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  • 平成22年度|
  • 第4章 国会及び内閣に対する報告並びに国会からの検査要請事項に関する報告等|
  • 第4節 特定検査対象に関する検査状況

子ども・子育て支援対策における国の財政支援制度の実施状況について


第2 子ども・子育て支援対策における国の財政支援制度の実施状況について

検査の対象 内閣府、文部科学省、厚生労働省
安心こども基金の概要 新待機児童ゼロ作戦による保育所の整備等、認定こども園等の新たな保育需要への対応、保育の質の向上のための研修等を実施し、子どもを安心して育てることができるような体制整備を行うことを目的として、国から交付された子育て支援対策臨時特例交付金により都道府県において造成された基金
上記基金の額 3688億0300万円

1 検査の背景

(1) 子ども・子育て支援に関する国の取組

 近年、急速な少子化の進展が問題となる一方で、特に都市部を中心に、共働き世帯・ひとり親世帯の増加等による保育サービスへの需要が増加し、都道府県知事等から認可を受けた保育所(以下「認可保育所」という。)に児童の保護者が入所を希望しても入所要件には該当するが入所できない児童(以下「待機児童」という。)が多数存在していることが社会問題化している。
 政府は、従来、待機児童が多数存在している事態に対処するために様々な施策を講じてきているが、平成20年2月以降は、希望する全ての人が子どもを預けて働くことができるよう受け皿となる認可保育所等の保育サービスを確保して待機児童をなくすことなどを目標に掲げた「新待機児童ゼロ作戦」を展開するなどしている。
 なお、保育サービスの確保に加えて、22年度から、子ども手当、高校授業料の実質無償化等の経済的支援が新たに実施されたことから、同年度における子ども・子育て支援に係る関連予算が3兆4487億円と21年度の1兆6561億円から倍増した。

(2) 就学前児童の保育状況及び待機児童対策

 総務省の人口推計年報によれば、5歳までの児童数は、14年の約706万人(10月1日現在)から21年の約646万人(同)に減少した。一方、厚生労働省の調査によれば、認可保育所の利用児童数は15年の約192万人(4月1日現在)から22年の約208万人(同)と増加しており、都道府県知事等から認可を受けていない認可外保育施設にも、22年3月末現在で約17万人の児童が入所している。また、3歳以上の児童については、幼稚園に通う児童も多数に上っているが、文部科学省の調査によれば、幼稚園の利用児童数は15年の約176万人(5月1日現在)から22年の約160万人(同)と減少傾向にあり、認可保育所とは異なる状況となっている。
 待機児童数の推移(各年4月1日現在)をみると、15年の26,383人を境に19年には17,926人まで減少したものの、20年9月のリーマンショック以降の経済不況等により共働き世帯が増加したことなどが要因となって22年は26,275人と増加に転じている。政府は、前記「新待機児童ゼロ作戦」において、20年度から22年度までの3か年を集中重点期間として、待機児童をゼロにするための取組を進めることとした。
 地方公共団体においても、4月1日現在における待機児童数が50人以上いるなど保育サービスへの需要が増大している市町村(特別区を含む。以下同じ。)等は、児童福祉法(昭和22年法律第164号)等に基づき、保育の実施の事業や子育て支援事業等の供給体制の確保に関する計画(以下「保育計画」という。)を定めるものとされている(以下、保育計画を定めなければならない市町村を「計画策定市町村」といい、それ以外の市町村を「策定対象外市町村」という。)。また、計画策定市町村においては、保育計画の達成に資する事業を行う者に対して、事業を円滑に実施するために必要な援助を行うなどとされていて、待機児童の解消に努めることが求められている。
 そして、主な待機児童対策として、次のとおり、社会福祉法人等が設置する認可保育所(以下「私立保育所」という。)の整備事業や認定こども園の整備事業が実施されている。

ア 私立保育所の整備事業

 私立保育所は、国が定めた保育所等の施設の面積や職員の配置等についての基準(以下「保育基準」という。)に基づいて社会福祉法人等が設置する認可保育所である。
 厚生労働省は、従来、私立保育所の施設整備費等の一部について財政支援等を実施してきているが、20年度から22年度までの3か年においては、「新待機児童ゼロ作戦」により、私立保育所等の整備を集中的に実施することとした。

イ 認定こども園の整備事業

 認定こども園は、18年6月に、小学校就学前の子どもに対する教育及び保育並びに保護者に対する子育て支援の総合的な提供を推進するための措置を講ずることなどを目的に、幼児教育と保育を一体的に提供するなどの施設として創設されて、24年度までに全国で2,000か所以上整備することとされている。
 認定こども園は、認定こども園に関して文部科学大臣と厚生労働大臣とが協議して定める施設の設備及び運営に関する基準等により、都道府県知事等の認可を受けた幼稚園と認可保育所が連携して運営を行う「幼保連携型」、都道府県知事等の認可を受けた幼稚園が保育所的な機能を備えた「幼稚園型」、認可保育所が幼稚園的な機能を備えた「保育所型」、幼稚園及び保育所いずれの認可もない「地方裁量型」の4類型に分類されている。

