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  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 平成23年10月

在外公館に係る会計経理に関する会計検査の結果について


第1 検査の背景及び実施状況

1 検査の要請の内容及び会計検査の実施状況

 会計検査院は、平成21年6月29日、参議院から、国会法第105条の規定に基づき下記事項について会計検査を行いその結果を報告することを求める要請を受けた。これに対し同月30日検査官会議において、会計検査院法第30条の3の規定により検査を実施してその結果を報告することを決定した。

一、会計検査及びその結果の報告を求める事項

 (一) 検査の対象

  外務省

 (二) 検査の内容

  在外公館に係る会計経理に関する次の各事項

 〔1〕  会計事務の体制の状況

 〔2〕  資金の受入、保管等の状況

 〔3〕  収入及び支出に係る会計処理の状況

 〔4〕  施設及び物品の管理等の状況

 〔5〕  監査の実施状況

 会計検査院は、上記の要請により22年次に実施した会計検査の結果について、22年10月6日、会計検査院長から参議院議長に対して報告 した(以下、この報告を「22年報告」という。)。そして、会計検査院は、22年報告の検査結果に基づく改善策が確実に実施されているかを確認するなど在外公館に係る会計経理に関し引き続き検査を実施し、取りまとめが出来次第報告することとした。

2 在外公館の概要

(1) 在外公館の所掌事務及び設置数

 外務省は、外務省設置法(平成11年法律第94号)に基づき、外国において同省の所掌事務を行うため、在外公館を設置している。在外公館には、大使館、総領事館及び政府代表部があり、それらの所掌事務及び設置数は、図表I-1 のとおりである。

図表I-1
 在外公館の所掌事務及び設置数(平成21、22年度末現在)

区分 所掌事務 設置数
21年度 22年度
大使館 外国において相手国政府との交渉、邦人の保護、情報収集等を行う。 (注)
140
(注)
141
総領事館 外国において邦人の保護、情報収集等を行う。 64 63
政府代表部 国際機関等において我が国を代表する。 7 7
211 211
 兼勤の特命全権大使に代わり臨時代理大使が常駐する在外公館を含む。

(2) 在外公館の前渡資金交付額及び外務公務員の定員

 在外公館が所在国で各種経費を支払うために外務本省から交付を受けた前渡資金の額及び在外公館の外務公務員の定員は、図表I-2 のとおりである。

図表I-2  在外公館の前渡資金交付額及び外務公務員の定員(平成21、22両年度) (単位:千円、人)
区分 前渡資金交付額 定員
21年度 22年度 21年度 22年度
大使館 61,586,716 53,280,564 2,445 2,469
総領事館 19,406,648 18,330,513 724 726
政府代表部 4,807,072 4,652,308 208 208
研修員・交代要員(注) - - 151 151
85,800,437 76,263,386 3,528 3,554
 研修員と交代要員は、在外公館ごとに定員が定められていないため、別に計上した。

(3) 在外公館の組織及び職員等

ア 在外公館の組織

 在外公館の組織は、図表I-3 のとおり、通常、政務班、経済班、領事・査証班、広報文化班、官房班等に分かれており、それぞれの班長に、公使、参事官、一等書記官等が就いている。
 これらの班のうち、官房班は、会計(庶務を含む。)及び通信を担当することとしており、会計担当者及び通信担当者が互いに正副の担当者になってそれぞれの事務を兼務することにしている。この官房班による事務の体制(以下「官房班体制」という。)は、比較的規模の小さな在外公館で採用されているものである。一方、比較的規模の大きな在外公館(以下「大規模公館」という。)の多くでは、会計班及び通信班としてそれぞれの班が独立して事務を行っている。

  図表I-3 在外公館の組織

図表I-3在外公館の組織

イ 在外公館の職員等

 在外公館には、外務省に所属する国家公務員である「外務公務員」のほか、外務省から委嘱を受け赴任する国の政治、経済、文化等に関する調査等に従事する「専門調査員」、外務省の委託により社団法人国際交流サービス協会が公務出張者、要人訪問等に関する便宜供与等を行うために派遣した「派遣員」、在外公館が採用した「現地職員」及び在外公館の長(以下「館長」という。)が雇用するなどした「公邸料理人」がいる。そして、外務公務員の中には、外務省以外の省庁等から出向して在外公館に勤務している「出向者」や医師の資格を有する「医務官」がいる。
 これら在外公館の職員等は、図表I-4 のとおりである。

図表I-4  在外公館の職員等(平成21年、22年) (単位:人)
区分 説明 現員
21年 22年
外務公務員 外務省に所属する国家公務員 3,201 3,206
  うち出向者 他省庁等から通常2年から3年の期間出向してきている外務公務員 975 947
うち医務官 職員及びその家族の健康管理等を行う医師の資格を有する外務公務員 86 90
専門調査員 通常2年の任期で外務省から委嘱を受け、所在国・地域の政治、経済、文化等に関する調査研究及び在外公館の事務に従事する専門家 224 219
派遣員 一般派遣員 外務省の委託により社団法人国際交流サービス協会から派遣され、公務出張者、要人訪問等に関する便宜供与及び庶務的業務の補助を行う者 253 249
技術派遣員 外務省の委託により社団法人国際交流サービス協会から派遣された建築、電気、機械等の専門知識及び技術を有する者 16 27
現地職員 外務公務員の行う事務を補助するため現地において雇用したクラーク、秘書、受付、電話交換手、運転手、掃除人、執事、ボーイ、メイド、庭師、守衛等の職員 4,920 5,003
公邸料理人 公邸における料理を行わせるため館長が雇用した、あるいは外務省が委託した料理人 192 184
8,806 8,888
 平成21年は7月1日現在、22年は8月15日現在である。

