科目 | 医業収益 | ||
部局等 | 独立行政法人国立病院機構7病院 | ||
請求過不足があった診療報酬 | 手術料、入院料等、麻酔料 等 | ||
請求過不足額 | 請求不足額 | 98,939,340円 | (平成21年度) |
請求過大額 | 14,176,540円 | (平成21年度) |
独立行政法人国立病院機構(以下「機構」という。)が設置している病院は、保険医療機関として患者の診療を行っている。
保険医療機関は、診療報酬の算定方法(平成20年厚生労働省告示第59号。以下「厚生労働省告示」という。)により、診療報酬として医療に要する費用を所定の診療点数(以下「点数」という。)に単価(10円)を乗ずるなどして算定することとなっている。そして、保険医療機関は、健康保険法(大正11年法律第70号)等により、診療報酬のうち患者負担分を患者に請求して、残りの診療報酬については、診療報酬請求書に診療報酬の明細を明らかにした診療報酬明細書(以下「レセプト」という。)を添付して社会保険診療報酬支払基金等に対して請求することとなっている。
診療報酬は、厚生労働省告示により、基本診療料と特掲診療料から構成されている。
このうち、基本診療料は、初診、再診及び入院診療の際にそれぞれ行われる診療行為又は入院サービスの費用等を一括して算定するもので、初・再診料と入院料等とに区分されている。
また、特掲診療料は、基本診療料として一括して算定することが妥当でない特別の診療行為に対して、厚生労働省告示において個々に定められた点数により算定するもので、処置料、手術料、麻酔料等に区分されている。
手術料は、手術の種類ごとに所定の点数が定められている。そして、3歳未満の患者に対して手術を行った場合は、当該手術の点数に所定の割合を乗じた点数を加算することとなっているが、体重が1,500g未満の患者に対して、網膜光凝固術(注1)
等の特定の手術を行った場合は、これによらずより高い割合を乗じた点数を加算することとなっている。また、手術において特定保険医療材料(注2)
を使用した場合は、当該手術の点数と当該特定保険医療材料の点数とを合算して算定することとなっている。このほか、内視鏡的乳頭切開術(注3)
において、結石を破砕して摘出した場合は、結石を破砕せずに摘出した場合に適用される点数より高い点数により算定することとなっている。
入院料等には、入院基本料、入院基本料等加算、特定入院料等がある。そして、入院基本料等加算のうち救急医療管理加算は、救急医療態勢を確保している保険医療機関に、緊急に入院を必要とする重症患者として入院した患者について、入院基本料の点数に所定の点数を加算するものである。
麻酔料は、麻酔の種類ごとに所定の点数が定められている。そして、マスク又は気管内挿管による閉鎖循環式全身麻酔(注4)
(以下「全身麻酔」という。)を、麻酔が困難な患者(注5)
に対して行った場合は、それ以外の患者に対して行った場合に適用される点数より高い点数により麻酔料を算定することとなっている。
機構の病院は、これらの診療報酬請求事務をコンピュータシステムを使用して行っている。すなわち、手術等の診療行為を行った場合は、診療部門は手術名、使用した薬剤、特定保険医療材料、患者の状態等をオーダー画面に入力し、又は伝票に記入するなどして料金算定部門に送付して、料金算定部門は、このオーダー画面の内容又は伝票の記載内容を確認し、これらをコンピュータに入力するなどして、これにより診療報酬の算定及び請求を行っている。
(注1) | 網膜光凝固術 特定の波長のレーザー光を照射して病的な網膜を凝固させることにより、未熟児網膜症等の病気の進行を抑える手術
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(注2) | 特定保険医療材料 厚生労働大臣が手術等の点数と合算してその費用を算定することができると定めている特定の保険医療材料で、生体弁、人工血管、骨セメント等がこれに該当する。
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(注3) | 内視鏡的乳頭切開術 内視鏡を用いて観察しながら、十二指腸に挿入した切開用電気メスにより乳頭部を切開して総胆管結石等の摘出を行う手術
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(注4) | 閉鎖循環式全身麻酔 閉鎖循環式全身麻酔器を用いて、患者の呼気中の炭酸ガスを除去しながら、麻酔ガスと酸素を補給する吸入麻酔法
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(注5) | 麻酔が困難な患者 血糖値が一定の値以上の糖尿病の患者、人工呼吸を行っている患者等、全身麻酔を行う際に困難を伴うとして厚生労働大臣が定めた状態にある患者
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本院は、機構の8病院(注6) において、合規性等の観点から、平成21年度の診療報酬の算定及び請求が適正に行われているかなどに着眼して、入院に係るレセプト控えなどの書類により会計実地検査を行った。
検査の結果、7病院において、診療報酬請求額が不足していたものが1,796件、98,939,340円、診療報酬請求額が過大になっていたものが190件、14,176,540円あり、不当と認められる。
これらについて、その主な態様を診療報酬の別に示すと次のとおりである。
ア 手術料に関するもの
7病院は、体重が1,500g未満の患者に対して特定の手術を行っているのに、それ以外の3歳未満の患者に対して手術を行った場合に適用される、より低い割合を手術の点数に乗じて加算していたり、手術において特定保険医療材料を使用しているのに、その点数を手術の点数に合算していなかったりなどしていた。このため、手術料が過小に算定されていて、診療報酬請求額が622件、55,790,200円不足していた。
また、6病院は、内視鏡的乳頭切開術において、結石を破砕せずに摘出しているのに、結石を破砕して摘出した場合に適用される、より高い点数により算定するなどしていた。このため、手術料が過大に算定されていて、診療報酬請求額が113件、9,288,300円過大になっていた。
イ 入院料等に関するもの
6病院は、救急医療管理加算の算定対象となる患者が入院しているのに、所定の点数を加算していないなどしていた。このため、入院料等が過小に算定されていて、診療報酬請求額が706件、27,434,430円不足していた。
ウ 麻酔料に関するもの
7病院は、全身麻酔を麻酔が困難な患者に対して行っているのに、それ以外の患者に対して行った場合に適用される、より低い点数により麻酔料を算定するなどしていた。このため、麻酔料が過小に算定されていて、診療報酬請求額が305件、13,048,470円不足していた。
このような事態が生じていたのは、機構の7病院において、次のことなどによると認められる。
ア 請求不足については、料金算定部門において手術料の算定に関する認識が十分でなかったり、入院料等の算定の際に患者が加算の要件を満たすか否かの確認が十分でなかったりしていたこと、診療部門において手術等の診療内容をオーダー画面に入力し、又は伝票に記入する際に、使用した特定保険医療材料、患者の状態等に関する入力又は記入を漏らしていたこと
イ 請求過大については、診療部門において診療内容をオーダー画面に入力し、又は伝票に記入する際に、誤った内容を記入していたこと
これを病院別に示すと次のとおりである。