科目 | 営業費用 | |
部局等 | エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社本社 | |
契約名 | レンタル契約 | |
契約の概要 | 法人向けブロードバンドサービスに使用するルータを賃借するもの | |
レンタル料の支払額 | 26億2171万余円 | (平成16年度〜23年度) |
節減できたレンタル料 | 2億1058万円 | (平成19年度〜23年度) |
エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社(以下「NTTコム」という。)は、インターネットを経由せずセキュリティが保たれた状態で法人の拠点間通信を行うことができるサービスを平成16年9月から、また、法人向けインターネット接続サービスのうち、遠隔監視機能を備えたサービス及びセキュリティ対応機能を備えたサービス(以下、これらのサービスを合わせて「法人向けブロードバンドサービス」という。)をそれぞれ17年7月及び20年1月から提供している。NTTコムは、法人向けブロードバンドサービスに使用する機器のうちルータについて、調達、管理及び保守の業務を一括してレンタル契約によりA会社に委託している。
そして、このレンタル料には、A会社が取得したルータの原価等の経費(以下「機器費」という。)のほかに、調達に係る管理費及びサービス提供期間に係る保守費が含まれている。なお、21年4月にレンタル契約のうち保守業務は別途契約とすることにしたため、それ以降のレンタル料は機器費に相当する分(以下「機器費分」という。)と管理費に相当する分から構成されている。
法人向けブロードバンドサービスに使用するルータのA会社からのレンタル台数は毎年増加し、23年6月末現在で49,979台であり、16年度から23年度(23年4月分まで)までのレンタル料の支払額は26億2171万余円に上っている。
本院は、経済性等の観点から、法人向けブロードバンドサービスに使用するルータの調達方法は適切かなどに着眼して、NTTコム本社において、当該ルータに係る16年度から23年度までのA会社とのレンタル契約を対象として、レンタル基本契約書、契約締結に係る決裁書等の書類により会計実地検査を行った。
検査したところ、ルータの調達方法、レンタル料及びレンタル月数について、次のような事態が見受けられた。
ルータの調達方法としては、主に購入、リース、レンタルがあるが、顧客にサービスを解約された場合には、購入によりルータを調達すると、返却されたルータを在庫として管理しなければならなくなり、また、リースにより調達すると、利用料収入がない期間もリース料を支払わなければならず、更にリース契約を中途解約する場合には、中途解約違約金をリース会社に支払うこととなる。そこで、NTTコムは、顧客が任意の時期に法人向けブロードバンドサービスの利用を解約することを認めているため、法人向けブロードバンドサービス 提供開始時のルータの調達方法の選定に当たり、中途解約違約金を支払うことなく、任意の時期に賃貸借を終了することができるレンタルによりルータを調達することとしていた。
そして、ルータのレンタル料は、レンタル台数の約8割を占めるエントリールータ(注
)については、新規サービスにおける一般的なレンタル台数、解約率、故障率等に係るA会社が有するノウハウに基づき、法人向けブロードバンドサービス提供開始時には1,400円/台・月とされていたが、19年5月に1,250円/台・月に引き下げられた。NTTコムは、この引下げについて、サービス開始後の実際のレンタル台数、解約率、故障率等が判明したことからA会社による機器費の回収期間が36月から48月に延長され、このことにより機器費分が減少したことによるものと想定していた。
そして、その後、毎年行われるレンタル料の改定交渉において、レンタル台数が数万台の規模に上ったことによるメリットを還元するとして、21年4月から23年4月までに計30円/台・月引き下げられたが、ルータのレンタル月数の長短については考慮されておらず、同一の単価となっていた。また、エントリールータに比べて高機能なルータであるスタンダードルータ(注
)のレンタル料もおおむね同様の状況となっていた。
そこで、ルータのレンタル月数についてみると、23年6月末現在のルータの種類別レンタル月数別の台数は表のとおりとなっていて、49月以上にわたり継続してレンタルしているものが見受けられる状況となっていた。
ルータの種類 | レンタル月数 | |||||||
1〜12月 | 13〜24月 | 25〜36月 | 37〜48月 | 49〜60月 | 61〜72月 | 73月〜 | 計 | |
エントリールータ | 2,560 | 2,339 | 5,524 | 8,351 | 8,947 | 8,280 | 4,681 | 40,682 |
スタンダードルータ | 1,630 | 2,055 | 1,966 | 2,271 | 1,226 | 149 | 0 | 9,297 |
計 | 4,190 | 4,394 | 7,490 | 10,622 | 10,173 | 8,429 | 4,681 | 49,979 (うち49月以上の台数23,283) |
本件レンタル契約は、前記のとおり、NTTコムが中途解約違約金を支払うことなく任意の時期に終了することができるので、A会社は中途解約により機器費の回収を完了することができなくなる場合がある。このため、レンタル料のうち機器費分は、A会社が機器費の回収を完了できない場合を考慮して料金設定されていると認められた。
そして、前記のとおり、NTTコムは、A会社が機器費を当初は36月で、19年4月(スタンダードルータ)又は同年5月(エントリールータ)以降は48月で回収していると想定して、レンタル料の改定交渉を行っているので、23年6月末現在でレンタル月数が49月以上のルータについては、A会社において、既に当該ルータの機器費の回収を完了していると想定すべきであったと認められた。
したがって、23年6月末現在においてNTTコムがレンタルしているルータ49,979台のうち、49月以上にわたり継続してレンタルしていて、A会社が当該ルータの機器費の回収を完了したと想定されるルータ23,283台について、これを残存価格で買い取ったり、レンタル料を抜本的に減額したりするなど調達方法の見直しを検討することなく、機器費を回収できなくなる場合を考慮して算出される割高なレンタル料を支払っている事態は適切でなく、改善の必要があると認められた。
機器費の回収を完了したと想定されるルータについて、本院の指摘を契機に、NTTコムが23年6月にA会社から徴したレンタル料の見積額(エントリールータ550円/台・月、スタンダードルータ620円/台・月)によりレンタルしていたとすると、エントリールータについて1億8967万余円、スタンダードルータについて2091万余円、計2億1058万余円のレンタル料を節減できたと認められた。
このような事態が生じていたのは、NTTコムにおいて、レンタル料のうち機器費分については機器費を36月又は48月で回収する前提で算出されていると想定していたのに、機器費の回収を完了したと想定されるルータの調達方法についての検討が十分でなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、NTTコムは、23年7月に、レンタル月数が48月以上で、A会社が機器費の回収を完了したと想定されるルータのレンタル料を抜本的に引き下げる変更契約を締結するとともに、同年9月に、社内全組織に対して通知文書を発し、長期間レンタル契約が継続し、レンタル料のうち機器費分の支払累計額が機器費の額を超えたと想定されるなどの場合に、レンタル料の抜本的な減額や買取りなどの調達方法の見直しを検討することとする処置を講じた。