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  • 平成22年度|
  • 第4章 国会及び内閣に対する報告並びに国会からの検査要請事項に関する報告等|
  • 第1節 国会及び内閣に対する報告

<参考:報告書はこちら>

航空自衛隊第1補給処における事務用品等の調達に係る入札・契約及び予算執行の状況について


第2 航空自衛隊第1補給処における事務用品等の調達に係る入札・契約及び予算執行の状況について

検査対象 防衛省(平成19年1月8日以前は内閣府防衛庁)
航空自衛隊第1補給処における事務用品等の調達の概要 航空自衛隊で任務の遂行に必要となるオフィス家具、OA機器、事務用消耗品、整備用工具、塗料、洗剤、体育訓練用備品等の調達
検査の対象とした契約件数及び契約金額 5,500件 600億8550万円(平成17年度〜22年度)

1 検査の背景

(1) 航空自衛隊における事務用品等の調達

 航空自衛隊は、任務の遂行に必要となるオフィス家具(注1) 、OA機器、事務用消耗品(以下、これらを合わせて「事務用品」という。)、整備用工具、塗料、洗剤、体育訓練用備品等の一般に市販されている物品を毎年度多数調達している。

 オフィス家具  事務室、倉庫等の建物内に配置されている机、椅子、収納家具(ロッカー、書庫等)、タイルカーペット、OAフロア等の備品をいう。公正取引委員会の排除措置命令等においては、「什(じゅう)器類」と表している。

 自衛隊における事務用品の調達は、そのほとんどを各自衛隊が実施している。航空自衛隊においては、一部緊急を要するなどの場合に部隊等で直接調達されている事務用品もあるが、大部分は、需品等の保管、補給、整備、調達等に関する事務を所掌している航空自衛隊第1補給処(以下「第1補給処」という。)において調達が行われている。
 第1補給処には、第1補給処東京支処(以下「東京支処」という。)等2支処が置かれており、東京支処は、分任支出負担行為担当官が設置され、第1補給処等から要求された事務用品等に係る予定価格の算定、入札・契約事務等を行っている。
 また、航空自衛隊には、事務の実施の企画及び総合調整並びに第1補給処を含めた4補給処の管理を行う機関として、航空自衛隊補給本部(以下「補給本部」という。)が設置されている。
 そして、第1補給処における事務用品等の調達に係る予算執行手続等は次のとおりとなっている。

〔1〕  補給本部長は、各補給処の執行状況を把握し、これらの執行実績も踏まえ、第1補給処と調整するなどして、第1補給処において事務用品等の調達に充てる予算として、予算総括者である航空幕僚長に支出負担行為の計画及び限度額の示達要求の申請を行う。

〔2〕  航空幕僚長は、四半期ごとに支出負担行為の計画の示達の要求総括表を作成し、各省各庁の長である防衛大臣に提出する。

〔3〕  支出負担行為担当官である航空幕僚監部総務部長は、防衛大臣から支出負担行為計画の示達を受けると、分任支出負担行為担当官である東京支処長に支出負担行為の限度額を示達する。

〔4〕  東京支処長に支出負担行為の限度額の示達が行われると、第1補給処長は、各部隊等からの調達要望等も踏まえて事務用品等の調達品目及び数量を決定し、要求のための仕様書等を作成の上、使用する予算科目も示した上で、東京支処長に対して調達要求を行う。