(3) 保育所整備等に係る国の財政支援

 厚生労働省は、前記の「新待機児童ゼロ作戦」に基づき、私立保育所や認定こども園等の保育サービスの充実等の各種事業を実施するための主要な財源として、新たに、子育て支援対策臨時特例交付金(以下「特例交付金」という。)を全都道府県に交付し、これを財源に各都道府県に基金(以下「安心こども基金」という。)を造成させている。そして、私立保育所については、従来の次世代育成支援対策施設整備交付金による施設整備に替えて、安心こども基金により施設を整備することとされた。
 安心こども基金は、複数年度にわたる予算の執行を可能とするもので、保育所の複数年度にまたがる見通しを持った整備等を容易にするとともに、保育需要等の変化に即応した機動的かつ弾力的な予算執行に資するものとなることから、地方公共団体の自主性・裁量性が発揮され、もって地域の実態に対応できることを期待して造成されたものである。
 安心こども基金は、20年度第2次補正予算により、特例交付金として、表1 のとおり、保育サービス等の充実等に用いるために988億余円の予算が計上され、21年3月に各都道府県に交付された。この予算をもって保育所等を整備することにより、22年度末までの3か年に15万人分の受入体制を集中的に整備して、待機児童の解消を図ることとしている。
 21年度は、第1次及び第2次補正予算により、安心こども基金の積み増しを行うとともに、「すべての子ども・家庭への支援」、「ひとり親家庭等への支援の拡充」及び「社会的養護の拡充」の三区分に係る事業を新たに対象に加えるなどの事業の拡充を行い、21年11月と22年3月に計1700億円が追加交付された。
 22年度は、補正予算により安心こども基金の積み増しを行うとともに、児童虐待防止対策の強化の区分に係る事業を対象にするなどの事業の拡充を行い、23年3月に1000億円が追加交付され、特例交付金は、20年度から22年度までの間に総額3688億余円が交付された。その際、事業実施期限が22年度末となっていた保育サービス等の充実に係る事業等については、一部の事業を除き、事業実施期限を23年度末に延伸する措置が執られた


表1 特例交付金の区分別の交付額
(単位:億円)

区分
交付額
平成20年度
21年度
22年度
1 保育サービス等の充実(厚生労働省関係)
944
482
601
2028
2 保育サービス等の充実(文部科学省関係)
41
68
32
141
3 すべての子ども・家庭への支援
501
265
767
4 ひとり親家庭等への支援の拡充
502
502
5 社会的養護の拡充
145
145
6 児童虐待防止対策の強化
100
100
7 その他事業(都道府県事務費)
2
2
988 1700 1000 3688

2 検査の観点、着眼点、対象及び方法

(1) 検査の観点及び着眼点

 待機児童の解消が喫緊の課題となっている中で、前記のとおり、私立保育所については20年度から22年度末までの3か年に集中的に整備することとされ、認定こども園については24年度までに全国で2,000か所以上整備することとされた。また、すべての子ども・家庭への支援、ひとり親家庭等への支援の拡充、社会的養護の拡充等を図ることも必要とされている。
 このような状況の下で、国、都道府県及び市町村は子ども・子育て支援に関する各種事業を実施してきており、特に計画策定市町村は待機児童の解消に努めることが求められていることから、国は特例交付金を全都道府県に交付し、都道府県は安心こども基金を造成している。
 そこで、本院は、有効性等の観点から、国の施策に基づいて都道府県及び市町村が実施してきたこれらの事業について、安心こども基金が活用され効果を上げているか、基金を造成したことによる利点が十分に発現しているかなどに着眼して検査した。

(2) 検査の対象及び方法

 本院は、19年度から22年度までに実施された子ども・子育て支援に関する各種事業を対象に、内閣府本府、文部科学本省、厚生労働本省及びこれらの事業の補助事業者である地方公共団体のうち計画策定市町村を中心に、18都道府県( )及び管内全850市町村のうち133市町村(計画策定市町村(20年度から22年度まで)は850市町村のうち99市町村)において会計実地検査を行った。
 検査に当たっては、文部科学本省、厚生労働本省、18都道府県及び管内の全850市町村から調書の提出を求めるなどして、安心こども基金の執行状況を検査するとともに、保育所や認定こども園等の整備、定員数の増減に関する状況等を把握した。
 なお、前記の99市町村は、計画策定市町村全117市町村(20年度から22年度まで)の84.6%を、同じく117市町村が抱える待機児童数(22年4月1日現在)の91.2%をそれぞれ占めている。

