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  • 平成22年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第29 独立行政法人労働者健康福祉機構|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

中期目標期間の終了に伴う国庫納付ができなかったことにより法人内部に留保されている精算収益化額に相当する額等の資金について、国庫納付することとなるよう改善させたもの


(2) 中期目標期間の終了に伴う国庫納付ができなかったことにより法人内部に留保されている精算収益化額に相当する額等の資金について、国庫納付することとなるよう改善させたもの

科目 現金及び預金
部局等 独立行政法人労働者健康福祉機構本部
独立行政法人における運営費交付金の概要 独立行政法人が行う業務の財源に充てるために必要な金額の全部又は一部に相当する金額について、国が予算の範囲内で交付する資金
第1期中期目標期間中に交付を受けた運営費交付金の総額 561億0213万余円 (平成16年度〜20年度)
上記に係る精算収益化額に相当する額等の資金で国庫納付すべき額 15億8867万円  

1 制度の概要

(1) 機構における経理の概要

 独立行政法人労働者健康福祉機構(以下「機構」という。)は、独立行政法人労働者健康福祉機構法(平成14年法律第171号。以下「機構法」という。)第12条の規定に基づき、療養施設の設置及び運営に係る業務等を行っている。
 そして、機構は、「独立行政法人労働者健康福祉機構の業務運営並びに財務及び会計に関する省令」(平成16年厚生労働省令第56号)第9条の規定に基づき、療養施設の設置及び運営に係る経理をその他の経理と区分して、病院勘定を設けて経理している。
 機構には、独立行政法人通則法(平成11年法律第103号。以下「通則法」という。)第46条の規定に基づき、業務運営の財源に充てる資金として、国から運営費交付金が交付されている。しかし、病院勘定に係る費用は医療事業収入等で賄うこととしていることから同勘定には運営費交付金は充てられておらず、区分して経理することが困難な共通の事項等を経理している本部等勘定にのみ充てられている。

(2) 運営費交付金の会計処理

 機構が平成16年度から20年度までの第1期中期目標期間に交付を受けた運営費交付金の額は、計561億0213万余円となっている。
 運営費交付金の会計処理に当たっては、独立行政法人会計基準(平成12年2月独立行政法人会計基準研究会策定)に基づき、国から運営費交付金を受領したときは、その相当額を運営費交付金債務で整理することとされている。そして、運営費交付金を業務費、一般管理費、人件費等の支出に充てるときは、運営費交付金債務を業務の進行に応じて一定の基準に基づき収益化することとされており、その際には、当該収益化に相当する額を運営費交付金債務から収益に属する運営費交付金収益に振り替えるなどとされている。さらに、運営費交付金債務は、次の中期目標期間に繰り越すことはできず、中期目標期間の最終年度の期末処理において、これを全額収益に振り替えなければならない(以下、当該処理により振り替えられた運営費交付金債務の額を「精算収益化額」という。)こととされている。
 なお、機構は、上記収益化の基準として、全ての業務において、業務のための支出額を限度として運営費交付金債務の収益化を行う費用進行基準を採用していたが、20年度からは、一部の業務において、一定の期間の経過を業務の進行とみなして運営費交付金債務の収益化を行う期間進行基準を採用している。費用進行基準では、運営費交付金の交付を受けたものの業務運営の財源に充てられずに残っていた額は、中期目標期間の最終年度を除いた各年度の貸借対照表に運営費交付金債務のまま残ることになり、損益計算上の利益として計上されない。一方、期間進行基準では、業務のための支出額によらず、基本的には業務の財源として予定されている額で収益化を行うことになるため、業務運営の財源に充てられずに残っていた額は、損益計算上の利益として計上されることになる。
 独立行政法人の利益及び損失の処理については、通則法第44条第1項において、毎年度、損益計算において利益を生じたときは、前年度から繰り越した損失を埋めて、なお残余があるときは、その残余の額は、積立金として整理しなければならないこととされている。そして、同条第2項において、毎年度、損益計算において損失を生じたときは、同条第1項の規定による積立金を減額して整理し、なお不足があるときは、その不足額は、繰越欠損金として整理しなければならないこととされている。

(3) 国庫納付の概要

 機構は、機構法第13条の規定に基づき、中期目標期間の最終年度において上記により積立金の整理を行った後、当該積立金の額から厚生労働大臣の承認を受けて次の中期目標期間に繰り越す額を控除してなお残余があるときは、その残余の額を国庫納付しなければならないこととされている。
 また、22年の通則法の改正により、各独立行政法人は、中期目標期間の途中であっても、同法第8条の規定により、その保有する重要な財産であって主務省令で定めるものが将来にわたり業務を確実に実施する上で必要がなくなったと認められる場合には、当該財産(以下「不要財産」という。)を処分しなければならないこととされ、同法第46条の2の規定により、不要財産であって政府からの出資又は支出(金銭の出資に該当するものを除く。)に係るものについては、遅滞なく、主務大臣の認可を受けて、これを国庫納付するものとされている。そして、政府は、「独立行政法人の事務・事業の見直しの基本方針」(平成22年12月閣議決定)において、各独立行政法人が、幅広い資産を対象に、自主的な見直しを不断に行うことを掲げている。

2 検査の結果

 (検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、経済性、効率性、有効性等の観点から、業務運営の財源に充てられずに残っていた運営費交付金債務等が適切に取り扱われているか、不要財産の国庫納付が適切に行われているかなどに着眼して、機構に対して第1期中期目標期間中に交付された運営費交付金を対象として、機構本部において、財務諸表、運営費交付金の使途及び会計処理等の状況について提出を求めた調書等により会計実地検査を行った。

 (検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。
 機構は、20年度末に第1期中期目標期間の終了を迎えたことから、本部等勘定において運営費交付金として交付を受けたものの業務運営の財源に充てられずに残っていた運営費交付金債務15億7238万余円について、精算のための収益化を行っていた。また、20年度から採用した期間進行基準によって収益化した額のうち業務運営の財源に充てられずに残っていた額が2243万余円あった。そして、期末処理を行った結果、同勘定において15億7718万余円の当期総利益を計上していた。
 一方、病院勘定では、上記の当期総利益を上回る42億7963万余円の当期総損失が生じていたことから、機構全体としては27億0245万余円の当期総損失を計上することとなった。このため、本部等勘定における精算収益化額に相当する額のうち現金の裏付けのある資金15億6623万余円と、上記の期間進行基準によって収益化した額のうち残っていた2243万余円の計15億8867万余円は、前記の機構法第13条の規定による国庫納付ができないことになっていた。
 そして、機構においては、前記のとおり、病院勘定と本部等勘定とは区分して経理しており、運営費交付金を病院勘定の業務に充てることとしていないことから、上記の精算収益化額に相当する額等の資金15億8867万余円は使用されることなく、その全額が普通預金として留保されている状況になっていた。
 このように、精算収益化額に相当する額等の資金を機構が保有する必要性について、通則法の改正を契機に適切な見直しを行わないまま機構内部に留保している事態は適切とは認められず、前記の通則法改正の趣旨を踏まえて国庫納付する必要があると認められた。

 (発生原因)

 このような事態が生じていたのは、精算収益化額に相当する額等の資金を病院勘定における業務に充てることとしていないのにもかかわらず、これを機構が保有する必要性について、通則法の改正を契機に適切な見直しを行っていなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、機構は、23年9月に、厚生労働大臣に対して、不要財産の国庫納付に係る認可申請書を提出し、機構内部に留保されている精算収益化額に相当する額等の資金15億8867万余円について、国庫納付することとなるよう処置を講じた。