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償却資産の把握に係る事務について、統一的な事務処理体制を整備して適切かつ効率的に行うよう是正改善の処置を求めたもの


(2) 償却資産の把握に係る事務について、統一的な事務処理体制を整備して適切かつ効率的に行うよう是正改善の処置を求めたもの

科目 (都市再生勘定) (項)賃貸住宅業務費
    (項)一般管理費 等
  (宅地造成等経過勘定) (項)ニュータウン整備(大都市圏)事業費
    (項)一般管理費 等
部局等 独立行政法人都市再生機構本社、募集販売本部、東京都心支社等9支社(平成23年7月1日以降は、同機構本社、東日本都市再生本部等3本部、千葉地域支社等6支社)
償却資産の概要 土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産で、その減価償却額が法人税法(昭和40年法律第34号)の規定による所得の計算上損金に算入されるものなどのうち、その取得価額が少額である資産等以外のもの
平成22年1月に把握していた償却資産の取得価額 3491億3497万余円  
適切に把握されていないなどの償却資産の件数及び取得価額 10,403件 546億0463万円 (背景金額)

【是正改善の処置を求めたものの全文】

  償却資産の把握について

(平成23年10月28日付け 独立行政法人都市再生機構理事長宛て)

 標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。

1 償却資産の概要

(1) 機構が所有する償却資産

 貴機構は、平成16年7月の独立行政法人化により、旧都市基盤整備公団等から固定資産税の対象となる土地、家屋及び償却資産を承継しており、その後も毎年度これらの資産を取得し、又は撤去、廃棄するなどしている。
 このうち、償却資産は、地方税法(昭和25年法律第226号)によると、土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産(鉱業権、漁業権、特許権その他の無形減価償却資産を除く。)で、その減価償却額が法人税法(昭和40年法律第34号)の規定による所得の計算上損金に算入されるものなどのうちその取得価額が少額である資産その他の政令で定める資産以外のものとされている。
 そして、貴機構は、法人税法により法人税を課さない法人として指定されているが、地方税法の適用は受けることとされており、貴機構が所有する資産では、次のようなものが償却資産に該当している。
〔1〕  賃貸住宅団地の建物内の受変電設備、電気設備、LAN設備、監視カメラ、集合郵便受け等の建物附属設備
〔2〕  賃貸住宅団地における給排水設備、舗装路面、駐車場施設、自転車置場、ゴミ置場、園地設備、擁壁、看板、雑工作物等の構築物
〔3〕  ニュータウンの造成宅地における募集用看板、舗装路面等の構築物
〔4〕  事務室等で使用する移動式書架、分煙清浄機、シュレッダー、応接セット、LAN設備等の器具及び備品等

(2) 償却資産の把握に係る事務

 償却資産の所有者は、固定資産税を課す市町村(東京都23区の場合は東京都。以下「地方団体」という。)に対し、毎年1月1日現在における当該償却資産の所在、種類、数量、取得時期、取得価額、耐用年数等を1月31日までに申告することとなっている。
 貴機構の本社、募集販売本部及び東京都心支社等9支社(注1) (以下「本社等」という。)においては、貴機構が定めた「独立行政法人都市再生機構会計規程」(平成16年7月規程第4号。以下「会計規程」という。)等による資産の範囲や耐用年数の設定と、固定資産税の対象となる償却資産のそれは異なることから、その償却資産の把握に係る事務については、貴機構の会計処理や財産管理に係る事務と別に、償却資産の申告を行う部署が、賃貸住宅団地の建替事業を行う部署、賃貸住宅団地の保全工事を行う部署、ニュータウン事業を行う部署、事務所等の財産を管理する部署等に対して、工事等で取得し、又は撤去、廃棄するなどした償却資産の報告を求めるなどして行っている。そして、本社等は、22年1月1日現在において所有する償却資産の取得価額を総額3491億3497万余円と把握している。

 本社、募集販売本部及び東京都心支社等9支社  本社、募集販売本部、東京都心、東日本、千葉地域、神奈川地域、埼玉地域、茨城地域、中部、西日本、九州各支社。平成23年7月1日以降は、本社、東日本都市再生、東日本賃貸住宅、首都圏ニュータウン各本部、千葉地域、神奈川地域、埼玉地域、中部、西日本、九州各支社

2 本院の検査結果

 (検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 貴機構は、様々な種類の償却資産を多数所有しており、その取得価額は多額となっている。
 そこで、本院は、合規性、効率性等の観点から、償却資産の把握が適切かつ効率的に行われているかなどに着眼して、前記の償却資産(取得価額計3491億3497万余円)のうち、主として17年1月から21年12月までの間に取得したものを対象として、貴機構の本社等において、財産台帳等の書類及び現地の状況を確認するなどして会計実地検査を行った。

 (検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 取得した償却資産の全部又は一部を償却資産として把握していないもの