 18都道府県  東京都、北海道、京都、大阪両府、埼玉、千葉、神奈川、静岡、愛知、兵庫、鳥取、岡山、広島、徳島、愛媛、福岡、熊本、沖縄各県

3 検査の状況

(1) 安心こども基金の執行状況

 安心こども基金の財源となる特例交付金は、前記のとおり、20年度988億余円、21年度1700億円、計2688億余円が全都道府県に交付されている。この交付額は、各都道府県における対象事業ごとの資金需要の調査等を行うことなく、文部科学省及び厚生労働省が定めた交付要綱等に基づき、区分等ごとに配分された額に、全国に占める当該都道府県の就学前児童数、認定こども園設置見込数、18歳以下の児童数等の割合を乗じて得た額を基に算定されるなどしていた。
 18都道府県に造成された安心こども基金について、主な対象事業の実施期限である22年度末における執行状況をみると、表2 のとおり、20、21両年度の造成額が計1762億余円であったのに対して、執行済額は計982億余円、執行率は55.7%となっていた。


表2 18都道府県における安心こども基金の区分、事業別の執行状況
(単位:百万円)

区分・事業名
平成20、21両年度の造成額(A)
22年度末の執行済額(B)
執行率(B/A)
1 保育サービス等の充実(厚生労働省関係)
96,703
71,004
73.4%
 (1) 保育所等整備事業
70,159
 
 (2) 広域的保育所利用事業
94
 
 (3) 家庭的保育改修等事業
84
 
 (4) 保育の質の向上のための研修事業業
461
 
 (5) 認定こども園整備等事業
205
 
2 保育サービス等の充実(文部科学省関係)
6,578
2,893
43.9%
 (1) 認定こども園整備等事業
1,197
 
 (2) 認定こども園等の環境整備等事業
1,696
 
3 すべての子ども・家庭への支援
29,956
14,353
47.9%
4 ひとり親家庭等への支援の拡充
33,377
6,956
20.8%
5 社会的養護の拡充
9,555
3,026
31.6%
6 その他事業(都道府県事務費)
99
44
44.7%
176,271
98,279
55.7%
(注)
 平成21年度から拡充された「4ひとり親家庭等への支援の拡充」に係る事業及び「5 社会的養護の拡充」に係る事業の一部については、基金造成時点から事業実施期限が23年度末までとなっている。

 これを安心こども基金の区分別にみると、次のような状況となっていた。

ア 保育サービス等の充実に係る事業の実施状況等

(ア) 対象事業と交付額の算定方法

 保育サービス等の充実に係る事業の厚生労働省関係分には、私立保育所(幼保連携型認定こども園の私立保育所分等を含む。)の施設整備費について補助する保育所緊急整備事業、保育所分園等の賃借料等について補助する賃貸物件による保育所整備事業等から成る保育所等整備事業、保育所入所児童の送迎サービスを実施する広域的保育所利用事業、家庭的保育事業の実施場所に係る改修費及び賃借料について補助する家庭的保育改修等事業、社会福祉法人等を対象に認定こども園の施設整備費について補助する認定こども園整備事業等がある。同じく文部科学省関係分には、学校法人等を対象に認定こども園の施設整備費について補助する認定こども園整備事業、幼児教育の質の向上のために遊具、教具等の整備費用を補助する認定こども園等の環境整備等事業等がある。
 両省から全都道府県に交付された特例交付金の交付額は、事業ごとに配分された額に全国に占める当該都道府県の就学前児童数、認定こども園設置見込数等の割合を乗じて得た額を基に算定するなどした計1536億余円(厚生労働省関係1426億余円、文部科学省関係109億余円)となっている。
 そして、都道府県への交付額のうち、保育所等整備事業に係る配分額の内訳をみると、8割を当該都道府県の就学前児童数の割合で、残りの2割を当該都道府県の待機児童数の割合でそれぞれ算定した額を基に交付されるなどしていた。

(イ) 保育サービス等の充実(厚生労働省関係)の実施状況

 18都道府県における保育サービス等の充実(厚生労働省関係)に係る安心こども基金の20、21両年度の造成額及び22年度末までの執行済額をみると、表3 のとおり、造成額計967億余円に対し、20年度は計5百万余円、21年度は計163億余円と低調に推移していたが、事業実施期限であった22年度は計546億余円と大幅に増加し、3か年度の執行率は73.4%となっていた。
 また、保育サービス等の充実(厚生労働省関係)の執行済額計710億余円のうち、保育所緊急整備事業に係る額は計668億余円となっており、執行済額の大部分を占めていた。
 都道府県ごとの執行率をみると、他の区分から造成した資金を流用することにより、100%を超えている都道府県が4府県見受けられた一方で、愛知、神奈川両県は、多数の待機児童がいるにもかかわらず、50%にも満たない状況であった(愛知県における保育所等の整備状況については後述の参考事例 を参照)。同じく執行済額をみると、22年度末までの執行済額が最初に造成を行った20年度の造成額にも達していない都道府県が7都県見受けられた。このように、都道府県の事業の執行状況等の実状等についての調査を十分に行わないまま資金が交付されたことなどから、都道府県ごとの執行率及び執行済額には、大きな差異が見受けられる結果となっていた。


表3 18都道府県における保育サービス等の充実(厚生労働省関係)の執行状況等
(単位:百万円)

