示し、同年5月に、改正した任期制規程を文部科学大臣に届け出て同年6月に公表することにより、年俸の決定過程の透明性を確保する処置を講じた。