〔5〕  東京支処長は、第1補給処長からの調達要求を受けると、分任支出負担行為担当官として、予定価格の算定、入札・契約事務等を行い、業者に発注する。

(2) 入札談合事件の概要

 防衛省(平成19年1月8日以前は内閣府防衛庁)は、防衛施設庁における入札談合事件の発生等不祥事が重なったことなどを踏まえて、防衛省における職務執行の状況を厳格に監察する組織として、19年9月に防衛大臣直属の防衛監察本部を設置した。そして、入札談合防止を対象項目の一つとして防衛監察本部による監察(以下「防衛監察」という。)を実施した結果、20年度の防衛監察において、第1補給処が17年度から19年度までの間に締結した事務用品等の調達に係る不自然な入札状況が判明したため、防衛省は、21年5月に、公共事業の入札・契約手続の改善に関する行動計画(平成6年閣議了解)等を踏まえて定められている「談合情報対応マニュアル」に基づき、当該談合情報を公正取引委員会に通知した。
 公正取引委員会は、22年3月30日に、航空自衛隊が発注する什器類について、メーカー6社(注2) が「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」(昭和22年法律第54号)第3条の規定により禁止されている不当な取引制限を行っていたとして、このうち5社に対して排除措置命令及び課徴金納付命令を行った。また、同日に、第1補給処が調達を希望するメーカーについて、第1補給処の職員がその意向をメーカー6社に対して示すなど「入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律」(平成14年法律第101号。以下「入札談合等関与行為防止法」という。)に規定する入札談合等関与行為を行っていた事実が認められたとして、防衛大臣に対して、当該入札談合等関与行為が排除されたことを確保するために必要な改善措置を講ずるよう求めた。さらに、同日に、第1補給処が予算の執行余剰分によって調達する物品について、取引実績等を考慮し、事業者別の調達目標をあらかじめ設定して調達要求を行っていて、改善措置要求の対象となった什器類以外の物品についても、入札談合等関与行為防止法上の問題を生じさせるおそれがあるとして、防衛省に対して、同法の趣旨及び内容の周知徹底、入札の実態についての再点検や必要な場合には改善を行うことなどの再発防止のための所要の措置を講ずるよう要請を行った。
 本院に対しては、上記の命令と同日付けで、公正取引委員会から、防衛省に対して入札談合等関与行為が排除されたことを確保するために必要な改善措置を速やかに講ずるよう求めた旨の通知が行われている。

 メーカー6社  株式会社イトーキ、株式会社内田洋行、プラス株式会社、株式会社ライオン事務器、株式会社岡村製作所、コクヨファニチャー株式会社

(3) 防衛省における調査結果

 防衛省は、外部の有識者を加えた「航空自衛隊第1補給処オフィス家具等の事務用品談合事案調査・検討委員会」を設置するなどして、事実関係の調査、背景・原因の解明及び改善措置の検討を行い、談合事案に係る調査結果及び改善措置を取りまとめて、22年12月14日に、「航空自衛隊第1補給処におけるオフィス家具等の調達に係る談合事案に関する調査報告書」(以下「調査報告書」という。)として、これを公表した。

(4) 防衛省における改善措置

 調査報告書によると、22年6月までに各調達機関で、職員の意識と入札談合関連法令等の理解度を高めるための教育・研修の実施、入札情報の充実等による競争性の確保、複数の職員による自己点検や部内監査を利用した検証態勢の強化等の改善措置等が講じられたとされており、これに加えて以下の改善措置を新たに執るとされている。

ア 談合関連企業への再就職の自粛

イ 調達組織における再就職支援のための援護業務の廃止

ウ 航空自衛隊の補給・整備組織の見直し

エ 事務用品の調達における、競争の導入による公共サービスの改革に関する法律(平成18年法律第51号)に基づく民間競争入札(注3) (以下「民間競争入札」という。)の実施

オ 仕様書の作成要領の見直し

カ 予算執行のチェック機能の強化

キ 入札談合等関与行為防止法等の法令遵守に関する教育の徹底

ク 調達等関係業務に同一の職員が長期にわたって就くことがないようにするなどの人事管理の徹底

ケ 公益通報制度の周知・徹底

コ 入札過程の監視、入札結果の検証、会計監査・業務監査等のチェック機能の強化

サ 損害賠償請求に関する厳正な対処

 競争の導入による公共サービスの改革に関する法律に基づく民間競争入札  国の行政機関等が自ら実施する公共サービスに関し、民間事業者の創意と工夫が反映されることが期待される一体の業務を選定して競争入札に付し、その当該競争入札対象の公共サービスの質の維持向上及び経費の削減を実現する上で最も有利な申込みをした民間事業者を落札者として決定する入札手続

2 検査の観点、着眼点、対象及び方法

(1) 検査の観点及び着眼点

 航空自衛隊における事務用品等の調達に関しては、競争性、透明性及び公正性を確保し、入札談合の防止を図るとともに経済的な予算執行を行うことが求められている。このような状況等を踏まえ、本院は、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から第1補給処及び東京支処における事務用品等の調達について、入札・契約及び予算執行事務が適正に行われているか、調達品の仕様等は適切なものとなっているか、予定価格の算定が適切に行われているか、会計経理に関して防衛省において執られた改善の措置は適切かつ効果的なものとなっているかなどについて着眼して検査を実施した。