都道府県名 造成額 執行済額 執行率
(b /a)
待機児童数
平成
20年度
21年度 合計(a) 20年度 21年度 22年度
合計(b)
(保育所緊急整備事業)

北海道 4,055 1,713 5,768 1,391 3,708
5,100
(5,003)

88.4% 532人
埼玉県 4,919 2,635 7,554 1,471 5,643
7,115
(6,885)

94.1% 1,216人
千葉県 4,243 2,204 6,448 1,219 3,427
4,647
(4,354)

72.0% 960人
東京都 11,005 5,964 16,969 1,913 8,291
10,205
(8,755)

60.1% 5,479人
神奈川県 6,583 3,648 10,231 1,159 3,437
4,597
(3,751)

44.9% 2,132人
静岡県 2,595 1,280 3,876 272 2,139
2,411
(2,365)

62.2% 310人
愛知県 4,750 2,611 7,361 401 1,915
2,317
(2,145)

31.4% 544人
京都府 1,672 827 2,500 642 2,189
2,832
(2,788)

113.2% 145人
大阪府 6,612 3,309 9,921 0 3,047 5,119
8,167
(7,957)

82.3% 1,601人
兵庫県 4,239 2,035 6,274 861 3,756
4,617
(4,450)

73.5% 770人
鳥取県 386 179 565 95 312
407
(364)

72.1% 0人
岡山県 1,198 621 1,820 168 802
970
(956)

53.3% 65人
広島県 1,981 894 2,876 574 3,149
3,723
(3,656)

129.4% 47人
徳島県 513 233 747 103 343
446
(435)

59.7% 30人
愛媛県 933 430 1,363 79 651
730
(695)

53.5% 47人
福岡県 3,126 1,690 4,817 5 853 3,538
4,397
(3,965)

91.2% 379人
熊本県 1,896 590 2,486 1,035 1,823
2,858
(2,849)

114.9% 104人
沖縄県 2,314 2,805 5,119 1,078 4,379
5,457
(5,456)

106.6% 1,808人
63,027 33,675 96,703 5 16,370 54,628
71,004
(66,839)

73.4% 16,169人
注(1)  執行済額の合計欄の括弧内は、保育サービス等の充実のうち保育所緊急整備事業に係る額である。
注(2)  執行率は平成20、21両年度の基金造成時の造成額に対する22年度末時点の執行済額の割合であり、執行率が100%を超えている場合もある。
注(3)  待機児童数は、交付額の算定に用いられた平成20年4月1日現在のものである。

 上記の事態について、事例を参考として示すと次のとおりである。

<参考事例>
 熊本県は、安心こども基金のうち保育サービス等の充実(厚生労働省関係)に平成20年度18億余円、21年度5億余円、計24億余円を造成しているが、22年度末までの執行見込額が造成額を超えたため他の区分から資金を流用し、22年度末までの執行済額は28億余円、当初造成額に対する執行率は114.9%であった。
 県内で当該区分に係る各事業の執行済額が多い熊本市は、20年度に保育所緊急整備事業が開始されたことに伴い、23年度以降に計画していた保育所整備を前倒しして実施したことなどにより、21、22両年度に計14か所(定員数計460人)で施設整備を実施し、これに係る事業の執行済額は14億余円であった。

a 保育所緊急整備事業の実施状況
 保育所等整備事業のうち保育所緊急整備事業は、ア(ア) のとおり、私立保育所の施設整備費について補助するものであり、私立保育所の施設を新たに整備する新設、既存保育施設の現在定員の増員を図るために整備などする増築や増改築(以下「増築等」という。)だけではなく、定員増を伴わない改修や建物の耐震化整備等(以下「改修等」という。)も対象としている。
 保育所緊急整備事業は、前記表3 のとおり、保育サービス等の充実(厚生労働省関係)の執行済額の大部分を占めていることから、18都道府県管内の850市町村における事業の実施状況について、新設、増築等又は改修等の施設整備の分類別及び保育計画策定の有無により比較したところ、表4 のとおりとなっていた。

表4 18都道府県管内の850市町村の保育所緊急整備事業による私立保育所定員の増加の状況
区分 実施市町村数 新設 増築等 改修等 合計
箇所数 執行済額 定員増加数 箇所数 執行済額 定員増加数 箇所数 執行済額 箇所数 執行済額 定員増加数
 
箇所
箇所
百万円
箇所
百万円
箇所
百万円
箇所
百万円
計画策定市町村
(99市町村)
92
205
17,482
15,762
177
16,533
4,878
76
2,105
458
36,121
(55.9)
20,640
(62.3)
策定対象外市町村
(751市町村)
240 103 8,186 6,897 206 14,599 5,549 210 5,647 519 28,433
(44.0)
12,446
(37.6)
全体計
(850市町村)
332 308 25,668
(39.7)
22,659
(68.4)
383 31,133
(48.2)
10,427
(31.5)
286 7,753
(12.0)
977 64,555 33,086
注(1)  本表は、保育所緊急整備事業により整備した私立保育所のうち、平成22年度末までに整備が終了したものを対象としている。
注(2)  執行済額欄及び定員増加数欄の括弧書きは、全体計に占める割合をそれぞれパーセンテージで表している。

