科目 | 固定資産 電気通信設備 | ||
部局等 | 西日本電信電話株式会社本社、33支店 | ||
光サービス用装置の概要 | 光サービスを提供するために、電話局に設置し、加入者回線の接続、集線、接続制御等を行う装置 | ||
検査の対象とした電話局数、装置数及び固定資産額 | 453局 | ||
11,587台 | |||
72億9635万余円 | (平成23年6月末) | ||
上記の電話局において将来需要に対して過剰と認められる装置数 | 1,950台 | ||
過剰と認められる固定資産の額 | 10億9767万円 | (平成23年6月末) |
西日本電信電話株式会社(以下「NTT西日本」という。)は、平成20年3月から、従来の固定電話網の信頼性及び安定性と光通信網の経済性及び柔軟性とを備えた新しいネットワークとなる次世代ネットワーク(NextGenerationNetwork。以下「NGN」という。)を光通信網上に構築し、地上デジタル放送の再送信も可能な光サービスであるNGN利用サービスとして、主に法人向けのビジネス、戸建て住宅向けのファミリー等の用途別に提供している。
そして、各電話局に、加入者宅まで敷設された光ケーブルを接続する装置(以下「接続装置」という。)、接続された多数の加入者回線を多重化し、1回線に集線する装置(以下「集線装置」という。)等の光サービス用装置を設置している。このうち、接続装置及び集線装置は、用途や加入者回線数に応じた枚数の電子基板を収容し、接続装置の電子基板(以下「接続基板」という。)から集線装置の電子基板(以下「集線基板」という。)へ配線ケーブルで接続して使用するものである。そして、両装置の単体当たりの最大回線収容数は、それぞれ接続装置が約500回線から1,000回線、集線装置が約8,000回線となっている(参考図参照
)。
NTT西日本は、光サービス用装置の設置後の運用及び保守を容易にするため、接続装置は装置単位で、また、集線装置は集線基板単位で、それぞれ単一の用途に利用することとしており、設置した装置や加入者回線に関する情報を管理する社内システム(以下「設備管理システム」という。)についてもそれに合わせた仕様としている。そして、光サービス用装置の設置工事に要する期間等を考慮して、原則として、6か月先のNGN利用サービスの需要を満たす光サービス用装置の数量を算出するとともに、光サービス用装置の設置後は、設備管理システムを使用し装置の利用状況等を管理している。また、需要見込みに基づいて敷設した配線ケーブルについては、その後接続変更をしない運用としており、装置又は電子基板の不足が見込まれると判断した場合は、増設等で対応している。
(参考図)
光サービス用装置の概念図
NTT西日本の光サービス全体の指定電気通信役務別損益は、減価償却費及び施設保全費の合計が経費の5割以上を占めていて、21、22両年度でそれぞれ赤字となっているが、将来的に、NGNを利用してネットワーク全体の経済化を図り、サービス価格の低減に寄与することを目指して、光サービス用装置を設置している。
そこで、本院は、経済性、効率性等の観点から、光サービス用装置について、設計や運用は適切かなどに着眼して、設置後の加入者回線収容状況等について検査した。
そして、全33支店(注1
)の光サービスを提供している電話局のうち、22年度末で6か月以上NGN利用サービスの提供を行っている887局から、統計的手法により抽出した453局について、設備管理システムから出力した23年6月末時点における加入者数、装置及び電子基板の情報等の提出を求め、光サービス用装置の利用状況等について分析するとともに、11支店(注2
)において会計実地検査を行った。
(注1) | 全33支店 大阪、大阪東、大阪南、和歌山、京都、奈良、滋賀、兵庫、名古屋、静岡、岐阜、三重、金沢、富山、福井、広島、島根、岡山、鳥取、山口、愛媛、香川、徳島、高知、福岡、北九州、佐賀、長崎、熊本、大分、鹿児島、宮崎、沖縄各支店
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(注2) | 11支店 大阪、大阪東、大阪南、滋賀、名古屋、福井、高知、福岡、北九州、大分、鹿児島各支店
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抽出した453局は、23年6月末時点で約95万回線のサービスを提供しており、光サービス用装置を11,587台設置していた。これらの装置については、当初の設置から最長39か月、最短10か月、平均23.9か月が経過していて、23年6月末の固定資産額(接続基板を除く。以下同じ。)は72億9635万余円となっていた。
上記11,587台の光サービス用装置の23年6月末時点における利用状況をみると、提出された情報で分析ができた11,559台中1,458台は利用されておらず、このうち1,003台は設置から6か月以上経過していた。そして、利用されている10,101台について、それぞれの最大回線収容数に対する回線収容数の割合(以下「回線収容率」という。)をみると、平均で21.1%(平均設置期間20.6か月)にとどまり、このうち6,391台は設置から6か月以上経過しても回線収容率が30%未満となっていた。また、接続装置8,571台の回線収容率を用途別にみると、ビジネス用等に設置した接続装置2,827台については、そのうち2,606台が設置から6か月以上経過しても回線収容率が30%未満となっていた。