3  22年報告の概要

 22年次の検査の結果として、〔1〕 会計事務の体制に関して、外交事務を所掌する館長に会計機関等の事務が集中していたり、〔2〕 資金の受入、保管等に関して、在外公館への外国送金において、1件当たりの送金額、資金の残額等が考慮されずに行われていたり、〔3〕 収入及び支出に係る会計処理に関して、随意契約の実施、契約の履行確認、支払等に当たり、会計法令等に則した処理が行われていなかったり、〔4〕 施設及び物品の管理等に関して、長期間利用されていない行政財産や用途廃止したが処分されないままとなっている普通財産等を管理していたり、〔5〕 監査の実施に関して、査察実施後長期間が経過しているのに事態が十分に改善されていなかったりなどしている事態が見受けられたことから、外務省は、在外公館に係る会計経理について、内部統制が十分機能するよう努めるとともに、その事務処理を一層適切かつ効率的に執行するように努める必要があるとする所見を記述している。

4 23年次の検査における検査の観点、着眼点、対象及び方法

(1) 検査の観点及び着眼点

 会計検査院は、22年報告の検査結果に基づく改善策が確実に実施されているかを確認するための検査(以下「フォローアップ検査」という。)を実施するとともに、前記要請の趣旨を踏まえ更に検査の徹底を図るため、在外公館に係る会計経理に関する各事項について、正確性、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、以下の着眼点により検査を実施した。

ア 会計事務の体制の状況

 会計事務の体制は、適正かつ適切なものとなっていて有効に機能しているか、特に、会計担当者の会計処理について、相互チェックが十分に行われているか、定期・不定期の検査等日常的な内部牽(けん)制が適切に行われているか。

イ 資金の受入、保管等の状況

 前渡資金等の資金の受入れや保管等は適正かつ経済的に行われているか、特に、送金通貨から現地通貨への交換は適切に行われているか、前渡資金等に係る外国送金の手続は、経済的なものとなっているか。

ウ 収入及び支出に係る会計処理の状況

 収入に係る会計処理は適正に行われているか、特に、旅券、査証及び証明書(以下、これらを「旅券等」という。)の発給等に係る手数料(以下「領事手数料」という。)の収納事務は、適切に行われているか、付加価値税等の還付等を適正に受けているか。また、支出に係る会計処理は適正かつ経済的に行われているか、特に、前渡資金等の使用残額は、適時適切に外務本省へ返納されているか。

エ 施設及び物品の管理等の状況

 施設は適正かつ経済的に管理されているか、物品の利用、保管等は適切か、特に、物品の取得や異動は物品管理簿等に適正に記録されているか、海外広報用の広報資料、文化啓発品等は、広報、文化交流事業等に積極的に利用されているか。

オ 監査の実施状況

 在外公館の監査は、計画的かつ効率的に行われて実質的な効果を上げているか、特に、外務公務員法(昭和27年法律第41号)で定められた査察として実施されている監査は適切に機能しているか、査察が実施されていない在外公館にも査察結果を周知して有効に活用する方策は執られているか。

(2) 検査の対象及び方法

 会計検査院は、22年次に検査を実施した51公館(別表1参照 )等に引き続き、図表I-5 のとおり、外務本省並びに在カンボジア日本国大使館等25大使館及び在釜山日本国総領事館等15総領事館の計40公館を対象として検査を実施した。検査の実施に当たっては、計算証明規則(昭和27年会計検査院規則第3号)に基づき外務省から提出された計算書、証拠書類等(以下、これらを合わせて「計算証明書類」という。)により、在庁して書面検査を行うとともに、外務本省において、各在外公館の会計事務の状況について資料を基に説明を受け、また、上記の各在外公館において、調書を徴するとともに個別の会計事務について説明を受けるなどして、計365.5人日を要して、会計実地検査を行った。
 なお、「在○○日本国大使館」、「在△△日本国総領事館」及び「□□日本政府代表部」については、以下、それぞれ「○○大使館」、「△△総領事館」及び「□□代表部」という。

図表I-5
 検査の対象

検査箇所 箇所数
外務本省 1
 



大使館 (アジア6公館)カンボジア、パキスタン、フィリピン、マレーシア、ミャンマー、モンゴル、(大洋州3公館)パラオ、フィジー、ミクロネシア、(北米1公館)カナダ、(中南米4公館)キューバ、コロンビア、トリニダード・トバゴ、ペルー、(欧州8公館)アイルランド、アゼルバイジャン、スイス、スウェーデン、デンマーク、ポーランド、ルーマニア、ルクセンブルク、(中東2公館)オマーン、バーレーン、(アフリカ1公館)南アフリカ共和国各大使館 25
総領事館 (アジア4公館)釜山、広州、重慶、瀋陽、(北米6公館)デンバー、ナッシュビル、ハガッニャ、ヒューストン、ボストン、マイアミ、(欧州5公館)デュッセルドルフ、ストラスブール、ウラジオストク、ハバロフスク、ユジノサハリンスク各総領事館 15
40
合計 41

 このほか、23年次の検査においては22年報告のフォローアップ検査も併せて実施する必要があることから、22年報告の検査結果として、酒類の在庫が過剰となっていた在ジュネーブ国際機関、軍縮会議及び経済協力開発機構各代表部並びにこれらの在外公館から酒類の管理換を受けたフランス大使館の計4公館を対象として、事態の改善状況を確認するなどのため、計5人日を要して、会計実地検査を行った。また、その他の事項のフォローアップ検査については、22年報告を受けて講じた処置について外務本省において確認するとともに、必要に応じて前記の40公館以外の在外公館についても調書を徴するなどして各在外公館の対応状況について確認を行った。