(2) 検査の対象及び方法

 検査に当たっては、17年度から22年度までの間に第1補給処の調達要求に基づき東京支処が締結した全契約計15,934件、当初契約金額計979億8418万余円のうち、入札談合が行われたとされている17年度から20年度までの間に締結したオフィス家具の調達に係る契約計311件、当初契約金額計75億6324万余円と、入札談合が取りやめられたとされている21年度に締結した契約計21件、当初契約金額計1億3071万余円を対象とした。さらに、不自然な入札状況が見受けられたとされるOA機器、トナー等を含めたオフィス家具以外の事務用品の調達について契約金額が100万円以上の計5,168件、当初契約金額計523億9153万余円を加え、合計5,500件、当初契約金額合計600億8550万余円を対象とした。
 検査は、計算証明規則に基づき提出された証拠書類等のほか、入札・契約状況等に関する調書等を徴して、これらの調査、分析等を行うとともに、第1補給処、東京支処、各部隊等において、調達要求の状況、予定価格の算定の状況、事務用品等の使用の状況等を確認するなどして会計実地検査を行った。

3 検査の状況

(1) 航空自衛隊の補給処における予算執行の状況

ア 第1補給処に係る年度執行計画と予算執行の状況

 航空自衛隊における予算の執行に当たっては、防衛省予算の執行手続に関する訓令(昭和32年防衛庁訓令第29号)に基づき、その予算の執行に関する総括事務を行うこととされている航空幕僚長が年度執行計画を策定した上で実施することとされている。
 この航空幕僚長が行う事務の実施に資するため、補給本部長は、補給本部各部所掌の装備品等に係る予算の執行及び各補給処に係る支出負担行為限度額の示達要求に関する事務を行うこととされていて、毎年度の予算案等を基に年間予算執行計画を作成している。年間予算執行計画は、予算の積算項目である予算計上項目等ごとに区分して、それぞれ計画額を計上するもので、予算額と計画額とは、基本的に項目、金額ともに一致している。また、補給本部長は、装備品等について、毎年度の予算案等を基に調達基本計画を作成している。調達基本計画は、各予算計上項目の中から一部留保対象経費が除外されるなどしていて、年間予算執行計画における計画額よりも低い額となっているが、装備品等に係る予算計上項目の項目自体は年間予算執行計画と一致している。
 17年度から20年度までの間の年度執行計画及び年間予算執行計画に係る行政文書は、航空自衛隊において保存期間が満了していて廃棄されていたことから、本院は、調達基本計画に計上されている計画額と執行額について、第1補給処が担任する装備品等に関して予算科目ごとに比較するなどして検査したところ、17年度から20年度までの間において、特に通信維持費、航空機修理費、諸器材購入費等について、執行額が計画額を大きく上回っている状況となっていた。これは、他の補給処等が担任する装備品等について、装備品等の故障の発生見積りと実績とに差が生ずることなどにより執行額が計画額を下回り、年度途中に把握したこの差額について、第1補給処において、比較的短期間での納入が可能な事務用品等の調達に充てていたことによるものである。
 一方、21年度以降については、入札談合の発覚を契機としてこのような執行を行わないとしたことから、執行額は計画額を下回る状況となっていた。また、個別の事務用品等の調達の状況について検査したところ、17年度から20年度までの間の調達数量に比べて21年度以降の調達数量が大幅に減少しているなどの事例が見受けられた。これは、17年度から20年度までの間において、年度末における事務用品等の調達に毎年度継続して計画額と執行額との差額の多くを充てていたもので、このような状況は、不要不急な調達等が行われ、ひいては非効率、不経済な予算執行につながっていく状況にあったものと認められた。
 調査報告書によると、年度執行計画における計画額と執行額とに差額が生じていたことに関して、一部に、契約実績が予算積算に反映されていなかったり、不用決定済の器材の修理費が計上されていたりするなどの予算積算上の問題があったとして、22年度の予算執行に当たって不用額を計上したり、23年度予算要求に当たって減額を行ったりするなどの措置を講じているとされている。また、防衛省は、競争の導入による公共サービスの改革に関する法律に基づき作成された公共サービス改革基本方針(平成22年7月6日閣議決定)に従い、航空自衛隊における事務用品の調達業務について、23年8月に調達品目の規格や予定数量等をあらかじめ定めた上で民間競争入札により受託事業者を決定し、業務委託契約を締結している。これにより、今後は、当該契約の対象品目について、事前に部隊等に割り当てられた予算の範囲で部隊等が直接必要な品目を発注することとするなど、効率的、計画的に調達事務を行うなどの改善を図っていくとしている。
 したがって、防衛省において、上記の取組を着実に進めるとともに、今回民間競争入札の対象としていない事務用品等の調達に当たっても、今後、規格、必要数量、調達価格等について年度開始前から適切に見積もるなど、より計画的な調達手続を検討して実施していく必要があると認められる。また、装備品等の維持等経費が、上記のとおり故障の発生頻度の相違等を要因として予算積算と実績に一定程度かい離が生ずることにはやむを得ない面もあるが、今後、予算積算をより一層、実態に即して行う必要があると認められる。