一方、接続装置及び集線装置における電子基板の収容状況をみると、接続装置で148,392枚分及び集線装置で8,072枚分、計156,464枚分が収容可能であったが、電子基板が収容されていなかったり、遊休している電子基板が収容されていたりしていて、電子基板が収容可能な部分のうち35.6%が利用されておらず、特に、ビジネス用として設置した接続装置においては、収容可能な部分のほとんどが利用されていなかった。
また、接続基板から集線基板への配線状況をみると、計182,272本分の配線ケーブルが集線基板に接続可能であったが、配線ケーブルが接続されていなかったり、遊休している接続基板から配線されていたりしていて、集線基板における配線ケーブルの接続部分のうち42.5%が利用されておらず、特に、ビジネス用として収容した集線基板においては、接続部分のほとんどが利用されていなかった(表参照
)。
用途 | 加入者回線数 回線
|
電子基板の収容状況 | 配線ケーブルの接続状況 | |||||||
接続装置 | 集線装置 | 集線基板 | ||||||||
収容可能数 A
枚
|
未利用数 B
枚
|
未利用率 B/A
%
|
収容可能数 C
枚
|
未利用数 D
枚
|
未利用率 D/C
%
|
接続可能数 E
本
|
未利用数 F
本
|
未利用率 F/E
%
|
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ビジネス | 230 | 4,624 | 4,479 | 96.8 | — | — | — | 4,608 | 4,463 | 96.8 |
ファミリー | 738,583 | 101,184 | 31,074 | 30.7 | — | — | — | 105,344 | 35,234 | 33.4 |
マンション(光配線) | 137,597 | 38,864 | 15,248 | 39.2 | — | — | — | 42,560 | 18,944 | 44.5 |
マンション(電話配線) | 74,827 | 3,720 | 1,985 | 53.3 | — | — | — | 29,760 | 18,913 | 63.5 |
計 | 951,237 | 148,392 | 52,786 | 35.5 | 8,072 | 2,129 | 26.3 | 182,272 | 77,554 | 42.5 |
このように、用途により利用状況等に大きな差があるのに、設計において接続装置及び集線基板を複数の用途で共用せず、また、運用において未利用となっている接続基板の収容部分及び配線ケーブルの接続部分を利活用するなどの対策が十分でないなどのため、遊休していたり回線収容率が低率となっていたりしている光サービス用装置が多数生じている一方で、装置及び電子基板の増設を行っている事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。
上記の利用状況等を踏まえて、前記の453局別及び用途別に、23年12月末時点における推計加入者回線数(118万回線)から、接続装置及び集線基板を複数の用途で共用するなど経済的な設置等を行った場合に必要となる光サービス用装置の台数を推計したところ、23年6月末時点で設置されている光サービス用装置の台数は、過剰な装置が2,001台、不足する装置が51台、差引き1,950台が過剰となり、経済的な設置等を行えば、より少ない装置数でNGN利用サービスを提供することができたと認められた。
そして、887局から統計的に抽出した453局において過剰となる1,950台の固定資産額は12億9588万余円となり、設備管理システムの仕様を変更するために必要となるソフトウェアに係る額を考慮しても、過剰となる固定資産の額は10億9767万余円になると認められた。
このような事態が生じていたのは、NTT西日本において、接続装置や集線基板は複数の用途で利用できるのに、設備管理システムを単一の用途で利用する仕様とし、光サービス用装置の設計をしていること、需要見込みに基づき敷設した配線ケーブルを使用開始後の利用状況に応じて接続変更しない運用としていることなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、NTT西日本本社は、23年7月に、より少ない装置数で、安価でニーズに合ったNGN利用サービスを提供するために、接続装置や集線基板を複数の用途で共用できるよう設備管理システムの改良に着手するとともに、同年9月に、各支店に対して、設計及び運用における電子基板の収容方法や配線ケーブルの敷設方法を改善する指示文書を発し、経済的な設備構築を図る処置を講じた。