ア 賃貸住宅団地の建替事業により取得した償却資産を把握していないもの

 本社等のうち、賃貸住宅団地を管理している7支社(注2) は、老朽化した賃貸住宅団地の建替事業を実施しており、同事業において、建物本体の建設とともに、建物内の受変電設備、電気設備、LAN設備等の建物附属設備や給排水設備、舗装路面、駐車場施設等の構築物を整備している。
 しかし、会計規程等においては、上記の建物附属設備を建物として区分することとしていることから、7支社のうち東日本、中部両支社を除く5支社は、これを家屋に含まれるものと誤認していた。このため、建替事業により取得した建物附属設備の全部を償却資産として把握していなかった。
 また、東日本、中部両支社は、償却資産の申告を行う部署が建替事業を行う部署に対して、建替事業により取得した建物附属設備の報告を求めていたものの、一部に報告漏れがあったことから、取得した建物附属設備の一部を償却資産として把握していなかった。
 さらに、構築物については、7支社全てが、建替事業を行う部署等から償却資産の申告を行う部署に対して償却資産の報告を行っていたものの、その一部に報告漏れがあり、また、償却資産の申告を行う部署が構築物である自走式駐車場施設を家屋に該当するなどと誤認していたことから、取得した構築物の一部を償却資産として把握していなかった。

 7支社  東日本、千葉地域、神奈川地域、埼玉地域、中部、西日本、九州各支社

イ 賃貸住宅団地の保全工事により取得した償却資産を把握していないもの

 7支社は、賃貸住宅団地の機能の維持や向上を図るための保全工事を実施しており、同工事により、給排水設備、舗装路面、自転車置場、ゴミ置場等の構築物等を整備している。
 しかし、神奈川地域、九州両支社は、保全工事で整備した構築物等は償却資産に該当しないと誤認していたことから、その全部を償却資産として把握していなかった。
 また、会計規程等においては、保全工事で構築物等の取替えや全面修繕、改築等を行った場合でも、それが機能の向上を伴わないときは、その工事費は、費用として取り扱うこととしており、資産の取得として取り扱うこととしていない。このため、7支社のうち神奈川地域、九州両支社を除く5支社は、保全工事で整備した構築物等で、その工事費を費用として取り扱うこととしているものについては、償却資産に該当しないと誤認していた。そして、償却資産の申告を行う部署が保全工事を行う部署に対して、保全工事により取得した構築物等の報告を求めていたものの、上記の構築物等については報告から漏れており、取得した構築物等の一部を償却資産として把握していなかった。

ウ その他の償却資産を把握していないもの

 本社等は、ニュータウン事業等により、造成した宅地の募集用看板、駐車場として利用するためのアスファルト舗装等の構築物を設置し、又は整備している。
 しかし、本社等のうち神奈川地域支社を除く10支社等は、ニュータウン事業等により設置し、又は整備した構築物について、その全部又は一部を償却資産として把握していなかった。
 また、本社等やその出先事務所は、その事務室等に、シュレッダー、応接セット、LAN設備等の器具及び備品等を購入し、又は設置している。
 しかし、本社等のうち東京都心支社を除く10支社等は、事務室等で使用するLAN設備等や支社の出先事務所で使用するシュレッダー、応接セット等を償却資産として把握していなかった。

 上記のア、イ及びウのとおり、建物附属設備、構築物、器具、備品等の全部又は一部を償却資産として把握していなかったものは、計2,150件、取得価額計244億4684万余円となっていた。

(2) 取得価額が少額である資産を償却資産としていたり、撤去又は廃棄した償却資産を減少させていなかったりなどしているもの

ア 取得価額が少額である資産を償却資産としているもの

 地方税法等によれば、それぞれの取得価額が20万円未満である複数の資産を一括して償却する方法を選定し、その償却額の全部又は一部を法人税法の規定による所得の計算上損金に算入した場合には、当該資産(以下「少額資産」という。)は償却資産に該当しないこととされている。
 一方、会計規程等では、賃貸住宅団地の保全工事等で設置したそれぞれの取得価額が20万円未満の表札、掲示板、消火器収納ボックス等の設備を資産に計上することとしている。
 このため、7支社のうち神奈川地域支社を除く6支社は、地方団体に上記の設備を少額資産として取り扱うことについての可否を確認しないまま、償却資産として把握していた。また、単体では取得価額が20万円未満のインターホン等の設備を複数まとめて設置した場合について、その総額が20万円以上であることから、少額資産に該当しないと判断して償却資産として把握していた。

イ 撤去又は廃棄した償却資産を減少させていないもの

 賃貸住宅団地の保全工事で資産を撤去したり、事務室等で使用する資産を廃棄したりした場合、撤去又は廃棄した資産のうち過去において償却資産として把握していたものは、その数量及び取得価額を減少させなければならない。
 しかし、本社及び7支社は、同じ種類の償却資産を複数把握している場合に、撤去した償却資産が、過去において把握していたどの償却資産に該当するのかを特定できなかったり、撤去した償却資産の取得価額を確定できなかったりなどしていることから、当該資産の数量及び取得価額を減少させることなく、引き続き償却資産として把握していた。
 また、会計規程等では、取得価額が50万円未満の償却資産は資産台帳に記載しないこととしていることから、本社及び7支社のうち中部、西日本両支社を除く5支社は、取得価額が50万円未満の償却資産を廃棄しているのに、その数量や取得価額の記録がなく不明であるなどとして、当該資産の数量及び取得価額を減少させることなく、引き続き償却資産として把握していた。