 施設整備の分類別にみると、新設は箇所数、執行済額共に増築等より少ないが、定員増加数は全体の68.4%を占めており、定員増加に対する寄与が大きくなっている。増築等は箇所数、執行済額とも最も多く実施され、特に執行済額は全体のほぼ半数を占めているが、定員増加数は新設の半分にも満たない状況となっていた。
 また、市町村別の保育計画策定の有無により比較してみると、計画策定市町村は市町村数が少ないにもかかわらず、執行済額、定員増加数共に計画策定市町村での値が全体の半数を超えており、一部の市町村が集中して事業を実施している状況となっていた。
 保育所緊急整備事業の実施状況について、事例を参考として示すと次のとおりである。

<参考事例>
 北海道の安心こども基金の交付額算定に用いられた平成17年国勢調査報告による就学前児童数290,048人のうち、札幌市の就学前児童数は95,422人で全体の32.8%となっていた。また、同じく20年4月1日現在の待機児童数532人のうち、計画策定市町村である同市の待機児童数は271人と全体の50.9%となっていた。
 これに対して、北海道が21、22両年度に保育所緊急整備事業として執行した計50億余円のうち、同市の執行済額は31億余円、道内に所在する177策定対象外市町村の執行済額は17億余円で、それぞれ執行済額全体の62.2%、35.2%を占めていて、同市が集中して事業を実施している状況となっていた。また、同市が実施した保育所緊急整備事業の内訳をみると、新設が7件(執行済額8億余円、これによる定員増660人)に対し、増築等が16件(同23億余円、同480人)となっていた。

b 市町村及び社会福祉法人等における実情等
 保育所緊急整備事業は、基金造成時において事業実施期限が22年度末とされた一方で、安心こども基金が造成されたのは21年3月であったことから、20年度から事業を実施することは極めて困難であり、実質的な事業実施期間は21、22両年度の2年間となっていた。また、21年3月の安心こども基金造成時点で、各市町村における21年度予算は既に議会において可決・承認されていたことから、21年度に実施された事業は、従来の次世代育成支援対策施設整備交付金等の交付を見込んで計画していた施設整備を安心こども基金により実施したものがほとんどであり、市町村にとっては中長期的な計画を立てて事業を実施することが難しい状況となっていた。
 また、事業者である社会福祉法人等が私立保育所を新設する際は、事業計画の策定から土地や人員の確保、施設の設計等を行うことが必要であることから、一定の事業期間を要するのが一般的である。
 これらの理由により、各市町村が、安心こども基金を活用した保育所整備等に本格的に取り組み始めたのは、事業実施の最終年度である22年度になってからであった。
 さらに、安心こども基金を活用する場合は、前記のとおり、実質2年間で事業を完了しなければならず、そのことが、新設に比べて、比較的短期間で定員の増加を図ることができる増築等の件数が多くなっている要因の一つと思料される。
 このように、保育所緊急整備事業は実施期間が短く、複数年度にまたがる見通しを持った保育所の整備を容易にするなどの基金を造成したことによる利点が十分に発現していない状況となっていた。
 市町村における実情について、事例を参考として示すと次のとおりである。

<参考事例>
 愛知県における平成22年度末までの保育サービス等の充実(厚生労働省関係)の執行状況は、表3 のとおり、多数の待機児童がいるにもかかわらず、執行率が31.4%と低調となっていた。同県内の待機児童数の約8割を占めている名古屋市における保育所等の整備状況をみると次のとおりとなっていた。
 すなわち、同市は19年度までは待機児童数が減少傾向にあったため、保育所等の整備は待機児童数の動向を見ながら実施することにしていたが、20年度以降待機児童数が増加に転じたことから、潜在的な保育ニーズを考慮した保育所等の整備を実施することとした。しかし、保育所の整備には、同市における事業計画の決定や安心こども基金等の予算の確保に時間を要したり、社会福祉法人等の事業者においても事業計画の策定から用地の確保、施設整備等保育所等の開設に至るまでには2、3年程度の期間を要したりすることから、同市での保育所整備は22年度の後半以降に集中して行われることになった。
 このことから、22年度末までに保育所緊急整備事業により整備された保育所数は、新設4か所(定員増加数計330人)、改修等3か所で、これらに係る執行済額は6億余円(金額には23年度に繰り越した新設5か所を含む。同県全体の執行済額は21億余円)であったが、22年度後半以降は、集中して保育所整備に着手しており、23年度末には相当数の定員の増加が見込まれている。

