科目 | (小規模企業共済勘定) 現金及び預金 | |
部局等 | 独立行政法人中小企業基盤整備機構本部 | |
独立行政法人における運営費交付金の概要 | 独立行政法人が行う業務の財源に充てるために必要な金額の全部又は一部に相当する金額について、国が予算の範囲内で交付する資金 | |
第1期中期目標期間中に交付を受けた運営費交付金の総額 | 221億7434万余円 | (平成16年度〜20年度) |
上記に係る精算収益化額に相当する額の資金で国庫納付すべき額 | 8307万円 |
独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下「機構」という。)は、独立行政法人中小企業基盤整備機構法(平成14年法律第147号。以下「機構法」という。)第15条の規定に基づき、小規模企業共済法(昭和40年法律第102号)の規定による小規模企業共済事業を行っている。
そして、機構は、機構法第18条等の規定に基づき、業務ごとに経理を区分し、それぞれ勘定を設けて整理しなければならないこととされており、「独立行政法人中小企業基盤整備機構の業務(産業基盤整備業務を除く。)に係る業務運営、財務及び会計に関する省令」(平成16年経済産業省令第74号。以下「省令」という。)第17条の規定に基づき、小規模企業共済事業の業務については、小規模企業共済勘定を設けて整理しなければならないこととされている。さらに、同条の規定に基づき、小規模企業共済勘定は、給付経理、融資経理及び小規模共済業務等経理の三つの経理単位に区分しなければならないこととされていて、このうち、小規模企業共済事業の業務に関する取引を経理する給付経理とその他の取引等を経理する小規模共済業務等経理については、省令第21条第1項の規定に基づき、小規模共済業務等経理から給付経理への資金融通をしてはならないこととされている。
機構の小規模企業共済勘定には、独立行政法人通則法(平成11年法律第103号。以下「通則法」という。)第46条の規定に基づき、業務運営の財源に充てる資金として、国から運営費交付金が交付されており、小規模共済業務等経理にのみ充てられている。しかし、給付経理に係る費用は共済事業掛金等の収入とその運用益で賄うことにしており、給付経理において欠損が生じたとしても、運営費交付金は充てないこととしている。
機構の小規模企業共済勘定が平成16年度から20年度までの第1期中期目標期間に交付を受けた運営費交付金の額は、計221億7434万余円となっている。
運営費交付金の会計処理に当たっては、独立行政法人会計基準(平成12年2月独立行政法人会計基準研究会策定)に基づき、国から運営費交付金を受領したときは、その相当額を運営費交付金債務で整理することとされている。そして、運営費交付金を業務費、一般管理費、人件費等の支出に充てるときは、運営費交付金債務を業務の進行に応じて一定の基準に基づき収益化することとされており、その際には、当該収益化に相当する額を運営費交付金債務から収益に属する運営費交付金収益に振り替えるなどとされている。さらに、運営費交付金債務は、次の中期目標期間に繰り越すことはできず、中期目標期間の最終年度の期末処理において、これを全額収益に振り替えなければならない(以下、当該処理により振り替えられた運営費交付金債務の額を「精算収益化額」という。)こととされている。
独立行政法人の利益及び損失の処理については、通則法第44条第1項において、毎年度、損益計算において利益を生じたときは、前年度から繰り越した損失を埋めて、なお残余があるときは、その残余の額は、積立金として整理しなければならないこととされている。そして、同条第2項において、毎年度、損益計算において損失を生じたときは、同条第1項の規定による積立金を減額して整理し、なお不足があるときは、その不足額は、繰越欠損金として整理しなければならないこととされている。また、この利益及び損失の処理は、勘定ごとに行われることになっている。
機構は、機構法第19条の規定に基づき、中期目標期間の最終年度において上記により積立金の整理を行った後、当該積立金の額から経済産業大臣の承認を受けて次の中期目標期間に繰り越す額を控除してなお残余があるときは、その残余の額を国庫納付しなければならないこととされている。
また、22年の通則法の改正により、各独立行政法人は、中期目標期間の途中であっても、同法第8条の規定により、その保有する重要な財産であって主務省令で定めるものが将来にわたり業務を確実に実施する上で必要がなくなったと認められる場合には、当該財産(以下「不要財産」という。)を処分しなければならないこととされ、同法第46条の2の規定により、不要財産であって政府からの出資又は支出(金銭の出資に該当するものを除く。)に係るものについては、遅滞なく、主務大臣の認可を受けて、これを国庫納付するものとされている。そして、政府は、「独立行政法人の事務・事業の見直しの基本方針」(平成22年12月閣議決定)において、各独立行政法人が、幅広い資産を対象に、自主的な見直しを不断に行うことを掲げている。
本院は、経済性、効率性、有効性等の観点から、業務運営の財源に充てられずに残っていた運営費交付金債務が適切に取り扱われているか、不要財産の国庫納付が適切に行われているかなどに着眼して、機構の小規模企業共済勘定に対して第1期中期目標期間中に交付された運営費交付金を対象として、機構本部において、財務諸表、運営費交付金の使途及び会計処理等の状況について提出を求めた調書等により会計実地検査を行った。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
機構は、20年度末に第1期中期目標期間の終了を迎えたことから、小規模企業共済勘定のうち小規模共済業務等経理において、運営費交付金として交付を受けたものの業務運営の財源に充てられずに残っていた運営費交付金債務8307万余円について、精算のための収益化を行っていた。
一方、同勘定のうち給付経理において当該精算収益化額を上回る3151億4353万余円の損失が生じていたため、期末処理を行った結果、同勘定としては、3147億1104万余円の当期総損失を計上することになった。このため、上記の精算収益化額に相当する額の資金8307万余円は、前記の機構法第19条の規定による国庫納付ができないことになっていた。
そして、機構においては、前記のとおり、省令により小規模共済業務等経理から給付経理への資金融通をしてはならないこととされ、また、給付経理に係る費用は共済事業掛金等の収入とその運用益で賄うことにしていて、運営費交付金を給付経理で発生した欠損の補填に充てることはできないこととなっていることから、上記の精算収益化額に相当する額の資金8307万余円は使用されることなく、その全額が機構内部に留保されている状況になっていた。
このように、精算収益化額に相当する額の資金を機構が保有する必要性について、通則法の改正を契機に適切な見直しを行わないまま機構内部に留保している事態は適切とは認められず、前記の通則法改正の趣旨を踏まえて国庫納付する必要があると認められた。
(発生原因)
このような事態が生じていたのは、精算収益化額に相当する額の資金を小規模企業共済勘定における業務に充てることができないのにもかかわらず、これを機構が保有する必要性について、通則法の改正を契機に適切な見直しを行っていなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、機構は、23年9月に、経済産業大臣に対して、不要財産の国庫納付に係る認可申請書を提出し、機構内部に留保されている精算収益化額に相当する額の資金8307万余円について、国庫納付することとなるよう処置を講じた。