イ 第1補給処におけるオフィス家具の調達に係る不適切な予算執行

 調査報告書によると、第1補給処におけるオフィス家具の調達に係る予算について、予算科目の観点から法令に準拠しているとは認められない執行が確認されたとしている。防衛省は、これら予算執行は、(目)通信維持費、(目)諸器材等維持費又は(目)航空機修理費の予算科目によりオフィス家具を調達したものであるが、オフィス家具は、通信の維持、諸器材等の維持又は航空機の修理に関する作業に使用される以外にも広く使用されるものであることから、これらの調達に要する経費については、各「目」が目的とする通信の維持、諸器材等の維持又は航空機の修理に直接に必要な経費とは認められず、予算の目的外使用を禁止している財政法(昭和22年法律第34号)第32条や、「目」の間において流用するには財務大臣の承認が必要であるとしている同法第33条第2項の規定に照らして、法令に準拠していない執行であるとしている。
 そして、防衛省は、本件事態に対して、違法に予算科目を使用し執行していたとして、執行時の分任支出負担行為担当官である東京支処長に対して戒告の懲戒処分を行っている。また、調査報告書によると、防衛省は、第1補給処が他の補給処の予算の執行残による契約を行う際には、今後、内部部局も会計上の手続(示達)の観点で関与することとし、安易な計画外予算の執行による予算科目上の問題の発生を防止するためのチェック機能を強化しているとされている。
 本院は、前記の事態を踏まえて、予算執行手続やその体制等について検査したところ、次のような状況となっていた。

(ア) 補給本部では、航空幕僚長への示達要求の申請に先立ち、第1補給処と調整した結果として、オフィス家具の調達経費について、(目)通信維持費、(目)諸器材等維持費又は(目)航空機修理費の予算を使用することを前提に示達請求の事務が行われていた。

(イ) 東京支処長は、どの予算科目を使用して支出負担行為を行うかについては、第1補給処長が具体的に予算科目を指定して調達要求を行うこと、使用する予算科目はいずれも事務用品等の支出が可能であるとの誤った認識を持っていたことなどから、予算科目の使用の妥当性に関する個別的な判断を実質的に行っていなかった。

 このように、不適正な予算科目による執行が行われていた要因としては、補給本部及び第1補給処において各予算科目に不用額を生じさせないことを優先させたために法令及び予算を遵守して予算執行を行うことについての認識に欠けていたことにもよるが、支出負担行為の事務を委任されていた分任支出負担行為担当官である東京支処長が示達要求の申請の事務に関与していないなどしていて、適正な予算科目を使用することを前提とした示達の内容となっているかなど示達された限度額の内容の詳細について的確に把握しておらず、予算執行に当たって適正な予算科目を使用することについての支出負担行為による統制が必ずしも的確に行える体制とはなっていなかったことによると認められる。
 したがって、航空自衛隊において、支出負担行為に係る示達の内容の詳細を的確に把握した上で支出負担行為を行うこととするよう必要な体制等を改めて検討し整備する必要があると認められる。