 なお、本事業の事業実施期限は、23年度末まで延伸することとなったが、そのことが市町村に周知されたのは、22年12月になってからであり、市町村は23年度における国の財政支援策が不透明な状況で同年度の予算を編成することを余儀なくされていた。

c 認可保育所の定員増加状況
 保育所緊急整備事業による私立保育所の整備状況は 及び のとおりとなっていたが、18都道府県における18年度から22年度までの間の認可保育所の施設数及び定員数の増減の推移をみると、表5 のとおり、19年度から21年度にかけては施設数、定員数共に増加が鈍化傾向を示しており、20年度は過去5年間で最低の伸び、21年度は18年度と同程度となっていた。そして、「新待機児童ゼロ作戦」により集中的に整備するとしていた重点期間の最終年度に当たる22年度になってから増加する傾向が顕著になったものの、当初計画よりも受入体制の整備が遅延している状況となっていた。
表5 18都道府県における年度別の認可保育所の整備状況
(単位:箇所、人)

施設数等
年度
施設数 定員数
総数 増加数 総数 増加数
平成18 12,622 143 1,214,755 19,058
    19 12,765 76 1,233,813 11,960
    20 12,841 51 1,245,773 9,527
    21 12,892 142 1,255,300 20,798
    22 13,034 273 1,276,098 34,646
    23 13,307 1,310,744
注(1)  各年度における施設総数及び定員総数は当該年度の4月1日現在の値であり、施設増加数及び定員増加数は当該年度内に増加した値である。
注(2)  幼保連携型及び保育所型の認定こども園を含む。

 なお、東日本大震災により甚大な被害を受けるなどした岩手、宮城、福島、茨城各県を除く43都道府県における認可保育所の定員数は、20年の約200万人(4月1日現在)から23年の約207.9万人(同)へと約7.8万人増加したが、入所希望児童数がこれを上回ったため、待機児童数は20年の17,743人から23年の24,341人と6,598人増加することになった。

(ウ) 認定こども園整備等事業の実施状況等

 保育サービス等の充実に係る事業のうち、認定こども園整備等事業は認定こども園整備事業と認定こども園事業費から成っている。認定こども園整備事業の内容は幼保連携型の幼稚園部分、保育所型の幼稚園機能部分及び幼稚園型の保育所機能部分に係る新設、修理等となっており、認定こども園事業費の内容は保育所型の幼稚園機能部分及び幼稚園型の保育所機能部分に関する事業費となっている。そして、両事業とも、保育所型及び幼稚園型については、幼保連携型への移行を促進するため、幼保連携型への移行が条件となっていた。
 両事業の18都道府県管内の850市町村における22年度末の実施状況をみると、表6 のとおり、実施市町村数、箇所数等が著しく少なくなっていた。

表6 18都道府県管内の850市町村における認定こども園整備等事業の実施状況等
(単位:箇所、百万円)

事業内容 実施市町村数 箇所数 執行済額
厚生労働省 認定こども園整備事業
認定こども園事業費
文部科学省 認定こども園整備事業
認定こども園事業費
4
10
20
7
10
11
23
11
173
32
1,182
14
1,403

 これは、幼保一体型施設等に関する国の保育施策が定まっていないことなどから、地方公共団体や社会福祉法人等の事業者が積極的に事業に参加しづらいことや、上記のとおり、保育所型及び幼稚園型の認定こども園は一定期間内に幼保連携型への移行が条件となっていて、移行する計画のない事業者等は安心こども基金を利用することができないことなどが影響していると思料される。
 なお、文部科学省及び厚生労働省によれば、23年4月1日現在の全国の認定こども園の認定数は、前記2,000か所以上の目標に対して762か所と約38%にとどまっていた。

(エ) 保育サービス等の充実に係るその他の事業の実施状況等

 保育サービス等の充実に係る事業には、前記のとおり、保育所等整備事業のうちの賃貸物件による保育所整備事業、広域的保育所利用事業、家庭的保育改修等事業等がある。
 これらの事業の18都道府県管内の850市町村における22年度末の実施状況をみると、表7 のとおり、賃貸物件による保育所整備事業は、土地の取得等が困難な都市部において多数実施されていたが、他の2事業については、実施している市町村、箇所数共に著しく少なくなっていた。

表7 18都道府県管内の850市町村における保育サービス等の充実に係るその他の事業の実施状況等
(単位:箇所、百万円)

事業内容 実施市町村数 箇所数 執行済額
賃貸物件による保育所整備事業
広域的保育所利用事業
家庭的保育改修等事業
70
11
13
223
18
119
2,847
94
76
3,018

 これは、安心こども基金による事業の実施期限が当初22年度末に設定されており、実施期限以降は当該各事業に係る経費を地方公共団体が自ら全額負担しなければならないことから、積極的に取り組める状況になかったことなどによると思料される。
 なお、国から財政支援を受けて実施している、保育士等の資格を有した保育者の居宅等において少人数の就学前児童を保育する家庭的保育事業の18都道府県管内の850市町村における実施状況をみると、同事業を実施している市町村数は23年4月1日現在で34市町と著しく少なくなっており、定員数については1,509人となっていた。

