科目 | 管理費用 | |
部局等 | 首都高速道路株式会社本社、3管理局 | |
契約名 | 標識補修20—1等9契約 | |
工事用PR看板の概要 | 首都高速道路を利用する者に、工事の場所、施工日時、閉鎖する出入口等、交通に大きな影響を与える情報等を提供することを目的として一時的に設置するもの | |
請負人 | 株式会社日本パーカーライジング広島工場等5会社 | |
契約 | 平成20年7月〜21年6月 一般競争契約(単価契約) | |
平成21年7月〜22年6月 一般競争契約(単価契約) | ||
平成22年7月〜23年6月 一般競争契約(単価契約) | ||
上記の契約に係る支払額 | 36億1949万余円 | (平成20年7月分〜22年10月分) |
工事用PR 看板の取付工費及び撤去工費の積算額 | 1億2945万余円 | (平成20年7月分〜22年10月分) |
低減できた工事用PR看板の取付工費及び撤去工費の積算額 | 6010万円 | (平成20年7月分〜22年10月分) |
首都高速道路株式会社(以下「会社」という。)は、西東京、東東京、神奈川各管理局(以下、これらを「3管理局」という。)における道路標識、工事用PR看板等の取付け、撤去等を行う標識補修工事を、平成20年度から22年度までの各年度に、3管理局ごとに株式会社日本パーカーライジング広島工場等5会社と、単価契約により請負契約を締結している。そして、これらの契約に係る支払額は、20年度契約(20年7月分から21年6月分まで)14億2653万余円、21年度契約(21年7月分から22年6月分まで)18億7096万余円、22年度契約(22年7月分から10月分まで)3億2199万余円、計36億1949万余円となっている。
工事用PR看板は、首都高速道路を利用する者に、工事の場所、施工日時、閉鎖する出入口等、交通に大きな影響を与える情報等を提供することを目的として一時的に設置するものである。このうち耐水合板製の看板(縦90cm、横75cm又は50cm。以下「PR看板」という。)は、閉鎖する出入口等の付近にある高速道路の高欄(高さ90cm又は1m)等の上に設置された照明柱に工事開始前に添架し、工事終了後に撤去するものである。そして、PR看板の取付け及び撤去の作業のほとんどは、交通への影響が少ない夜間(22時から翌朝6時まで)に行われている。
会社は、PR看板の取付工費及び撤去工費の積算については、会社制定の「単価・簡易契約工事の手引き(標識補修工事編)」(以下「手引」という。)等に基づき行っており、手引等によると、PR看板の取付工及び撤去工に係る単価は、次のとおり算定することとされている。
そして、3管理局における20年度契約から22年度契約までの単価は、取付工については5,442円から5,674円、撤去工については3,816円から3,979円となっている。
会社は、毎年、多数のPR看板の取付け及び撤去を行っており、これに要する費用は多額となっている。
そこで、本院は、会社本社及び3管理局において、経済性等の観点から、PR看板の取付工費及び撤去工費の積算は、現場条件を踏まえた適切なものとなっているかなどに着眼して会計実地検査を行った。そして、20年7月から22年10月までに実施されたPR看板の取付け13,736枚及び撤去13,950枚に係る取付工費及び撤去工費の積算額、20年度契約4911万余円、21年度契約6818万余円、22年度契約1216万余円、計1億2945万余円を対象として、契約書、施工写真等の書類及び現地の状況を確認するなどして検査した。
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
取り付けられたPR看板13,736枚のうち7,520枚については、高欄等の上に設置された照明柱の周囲に高さ1m以上の遮音壁(高さ50cmの吸音板を2段以上接合したもの)等の支障物がないことから、PR看板の下端が道路面から1.5m程度までの高さとなる低い位置に、高所作業によることなく高速道路の路面上から直接取り付けることが可能な状況となっていた。したがって、上記の7,520枚について照明柱の低い位置にPR看板を取り付けることとすれば、高所作業車が不要となるとともに、荷渡しや高所作業の安全確認を行う普通作業員1名も不要となり、高速道路の路面上において、主体的な業務を行う特殊作業員1名と補助的な業務を行う普通作業員1名の計2名による作業が可能となると認められた(参考図参照
)。
そこで、高所作業を必要としない箇所において、高速道路の路面上で作業した場合の1日当たりの施工枚数について調査したところ、取付けは31.6枚、撤去は49.0枚であった。この結果等に基づいて、3管理局における20年度契約から22年度契約までのPR看板1枚当たりの単価を算定すると、取付工については1,821円から1,916円、撤去工については1,291円から1,360円となった。
取り付けられたPR看板13,736枚のうち残りの6,216枚は、照明柱の周囲に高さ1m以上の遮音壁等の支障物があることから、高所作業を行う必要があるが(参考図参照
)、この場合の取付け高さについて、手引では定めておらず、また、仕様書等においても示していなかった。
そこで、高所作業を必要とする箇所において、取付け高さを視認性を損なわずに作業効率が向上する低い位置とした場合の1日当たりの施工枚数について調査したところ、取付けは22.6枚、撤去は29.9枚となり、手引における1日当たりの施工枚数(取付け15.5枚、撤去22.1枚)をいずれも上回っていた。この結果等に基づいて、3管理局における20年度契約から22年度契約までのPR看板1枚当たりの単価を算定すると、取付工については4,060円から4,241円、撤去工については3,149円から3,291円となった。
上記のように、PR看板の取付工費及び撤去工費の積算に当たり、高所作業を必要としない箇所について、高所作業を前提とした単価を適用していたり、高所作業を必要とする箇所について、1日当たりの施工枚数が作業効率を考慮した取付け高さに対応するものとなっていなかったりなどしていた事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
(1)及び(2)の結果により算定したPR看板の取付工及び撤去工の単価に、それぞれの枚数を乗じて取付工費及び撤去工費を計算すると、20年度契約2490万余円、21年度契約3748万余円、22年度契約690万余円、計6929万余円となり、前記の1億2945万余円を約6010万円低減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、会社において、一時的に設置されるPR看板の取付工費及び撤去工費の積算に当たり、現場条件の把握が十分でなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、会社は、23年2月に、現場条件に適合した単価の設定方法や作業効率を考慮したPR看板の取付け高さなどを定めて3管理局に通知し、22年11月以降に実施した作業から通知に基づき算定した単価を適用するとともに、23年6月に、手引を改定する処置を講じた。
(参考図)
PR看板の取付け及び撤去の概念図