(2) 入札・契約の状況

ア 入札・契約方式の適用状況

 第1補給処は、随意契約に関する事務の取扱い等について(平成17年2月25日財計第407号)により、物品の購入について予定価格が160万円を超える随意契約については公表することとされたことなどを契機として、17年度以降はこれらの契約を一般競争入札に付しており、オフィス家具については、ほとんどの契約において一般競争入札が実施されていた。また、検査の対象とした全契約についてみても、5,500件のうち4,497件(81.7%)において一般競争入札が実施されていた。そして、第1補給処は、防衛監察において不自然な入札状況が指摘されたことを踏まえて、21年度以降、計画外予算の執行を見合わせており、第1補給処の調達全体の件数、金額とも大きく減少していた。さらに、オフィス家具及びOA機器については、21、22両年度とも一部の例外を除いて調達を見合わせていた。

イ 入札参加者数と落札率の状況

 本院は、一般競争入札における契約ごとの入札参加者数と契約金額の予定価格に対する割合を示す落札率の状況について検査したところ、以下のとおりとなっていた。すなわち、オフィス家具については、入札談合が開始されたとされる17年度においては、1者のみの入札となっている契約の割合は件数で66.3%、契約金額で72.0%と高いものとなっていたが、その後の18年度から20年度までの間はこの割合が低下し、多くの契約において複数の業者が入札に参加している形となっていた。しかし、各年度の落札率でみると、複数の者が入札に参加した18年度から20年度までの間も、各年度の平均落札率は97.9%から98.4%といずれも高い状況のままとなっていた。そして、防衛監察による指摘以降は、21年度において平均落札率が66.7%と著しく低下している状況となっていた。
 OA機器については、17年度から19年度までの間は1者のみの入札となっている契約の割合が件数で58.0%から66.6%、金額で50.9%から69.2%と比較的高い状況となっていて、17年度から20年度までの間の各年度の平均落札率も、94.0%から98.0%と高い状況となっていた。なお、21年度以降は新たな調達が行われていない状況であった。また、トナーについては、17年度から22年度までのいずれの年度においても1者のみの入札となっている契約の割合が件数で52.0%から92.5%、金額で62.1%から95.6%と高く、平均落札率も97.9%から100.0%と高い状況となっていた。

ウ 事務用品のメーカーごとの受注割合

 調査報告書によると、第1補給処はメーカー等ごとに調達要求目標額を設定していたとされているが、事務用品の調達に関してメーカーごとの各年度における受注割合を本院において検査したところ、オフィス家具については、入札談合が行われていたとされる各年度とも、各メーカーの受注割合に大きな変化がない状況となっていた。
 OA機器の受注割合をみるとコピー機(複合機を含む。以下同じ。)については、各年度とも特定の5社が全て受注している状況となっており、この5社の中には市場占有率が比較的高いとされているメーカーが含まれていなかった。また、トナーについては、コピー機及びプリンターの機器に対応してメーカーが指定されることから、特定の6社の受注割合が88.7%から97.6%と大半を占める状況となっていた。

エ 航空自衛隊における入札状況の監視等の取組

 航空自衛隊においては、今後、調達要求段階から各調達機関自らが入札過程の監視及び入札結果の検証を行うためのチェックシートを作成することとし、会計監査等の際に、このチェックシートを基にして、仕様書が特定の業者に有利になっていないか、落札の状況に規則性はないか、受注シェアに顕著な傾向がないかなどの調達機関の自主点検が適切なものとなっているか、また、銘柄等を指定する理由が適切かなどの点に重点をおいた監査を実施することとしている。そして、従来、各補給処に対する会計監査は、主として補給本部に置かれた会計監査官において実施されていたが、結果として防衛監察が行われるまでの長期間不自然な入札状況を発見できなかったことを踏まえて、実効ある会計監査を行えるよう態勢を整備することとしている。
 したがって、航空自衛隊において、会計監査等が監査を受けるものから独立した立場で効果的に実施される体制を強化することを検討するとともに、これらの自主点検や会計監査等について実効ある取組として継続することが重要であると認められる。