イ 保育サービス等の充実以外の区分に係る事業の実施状況等

 安心こども基金は、前記のとおり、保育サービス等の充実以外にもすべての子ども・家庭への支援、ひとり親家庭等への支援の拡充及び社会的養護の拡充の三区分において事業を実施しており、三区分に係る全都道府県への特例交付金の21年度の交付額は、区分等ごとに配分された額に全国に占める当該都道府県の18歳以下の児童数、高等技能訓練促進費の支給実績等の割合を乗じて得た額を基に算定するなどして、それぞれ501億余円、502億余円、145億余円となっている。
 そして、18都道府県の22年度末における三区分に係る事業の実施状況をみると、次のとおりであり、各区分に係る執行率別都道府県数及び全体執行率は表8 のとおりであった。

表8 18都道府県における22年度末の保育サービス等の充実以外の区分に係る執行率別都道府県数及び全体執行率
(単位:箇所)

区分 執行率別都道府県数 全体執行率
0%超
25%未満
25%超
50%未満
50%超
75%未満
75%超
100%未満
100%超
すべての子ども・家庭への支援 4 5 1 6 2 47.9%
ひとり親家庭等への支援の拡充 13 5 0 0 0 20.8%
社会的養護の拡充 9 5 3 1 0 31.6%
(注)
 執行率は、平成21年度の基金造成時の造成額に対する22年度末時点の執行済額の割合であり、執行率が100%を超えている場合もある。

(ア) すべての子ども・家庭への支援

 すべての子ども・家庭への支援に係る事業は、地域の実情に応じた創意工夫のある取組を実施する地方公共団体等を支援するものであるが、地方公共団体が実施した事業内容をみると、執行率の高い都道府県を含むほとんどの都道府県においては、保育所等の子育て支援施設における備品の購入等が執行済額の大半を占める結果となっており、新規事業を立ち上げた事例はあまり見受けられなかった。
 執行率別都道府県数をみると、前記表8 のとおり、執行率が100%を超える都道府県が見受けられる一方で、執行率が50%にも満たない都道府県も多く見受けられた。

(イ) ひとり親家庭等への支援の拡充

 ひとり親家庭等への支援の拡充に係る事業は、母子家庭の母親が収入面、雇用条件面等でよりよい就労につき、経済的な自立を図れるようにすることを目的とした高等技能訓練促進費等事業等が対象となっている。
 執行率別都道府県数をみると、前記表8 のとおり、13都府県で執行率が25%を下回り、全体執行率も20.8%と低調となっていた。

(ウ) 社会的養護の拡充

 社会的養護の拡充に係る事業は、児童養護施設等の退所者等に対して適切な就業環境の確保や支援等を行うことで退所後の自立支援を図れるようにすることを目的とした児童養護施設の退所者等の就業支援事業等が対象となっている。
 執行率別都道府県数をみると、前記表8 のとおり、9県で執行率が25%を下回り、全体執行率も31.6%と低調となっていた。

 このように、上記の三区分に係る各事業において、新規事業を立ち上げる地方公共団体が少なかったり、各事業の執行率が低調となっている都道府県が多かったりした理由は、実際に事業を実施する地方公共団体等に対する需要の調査等が十分でなかったこと、また、安心こども基金による事業には実施期限が設定されており、地方公共団体が各事業を立ち上げた場合、実施期限以降は当該各事業に係る経費を地方公共団体が自ら全額負担しなければならないことなどによると思料される。

(2) 地方公共団体における独自の財政支援による保育施策の実施状況

 前記のとおり、安心こども基金を財源とする子ども・子育て支援に関する各種事業が実施されているが、保育需要の多い地方公共団体においては、国からの財政支援を受けることなく、独自の保育施策や財政支援により待機児童対策を実施しており、その中でも独自の保育基準に基づいて、認可外保育施設に対する財政支援等を積極的に実施している地方公共団体が多く見受けられる。このことから、18都道府県管内の850市町村における独自の保育施策の実施状況を調査したところ、表9 のとおり、204市町村及び14政令指定都市において、計3,071か所に上る認可外保育施設に対し運営費等の助成を行うなどの財政支援を実施している状況となっていた。


表9 18都道府県管内204市町村及び14政令指定都市における独自の保育施策(認可外保育施設に対する運営費等の助成)の実施状況(平成21年度)

(単位:箇所、千円)

都道府県名 実施市町村数 施設数 運営費助成額 整備費助成額 政令指定都市名 施設数 運営費助成額 整備費助成額
北海道 18 57 466,002 さいたま市 89 1,280,031
埼玉県 36 258 1,280,683 12,899 千葉市 59 444,504
千葉県 4 45 135,775 47,391 横浜市 124 4,907,581 35,380
東京都 51 1,354 19,962,299 2,036,244 川崎市 67 1,452,161 8,752
  23 区 23 1,061 15,340,492 1,729,305 相模原市 32 406,729
市町 28 293 4,621,806 306,939 静岡市 10 42,468
神奈川県 16 72 475,414 1,383 浜松市 33 117,182
静岡県 6 22 45,843 名古屋市 10 172,177
愛知県 12 70 233,518 201 京都市 33 366,755 91
京都府 3 14 61,085 大阪市 17 110,012
大阪府 12 62 721,241 14,745 堺市 15 283,683 11,833
兵庫県 6 29 265,126 1,644 神戸市 46 156,665
鳥取県 2 7 3,350 岡山市 24 8,308
岡山県 1 2 3,782 北九州市 11 46,733
広島県 4 22 70,235 14政令市計 570 9,794,993 56,057
徳島県 1 1 11,479 110 (218 市町村)
合計
3,071 33,954,960 2,172,298
愛媛県 1 6 6,084
福岡県 4 13 13,968 476  
熊本県 4 6 7,161 1,144
沖縄県 23 461 396,912
都道府県計 204 2,501 24,159,966 2,116,240