ウ 事業の用に供することができなくなった償却資産を減少させる処理が遅延しているもの

 貴機構が行う賃貸住宅団地の建替事業は、長期間にわたって複数の建物を順次建て替えていくものとなっており、貴機構は、建物を取り壊す前に、賃貸住宅としての用途を廃止する決定(以下「用途廃止」という。)をしている。そして、用途廃止した時点で、建物に係る建物附属設備、構築物等の償却資産は、事業の用に供することができないものとなるので、当該資産の数量及び取得価額を減少させる必要がある。
 しかし、7支社のうち神奈川地域、九州両支社を除く5支社は、賃貸住宅団地の建替事業において、当該賃貸住宅団地内に所在する複数の建物を個別に、順次用途廃止しているのに、用途廃止した建物ごとに当該建物に係る償却資産の数量及び取得価額を減少させていなかった。そして、当該賃貸住宅団地内の全ての建物を用途廃止した年の翌年にまとめて償却資産の数量及び取得価額を減少させていた。

 上記のア、イ及びウのとおり、地方団体に少額資産として取り扱うことについての可否を確認していなかったり、減少させるべき償却資産を引き続き償却資産として把握していたりなどしているものは、計7,618件、取得価額計192億1189万余円(注3) となっていた。

 保全工事により撤去した償却資産については、その取得価額が不明であるため、同等製品の取替えがあったものとして、新たに取得した償却資産の取得価額を基に、その取得価額を算出した。

(3) 償却資産の耐用年数を誤っているもの

 償却資産の耐用年数は、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」(昭和40年大蔵省令第15号)等に定められた耐用年数によることとされている。
 そして、貴機構が賃貸住宅団地内に所有している園地設備、擁壁、雑工作物等の構築物の耐用年数は、同省令によると、その構造又は用途に応じて15年から30年となっている。
 しかし、西日本支社は、償却資産である上記の構築物を雑構築物という同一の資産名称でまとめて区分しており、その耐用年数については、貴機構の前身である旧日本住宅公団の規程において雑構築物の耐用年数を30年としていたことから、30年未満のものも含めて全て30年としていた。
 また、本社及び7支社のうち西日本支社を除く6支社においても、耐用年数を誤っているものが見受けられた。
 上記のように、償却資産の耐用年数を誤っていたものは、計635件、取得価額計109億4589万余円となっていた。

 以上の(1)から(3)までの事態を集計すると、適切に把握されていないなどしていた償却資産の件数及び取得価額は、計10,403件、546億0463万余円となっている。
 また、以上のとおり、本社等において、償却資産の把握について様々な誤りが見受けられたことから、その事務の状況についてみたところ、次のようになっていた。
 すなわち、償却資産の把握に係る事務については、前記のとおり、会計規程等による資産の範囲や耐用年数の設定と、固定資産税の対象となる償却資産のそれは異なることから、貴機構の会計処理や財産管理に係る事務と別に行われている。
 そして、会計処理や財産管理に係る事務については、手続やシステムの整備等の体制が整っていて統一的に行われているが、償却資産の把握に係る事務については、各関係部署の判断で行われている。また、償却資産の把握については、償却資産の申告を行う部署の求めに応じて、建替事業を行う部署等の関係部署が、過去1年間における償却資産の異動等を設計図書等の原資料を見直すことなどにより把握して文書等で報告し、確認等を行うものとなっている。
 このように、本社等における償却資産の把握に係る事務は、効率的なものとなっていない状況であると認められた。

 (是正改善を必要とする事態)

 上記のように、取得した資産の全部又は一部を償却資産として把握していなかったり、地方団体に取得価額が20万円未満の資産を少額資産として取り扱うことについての可否を確認しないまま償却資産として把握していたり、撤去又は廃棄した償却資産を引き続き償却資産として把握していたり、償却資産の耐用年数を誤認したりなどしている事態や、償却資産の把握に係る事務が効率的でない事態は適切とは認められず、是正改善を図る要があると認められる。

 (発生原因)

 このような事態が生じているのは、次のことなどによると認められる。
ア 本社において、償却資産となる資産の範囲等を明確にしていなかったり、償却資産の把握に係る事務に関する手続を整備していなかったりしていて、償却資産の把握に係る事務処理の体制が十分でないこと
イ 本社等の関係部署において、償却資産となる資産の範囲や耐用年数等についての理解が十分でないこと

3 本院が求める是正改善の処置

 貴機構は、今後も引き続き償却資産を取得し、又は撤去、廃棄するなどしていくことから、償却資産を適切に把握していくことが求められている。
 ついては、前記の事態に鑑み、貴機構本社において、償却資産となる資産の範囲等を明確にして関係部署に周知するとともに、償却資産の把握に係る事務についてシステム化を図るなど統一的な体制を整備して、償却資産の把握を適切かつ効率的に行うよう是正改善の処置を求める。