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  • 平成22年度|
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  • 第34 独立行政法人日本原子力研究開発機構|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

次世代型高速増殖炉に関する革新技術開発に係る契約の締結に当たり、精算条項を付することなどにより契約金額の透明性及び経済性を確保するよう改善させたもの


次世代型高速増殖炉に関する革新技術開発に係る契約の締結に当たり、精算条項を付することなどにより契約金額の透明性及び経済性を確保するよう改善させたもの

科目 (電源利用勘定) 経常費用
部局等 独立行政法人日本原子力研究開発機構本部、大洗研究開発センター
契約の概要 次世代型高速増殖炉の開発に必要な革新技術開発を行うもの
契約の相手方 三菱FBRシステムズ株式会社
契約 平成20年4月〜21年11月 随意契約
精算条項を付していなかった契約件数 76件(平成20、21両年度)
上記に係る契約金額 126億2770万円

1 次世代型高速増殖炉に関する革新技術開発に係る契約の概要

 独立行政法人日本原子力研究開発機構(以下「機構」という。)は、独立行政法人日本原子力研究開発機構法(平成16年法律第155号)等に基づき、核燃料サイクルを確立するための高速増殖炉及びこれに必要な核燃料物質の開発等を行うとともに、これらの成果の普及等を行うこととしており、次世代型高速増殖炉に関する革新技術開発(注) を行っている。
 この革新技術開発に当たっては、中核となる企業1者に責任及び権限並びに設計業務等のエンジニアリング機能を集中するという政府等を交えた関係団体の方針等に基づいて、平成19年4月に公募により三菱重工業株式会社(以下「三菱重工」という。)が選定されている。そして、同社が出資することなどにより、エンジニアリングの一括実施を主要業務とする三菱FBRシステムズ株式会社(以下「三菱FBR」という。)が同年6月に設立された。
 機構は、この革新技術開発のためのエンジニアリング及び必要な研究開発に係る契約を三菱FBRと締結することとされ、契約の履行に当たっては、三菱FBRが設計業務、技術開発全体の調整等の業務を行い、装置、施設等の開発、試作、実験の実施等については三菱FBRから三菱重工に外注して行うこととされている。そして、機構は、次世代型高速増殖炉に関する革新技術開発に係る契約については、契約事務規程(平成17年17(規程)第70号)、「契約事務の取扱いについて」(平成17年17契(通達)第4号。以下「契約通達」という。)等に基づいて、三菱FBRとの随意契約としており、また、各契約は請負契約であることから精算条項を付さず、契約が予定どおり履行された場合には契約時に定めた金額を支払う確定契約としている。

 次世代型高速増殖炉に関する革新技術開発  次世代型高速増殖炉とは、高速増殖炉に関して、実験炉、原型炉、実証炉、商業炉の順に行われる一連の研究開発過程のうち実証炉のことであり、革新技術開発とは、実証炉の基本設計が開始されるまでに行われる高燃焼度化に対応した炉心燃料の開発、原子炉容器のコンパクト化等の研究開発のことである。

2 検査の結果

 (検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 次世代型高速増殖炉に関する革新技術開発に係る契約は、前記のとおり、中核企業に責任、権限等を集中するという方針等に基づき、特定業者との随意契約により締結された契約であり、外注費がその大半を占めることが予想される。また、当該契約は不確定要素の多い革新的な技術開発に係る契約であり、契約締結時においてどの程度の経費を要することとなるのかを見通すことが困難であるにもかかわらず確定契約により締結されている。
 そこで、本院は、機構本部及び大洗研究開発センターにおいて、経済性等の観点から、契約金額が作業内容の実態を反映して適切に算定されているかなどに着眼して、機構が三菱FBRと20、21両年度に締結した次世代型高速増殖炉に関する革新技術開発に係る契約計76件(契約金額計126億2770万余円)を対象として会計実地検査を行った。検査に当たっては、契約書等の関係書類により検査するとともに、三菱FBRに赴いて総勘定元帳、原価元帳等の関係書類を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。

 (検査の結果)

 検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 三菱重工への外注費について

 上記の76契約(契約金額計126億2770万余円)に係る三菱FBRから三菱重工等への外注費についてみると、53契約において三菱重工への外注が行われており、その支払額は計86億5394万余円(契約金額全体の68.5%)となっていた。
 これら53契約の締結に当たり、三菱FBRは、三菱重工への外注費について三菱重工の作業工数、人件費単価等を自ら算定するなどして見積書を作成し、これを機構に提出しており、機構は、三菱FBRから提出されたこの見積書を査定することによって、予定価格における三菱重工への外注費を算定していた。また、これとは別に、三菱FBRは三菱重工への外注費を決定するために同社から見積書を徴しており、このうち一定金額を超える見積書については、作業工数、人件費単価等を査定するなどして外注費を決定していた。
 そして、前記53契約の外注費の内訳について検査したところ、三菱FBRが機構に提出した見積書に記載されていた三菱重工の作業工数及び人件費単価が、三菱FBRが三菱重工から徴した見積書を査定して算定した作業工数及び人件費単価を上回るなどしていた。そこで、三菱FBRが機構に提出した前記の53契約に係る見積書から三菱重工への外注費を抜き出し、これと三菱FBRが三菱重工に支払った額とを比較したところ、三菱FBRの三菱重工への支払額の総額に比べて見積書に記載された三菱重工への外注費の総額は5割程度高額となっていて、かい離が生じていた。
 上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