(3) 仕様書の作成等の状況

ア 競争性の確保について

 調査報告書によると、第1補給処においては、オフィス家具の調達を希望するメーカーに同等品調べ(注4) を依頼し、これを基に仕様書の一部となる調達品目表を作成していたとされている。そして、公正取引委員会は、調達を希望するメーカーにこのような依頼を行うなどの一連の行為は、入札談合等関与行為防止法に規定する入札談合等関与行為であるとしている。
 今回、第1補給処におけるオフィス家具の調達において、上記のとおり作成していたとされる調達品目表について、実際の作成状況を本院において検査したところ、調達品目表には、部隊等が調達を希望する品目について、複数のメーカーの製品の型式番号が記載されていたが、具体的な規格等は記載されておらず、これらの製品が同等品であるかどうかは一見して分かるものとなっていなかった。そして、これらの中には、同等品を記載すべき調達品目表に規格等が異なる製品が記載されていて、競争性及び公正性が確保された適切な仕様書となっていない事例や、仕様書に必要以上の詳細な性能諸元を記載するなどしていて、競争性の確保が十分でないなどの事例が見受けられた。

 同等品調べ  調達する物品について、仕様を満たす複数のメーカーの同等品の型番を調査すること

イ 事務用品等の仕様における経済性について

 事務用品等については、様々な規格等の商品が販売されているが、事務用品等の仕様の決定に際して、航空自衛隊で標準的に調達する規格等の具体的な基準は定められていない状況となっていた。このことから、実際に使用することとなる各部隊等が個別に規格等を検討した上で第1補給処に調達要望を行い、第1補給処は原則として部隊から要望された規格等に基づき仕様書を作成していた。本院は、この仕様書の作成に関して検査したところ、各部隊等で製品の規格等が区々となるなどしていて、経済性の面から検討の余地がある事例が見受けられた。

 上記について、航空自衛隊は、仕様書の記載要領を改正するなどして、必要以上に細部にわたる仕様については記載しないこととするとともに、銘柄指定の仕様書とする場合は、その理由書を必ず添付することを規定するなどの措置を講じている。さらに、仕様書の情報を防衛省内で共有化することにより仕様書作成事務の適正化及び省力化を推進することとしている。また、航空自衛隊は、23年8月に実施した前記の民間競争入札において、経済性も考慮して事務用品の規格、仕様等を定めるなどしていた。
 したがって、航空自衛隊において、仕様書の作成に当たっては、改正された仕様書の記載要領を厳格に遵守するなどして入札参加者が限定されることなどがないよう競争性の確保を十分図るとともに、今回、民間競争入札の対象としていない事務用品等の調達に当たっても、省内で共有化することとしている仕様書の情報を的確に活用するなどして、調達する事務用品等の規格を合理的なものとするなど経済的な調達が行われるように十分留意する必要があると認められる。

(4) 予定価格の算定の状況

 調達物品等の予定価格の算定基準に関する訓令(昭和37年防衛庁訓令第35号)によると、予定価格の算定の基準とする計算価格の計算に当たっては、計算の要素となる数値について適当と認められる標準資料がある場合は、当該業種において適当と認められる数値を適用して計算するものとし、標準資料がない場合は、調達物品等についてその調達の相手方として適当と認めて選定した2者以上の相手方から調達物品等の見積資料の提出を求め、当該資料に基づき適当と認められる数値を適用して計算価格を計算することができることとされている。
 東京支処は、オフィス家具、OA機器及びトナーの調達に係る予定価格の算定に当たっては、いずれも見積資料の提出を受けて計算価格の計算をしていた。そこで、本院は、上記の訓令で2者以上から見積資料の提出を受けることとされていることを踏まえて、17年度から22年度までの間の各契約の見積りの徴取先の数等について検査したところ、次のとおりとなっていた。
 オフィス家具に係る見積りの徴取先の数については、入札談合が開始されたとされる17年度は、107件の契約のうち75件が1者からのみとなっており、この75件の契約は全て見積資料を徴取した会社が契約の相手方となっていた。そして、18年度以降は、見積資料の徴取が1者のみの契約数が減少していた。また、不自然な入札状況が見受けられたとされるOA機器及びトナーの見積りの徴取先の数についてみると、各年度とも1者からのみの徴取となっている件数の割合は、OA機器で52.5%から69.8%、トナーで72.0%から88.5%と高くなっていた。そして、見積資料を徴取した会社が1者のみとなっている契約のうち見積資料を徴取した会社が契約相手方となっていた件数の割合は、オフィス家具で100.0%、OA機器で90.0%から100.0%、トナーで88.8%から96.7%といずれも高くなっている状況が見受けられた。
 このような状況について、東京支処は、見積資料が1者のみとなっているのは、見積資料の提出を複数者に求めた場合でも、実際に見積資料の提出に応じたのが1者のみであったためであるとしている。
 しかし、前記のとおり、見積りの徴取先が1者のみとなっている契約の多くが実際の契約の相手方となっている状況に鑑みれば、仕様書の作成段階等で競争性の確保が十分図られていないことも考えられることから、見積書の提出に応じない者などからその理由等について確認するなど仕様書の内容についてより的確に検証する必要があったと認められた。また、1者のみからの見積資料に基づき予定価格が算定されているのは、予定価格の客観性の確保の点からも適切ではないと認められた。
 航空自衛隊は、今回の入札談合等関与行為が第1補給処の入札・契約事務を行う契約部門ではなく調達要求部門を中心に行われていたことが調査報告書等で明らかになったことから、今後、主として調達要求業務に対する管理監督を強化する体制を構築することとしている。
 しかし、仕様書等の妥当性は、契約事務の過程においても効果的に検証できることから、航空自衛隊において、契約部門において調達要求部門が作成した仕様書等の妥当性等を的確に検証するためのマニュアルを作成したり、調達要求部門に仕様書の変更を求める際の基準を新たに設けるなどして、契約事務の過程において調達要求事務をより効果的に牽(けん)制できる体制を検討し整備する必要があると認められる。

