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  • 平成22年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第68 株式会社かんぽ生命保険|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

業務用の車両に設置するカーナビについて、業務上の必要性を十分に検討してテレビ受信機能の要否を決定することなどにより、カーナビに係る日本放送協会との受信契約を適切なものとするよう改善させたもの


業務用の車両に設置するカーナビについて、業務上の必要性を十分に検討してテレビ受信機能の要否を決定することなどにより、カーナビに係る日本放送協会との受信契約を適切なものとするよう改善させたもの

科目 経常費用
部局等 株式会社かんぽ生命保険
カーナビの概要 自動車の走行時に現在位置から目的地への経路案内を電子的に行う機器であって、用務先に効率的に到達することを目的として業務用の車両に設置するもの
業務上テレビを視聴する必要がないのに受信契約を締結していたカーナビの台数及び受信料支払額 (1) カーナビの台数 420台 (平成21年度)
691台 (平成22年度)
(2) 受信料支払額 312万円 (平成21年度)
515万円 (平成22年度)
828万円

1 業務用の車両に設置するカーナビ等の概要

(1) 業務用の車両に設置するカーナビの概要

 株式会社かんぽ生命保険(平成19年9月30日以前は日本郵政公社。以下「かんぽ生命」という。)は、19年10月1日に、郵政民営化法(平成17年法律第97号)に基づき設立され、 独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構から委託を受けた簡易生命保険の管理業務及び保険業法(平成7年法律第105号)に基づく生命保険業務(以下、これらの業務を「保険業務」という。)を、本社、支店、サービスセンター等(以下、これらを合わせて「支店等」という。)において行っている。また、かんぽ生命は、郵便局株式会社と委託契約を締結して、郵便局において保険業務を行わせている。
 かんぽ生命が、支店等において保険業務等の用に供する普通自動車及び軽自動車(以下、これらを合わせて「車両」という。)については、22年1月までは、日本郵政公社が購入して保有していたものを承継したり、自社で新たに購入したりしたものを保有していた。そして、同年2月からは、セール・アンド・リースバック( )(以下「リースバック」という。)方式により、保有していた車両を全て日本GE株式会社に売却し、それらの車両を同社からリース契約により借り受けており、その後は必要台数の増加に応じて、同契約において新車を追加して借り受けている。
 上記により借り受けた車両の大半には、支店等の社員が保険業務の委託先である郵便局や顧客である法人等の所在地に速やかに到着して効率的な業務執行が行えるようにすることなどを目的として、カーナビゲーション(自動車の走行時に現在位置から目的地への経路案内を電子的に行う機器。以下「カーナビ」という。)が設置されている。

 セール・アンド・リースバック  借り手がその所有する物件を貸手に売却し、改めて貸手からリースを受けるもの

(2) テレビ受信機能を有するカーナビに係る受信契約の概要

 放送法(昭和25年法律第132号)及び日本放送協会放送受信規約によれば、日本放送協会の放送を受信することのできる受信設備(以下「受信機」という。)を設置した者は、同協会とその放送の受信についての契約(以下「受信契約」という。)をしなければならないとされており、法人等がその事業所等に受信機を設置する場合には、当該事業所等の部屋、自動車等、受信機の設置場所ごとにそれぞれ受信契約を締結し、受信料を負担することとされている。そして、放送法に規定される受信機には、テレビ受信機能を有するカーナビも含まれることとされている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

 本院は、経済性等の観点から、車両に設置されているカーナビの機能は、使用目的に適したものとなっているかなどに着眼して、22年2月から23年3月までの間に前記のリース契約により借り受けている車両1,040台に設置されている同数のカーナビを対象として検査した。
 検査に当たっては、本社において、リースバックを受けている車両の購入契約及びリース契約に係る契約書、仕様書、受信料の請求書等の書類を確認するとともに、支店等において、カーナビの使用実態を確認するなどして会計実地検査を行った。

(検査の結果)

 検査したところ、リースバックを受けている車両の購入契約及びリース契約に係る仕様書には、装備品としてカーナビを設置することとしているだけで、テレビ受信機能の要否については記載していなかったが、それらの契約に基づいて借り受けるなどした車両に設置された前記1,040台のカーナビのうち1,018台はテレビ受信機能を有していた。
 しかし、当該カーナビを使用してテレビを視聴する必要性について、使用実態を実地に確認したり、本社を通じて聴取したりして検査したところ、このうち930台については、支店等の社員は車両使用時にテレビを視聴する業務上の必要性はないとしていた。なお、残りの88台については、支店の支店長等が使用する車両に設置されているもので、非常時に情報収集等でテレビを視聴する必要があるとしていた。
 そこで、かんぽ生命における受信料の支払状況を検査したところ、本社がテレビ受信機能を有するカーナビの台数調査をおおむね1年に1回行い、これに基づき受信契約を締結することとしており、21年10月及び22年6月に実施したこの調査に基づき、21年度においては496台に係る370万余円、22年度においては779台に係る580万余円、計950万余円の受信料を支払っていた。そして、これらのうちテレビを視聴する業務上の必要があるとされた上記の88台に係る額を除くと、21年度は312万余円、22年度は515万余円、計828万余円となり、同額の受信料はテレビを視聴する業務上の必要性がないカーナビについて支払われていたことになる。
 しかし、かんぽ生命は、車両の購入契約及びリース契約の締結に当たり、テレビ視聴の必要性について十分検討した上で、テレビ受信機能を有しないカーナビを設置した車両を借り受けることとしたり、借り受けた車両にこの機能を有したカーナビが設置されている場合でも、テレビ受信機能を無効にする措置を講ずることにより受信料の支払の必要がないようにした状態で借り受けることとしたりしていれば、上記の受信料828万余円を支払う必要はなかったと認められた。
 したがって、車両のリース契約に係る仕様書にカーナビのテレビ受信機能の要否を記載しないまま、テレビ受信機能を有するカーナビが設置された車両を借り受け、業務上テレビを 視聴する必要がないカーナビについても受信契約を締結して受信料を支払っている事態は適切とは認められず、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

 このような事態が生じていたのは、車両の購入契約及びリース契約の締結に当たり、カーナビのテレビ受信機能の必要性について、十分に検討を行っていなかったこと、受信契約の締結に当たり、カーナビを使用してテレビを視聴する必要性について、十分に検討を行っていなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

 上記についての本院の指摘に基づき、かんぽ生命は、業務用の車両におけるテレビ視聴の必要性を検討した上で、23年10月に、車両のリース契約及び受信契約が適切に行われるよう、次のような処置を講じた。

ア リース契約の変更契約を締結し、新規に借り受ける車両のうち、業務上テレビを視聴する必要がないものについては、テレビ受信機能を有しないカーナビを設置した車両を借り受けることとした。
イ 既に借り受けている車両のうち、業務上テレビを視聴する必要のないものについては、車両の所有者である日本GE 株式会社にカーナビのテレビ受信機能を無効にする措置を執るよう依頼するなどした上で、受信契約を適切に見直すこととした。