 機構は、平成21年8月に、三菱FBRとの間で「多段エルボ体系の流動・振動試験(5)可視化試験装置の改造及び可視化試験の実施」契約について、見積書を徴するなどして1億8480万円で締結している。
 しかし、三菱FBRの総勘定元帳、原価元帳等により確認したところ、機構が三菱FBRから徴した見積書に記載されていた三菱重工の作業工数12,920人時は、三菱FBRが三菱重工から徴した見積書に基づく作業工数8,548人時の1.5倍となっていて、人件費単価も1.3倍となっていた。これらのことなどから、機構が三菱FBRから徴した見積書に記載されていた三菱重工への外注費は、三菱FBRが三菱重工に支払った額に比べて9割程度高額となっていた。

 機構は、上記のようなかい離が生じているにもかかわらず、三菱FBRとの契約は確定契約であって精算を行う必要がないとして、三菱重工における実際の作業工数、人件費単価等を把握しておらず、三菱FBRが三菱重工に支払った額も確認していなかった。なお、三菱FBRにおいても、三菱重工における実際の作業工数、人件費単価等を把握しておらず、三菱FBRが三菱重工に支払った額が作業内容の実態を反映した適切な金額となっているかどうかについて確認できない状況となっていた。

(2) 三菱FBRにおける費用について

 前記の76契約に係る予定価格の算定のうち、三菱FBRにおける人件費等の費用についてみると、三菱FBRが機構に提出した見積書において、三菱FBRは、同社が行う各作業に要する作業工数、人件費単価等を自ら算定し、これらにより人件費等の費用を算定しており、機構は、この見積書を査定することによって予定価格のうち三菱FBRにおける人件費等の費用を算定していた。
 そして、三菱FBRにおける人件費等の費用について総勘定元帳、原価元帳等により検査したところ、見積書に記載された三菱FBRの人件費単価が三菱FBRが社内工等に対して定めていた人件費単価を大幅に上回っていた。
 そこで、前記の76契約について、見積書に記載された三菱FBRにおける人件費等の費用の総額と三菱FBRにおいて実際に発生した人件費等の費用の総額とを比較したところ、三菱FBRにおいて実際に発生した費用の総額に比べて見積書に記載された三菱FBRにおける費用の総額は8割程度高額となっていて、かい離が生じていた。

(3) 機構が想定する利益率と本件契約における利益率との比較

 機構は、過去の契約実績に基づいて、役務契約等の予定価格の算定に用いる諸経費率を定めており、その内訳として、機構の取引業者の過去の契約における利益率を基に機構としての利益率を算定している(以下、この内訳としての利益率を「想定利益率」という。)。そこで、前記の76契約について契約ごとの利益率を算定したところ、契約ごとの利益率が想定利益率を上回っているものが69契約見受けられ、中には想定利益率の10倍以上となっているものも見受けられた。さらに、76契約全体でみても、利益率が想定利益率を相当程度上回っていた。

 このように、契約金額の大半を占める三菱重工への外注費について、三菱FBRの三菱重工への支払額の総額に比べて見積書に記載された三菱重工への外注費の総額が5割程度高額となっていてかい離が生じているのに、機構において、三菱重工における実際の作業工数等を把握しておらず、三菱FBRが三菱重工に支払った額が、作業内容の実態を反映した適切な金額となっているかについて確認していない事態、三菱FBRにおいて実際に発生した費用の総額に比べて見積書に記載された三菱FBRにおける費用の総額が8割程度高額となっていてかい離が生じていたり、三菱FBRの契約ごとの利益率が想定利益率を相当程度上回っていたりしている事態は、機構による実際の作業内容の把握が行われておらず、契約金額の透明性及び経済性が確保されていないものとなっていて適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

 (発生原因)

 このような事態が生じていたのは、機構において、次世代型高速増殖炉に関する革新技術開発が不確定要素の多い革新的な技術開発に係る契約であることから、契約締結時においてどの程度の経費を要することとなるのかを見通すことが困難であるにもかかわらず、確定契約により契約を締結していたこと、このような不確定要素の多い契約を締結する際には概算契約とすることなどについての具体的な手続を明確に定めていなかったこと、また、契約金額の大半を占める三菱重工への外注費について、実際に発生した作業工数等を把握できるようにしていなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、機構は、23年7月に契約通達を改正するなどして、次世代型高速増殖炉の革新技術開発に係る契約については契約金額の精算確定に関する特約条項を定めて、契約金額の精算を行う概算契約とした。そして、機構に精算確定審査部会を設置するなどして、三菱FBRから提出された精算書類の採用の可否等を検討するとともに、三菱重工への外注費についても実際に発生した作業工数、人件費単価等を把握することができる手続を定めるなどして、23年度から締結する次世代型高速増殖炉に関する革新技術開発に係る契約について適用することにより、契約の透明性及び経済性を確保することとする処置を講じた。