(5) 入札談合により受けた損害の回復

 防衛省は、18年10月以降締結する契約に関して、入札談合等の不正があった場合に契約相手方から違約金を徴することなどを内容とした特約条項(以下「違約金条項」という。)を付すこととしており、18年度から20年度までの間に契約されたオフィス家具の調達に関する契約については、全て違約金条項が付されている。
 そして、防衛省は、今回、公正取引委員会から入札談合の認定を受けた契約に関して、この違約金条項に基づき違約金を請求するための手続を進めているとしている。また、違約金条項が付されていない17年度に締結された契約については、損害賠償の請求を行う方向で、現在、損害額の確定等の手続を進めているとしており、入札談合により受けた損害の回復はいまだなされてない状況となっていた。
 したがって、防衛省において、違約金条項に基づく違約金の請求や損害賠償の請求を適切に行うことにより、速やかな損害の回復に努める必要があると認められる。

4 所見

(1) 検査の状況の概要

 航空自衛隊の事務用品等の調達に関しては、競争性、透明性及び公正性を確保し、談合の防止を図るとともに、経済的な予算執行を行うことが求められている。
 今回、本院は、航空自衛隊が発注するオフィス家具に係る入札談合が発生したことなどを踏まえて、入札談合が行われていたとされる17年度から20年度までの間とそれ以降の第1補給処における事務用品等の調達に係る入札・契約及び予算執行等について、特に会計経理の面からこれらが適切に実施されているか、防衛省において執られた改善の措置は適切かつ効果的なものとなっているかなどに着眼して検査したところ、次のような状況が見受けられた。

ア 17年度から20年度までの間において、装備品等の整備、維持等に係る経費の年度執行計画額と年度途中に把握された執行実績額との差額について、年度末に事務用品等の調達に毎年度継続して充てられている状況となっていた。これに関して、防衛省は、23年度予算を減額するとともに、民間競争入札により事務用品の調達を行うなど効率的、計画的に調達を実施していくこととしている。

イ 事務用品の調達には充てることができない予算科目が使用されていた事態に関して、支出負担行為の事務を委任されていた分任支出負担行為担当官である東京支処長には示達要求の事務に関与していないなど示達された限度額の内容の詳細について的確に把握しておらず、予算執行に当たって適正な予算科目を使用することについての支出負担行為による統制が必ずしも的確に行える体制とはなっていなかった。