 独自の保育施策の実施状況について、事例を参考として示すと次のとおりである。

<参考事例>
 東京都は、平成13年度から、国の保育基準の一部を緩和し、大都市の特性に着目した都独自の保育基準を設定して、その基準を満たす保育所を認証保育所として整備及び運営の支援を推進しており、23年4月1日現在における認証保育所の整備状況をみると、598か所、定員1万9千余人となっていて、都内の認可保育所(23年4月1日現在で1,800か所、定員18万余人)と同様に、都の保育施策の一翼を担っている。
 しかし、認証保育所は国の保育基準を満たしていないことなどから、国からの財政支援の対象外とされており、都及び管内各市区町が運営に係る費用の一部について、それぞれ2分の1ずつを負担して事業者に助成を行っている状況である。

(3) 現在検討されている子ども・子育て支援対策

 国は、新たな制度として25年度から段階的に実施することを目指している子ども・子育て新システム(以下「新システム」という。)の中で、待機児童対策や幼保一体型施設等の子ども・子育て支援対策に係る各種施策、財政支援等についての検討を進めており、都市部を中心に深刻な問題となっている待機児童問題に対処するために、内閣総理大臣指示により22年10月に待機児童ゼロ特命チームを設置して、新システムの考え方を先取りした取組として、一部の地方公共団体に対して補助率のかさ上げや補助対象の拡充等を行い、施設の整備等を実施することとしている。そして、上記の取組の中で効果が期待できるものについては、新システムの中で全国展開を検討するなどとしている。
 新システムに関しては、恒久財源を得て本格実施できるよう、23年度中に必要な法制上の措置を講ずることとされている税制抜本改革とともに、所要の法律案を国会に提出することとされ、この法律案を作成するために、新システムの制度設計に関して引き続き検討を進めているところである。
 しかし、地方公共団体との協議が今後の検討課題になっていることなどもあり、地方公共団体等にとって利用しやすい制度となるのかは不透明な部分が多くなっている。

4 本院の所見

 国及び地方公共団体は、喫緊の課題として、「新待機児童ゼロ作戦」に基づく各種の待機児童対策等を実施してきており、その中で、国は安心こども基金を造成するための特例交付金を都道府県に対して交付するなどしている。
 地方公共団体は安心こども基金等を財源として子ども・子育て支援対策を実施しているが、地方公共団体が計画的に事業を実施するためには基金の都道府県への交付時期が著しく遅かったこと、当初事業実施期限が22年度末と定められていて事業実施期間が実質2年と短かったこと、地域の実情等についての調査等を十分行わないまま資金が交付されたことなどから、22年度末において、認可保育所の定員数は増加しているものの、依然として多数の待機児童がいる市町村も多く存在し、また、認定こども園、家庭的保育等の保育サービスに係る事業についても十分な供給量の増加が図られていない状況となっている。文部科学省及び厚生労働省によれば、22年度補正予算において交付された安心こども基金については都道府県に要望調査を実施するなどしたとしているが、そのことが安心こども基金の執行率の上昇につながっていくか、また、認定こども園についても新システムに関する中間とりまとめにおいて幼保一体型施設に関する制度設計が示されたことから、そのことが今後の認定こども園の認定件数の増加につながっていくかなどについては引き続き注視していく必要がある。
 一方、待機児童をめぐっては、前記新システムの中で、子ども・子育て支援対策に係る各種施策、財政支援等についての検討を進める一方で、新システムの考え方を先取りした取組を実施することとしている。しかし、24年度の各種施策や財政支援は23年10月現在でも確定していない上、新システムの制度設計に関しては引き続き検討を進めることとされており、今後決定される具体的な制度が、地方公共団体等にとって利用しやすいものとなっていくかは不透明な部分が多くなっている状況である。
 したがって、文部科学省及び厚生労働省において、地方公共団体等が計画的に事業を実施できるようにするために、今後の施策等を速やかに策定するとともに、地域の実情や資金需要等に基づき、交付時期や期間、必要額等を考慮した財政支援を行うことにより、希望する全ての人が子どもを預けて働くことができるよう多様な保育サービス等が十分に提供されることが必要である。

 本院としては、子育て支援は社会全体で取り組み、着実な効果を上げる必要があることに鑑み、今後とも、子ども・子育て支援に係る事業の実施状況について、引き続き注視していくこととする。