ウ 落札率の状況については、入札談合が行われていたとされる17年度から20年度までの間のオフィス家具の平均落札率はいずれも高く、これ以降の平均落札率は著しく低下している状況が見受けられた。不自然な入札状況が見受けられたとされるOA機器については、17年度から20年度までの間に平均落札率が高い状況が見受けられたが、これ以降は新たな調達が行われていない状況となっていた。また、各メーカーごとの受注割合の状況については、入札談合が行われていたとされる各年度とも、オフィス家具における各メーカーごとの受注割合は大きな変化がない状況となっていた。OA機器のうちコピー機の受注割合に関しては、各年度とも特定の5社が全て受注している状況となっており、この5社の中には市場占有率が比較的高いとされているメーカーが含まれていない状況となっていた。
 航空自衛隊は、今後、落札の状況に規則性はないか、受注シェアに顕著な傾向がないかなどの調達機関による自主点検及びこれらが適切に行われているかに重点を置いた会計監査等を行うこととしている。また、従来、各補給処の会計監査は、主として補給本部に置かれた会計監査官において実施されていたが、結果として防衛監察が行われるまでの長期間不自然な入札状況を発見できなかったことを踏まえて、実効ある会計監査を行えるよう態勢を整備することとしている。

エ 仕様書の作成に当たって、同等品とは認められない製品を同等品として記載したり、必要以上に詳細な性能諸元を記載したりするなどして、競争性、公平性等が十分に確保されていない状況が見受けられた。また、調達された製品の規格等が区々となっていて、経済性の面から検討の余地があると認められる事例が見受けられた。これらの事態に関して、航空自衛隊は、仕様書の記載要領を改正したり、民間競争入札において経済性も考慮した規格等を定めたりするなどして改善を図ってきている。

オ 2者以上から提出を受けることとされている見積資料について、1者のみから提出を受けている契約が多数あり、このうち見積資料を徴取した会社が実際の契約の相手方となっている契約が数多くある状況が見受けられた。

カ 違約金条項に基づく違約金の請求は現在手続中であり、損害賠償請求については損害の確定がなされておらず、入札談合により受けた損害の回復は、いまだなされていない状況となっていた。

(2) 所見

 防衛省は、今回の事案によって失われた国民の信頼を取り戻し、防衛省の使命・任務を全うしていくため、今後とも、調査報告書で明らかにした改善措置を的確に実施していくこととしている。ついては、改善措置の実施に当たっては、本院の検査の状況も踏まえて以下の点についても確実に取り組むなどして、より効果的に実施していくことが必要である。

ア 任務の遂行に必要となる事務用品等の調達に当たっては、経済的な予算執行に資するため、特に、今回、民間競争入札の対象としていない事務用品等の調達についても、規格、必要数量、調達価格等について年度開始前から適切に見積もるなど計画的に執行するための調達手続等を検討し実施すること

イ 予算執行に当たって、適正な予算科目を使用することについての支出負担行為による統制が的確に機能するようにするため、支出負担行為に係る示達の内容の詳細を的確に把握した上で支出負担行為を行うこととするよう必要な体制等を改めて検討し整備すること

ウ 航空自衛隊において、会計監査等が監査を受ける者から独立した立場で効果的に実施される体制を強化することを検討するとともに、自主点検や会計監査等について実効ある取組として継続すること

エ 仕様書の作成に当たっては、改正された仕様書の記載要領を厳格に遵守するなどして入札参加者が限定されることなどがないよう競争性の確保を十分図るとともに、今回、民間競争入札の対象としていない事務用品等の調達に当たっても、省内で共有化することとしている仕様書の情報を的確に活用するなどして調達する事務用品等の規格を合理的なものとするなど経済的な調達が行われるように十分留意すること

オ 契約部門において、調達要求部門が作成した仕様書等の妥当性等を的確に検証するためのマニュアルを作成したり、調達要求部門に仕様書の変更を求める際の基準を新たに設けたりなどして、契約事務の過程において調達要求事務をより効果的に牽制できる体制を検討し整備すること、また、予定価格の算定に当たり、見積資料による場合は2者以上から徴取することを徹底し、見積資料が1者からしか提出されない場合にはその理由等について確認するなど契約事務の過程において仕様書の内容についてより的確に検証すること

カ 違約金条項に基づく違約金の請求や損害賠償の請求を適切に行うことにより、速やかな損害の回復に努めること

 本院としては、上記の所見として記載した各事項や防衛省における入札・契約事務等に係る改善措置が適切に講じられ、当該措置に係る取組が効果的に実施されているかについて引き続き検査していくこととする。