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  • 国会及び内閣に対する報告(随時報告)|
  • 会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告書|
  • 平成23年9月

各都道府県に移管された高校奨学金事業について、運営状況等を的確に把握し、これに基づいて必要な助言等を行うなどの所要の対応を執るなどして、将来にわたって適切な運営が確保されるよう文部科学大臣に対して意見を表示したもの


  各都道府県に移管された高校奨学金事業について、運営状況等を的確に把握し、これに基づいて必要な助言等を行うなどの所要の対応を執るなどして、将来にわたって適切な運営が確保されるよう文部科学大臣に対して意見を表示したもの

会計名及び科目 一般会計 (組織)文部科学本省 (項)育英事業費
部局等 文部科学本省
交付の根拠 予算補助
高等学校等奨学金事業交付金の概要 独立行政法人日本学生支援機構から各都道府県に移管された高校奨学金事業に必要な資金を同機構を通じて都道府県に交付するもの
検査の対象 20府県
上記の20府県に対する交付金交付額 820億505万余円 (平成17年度〜22年度)
20府県のうち移管された高校奨学金事業を貸与水準を維持しつつ継続かつ安定して運営していく態勢が十分に確保されていない府県 11府県
上記の11府県に対する交付金交付額 575億8671万円  (平成17年度〜22年度)

【意見を表示したものの全文】

各都道府県に移管された高校奨学金事業の運営について

(平成23年9月2日付け 文部科学大臣宛て)

 標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり意見を表示する。

1 各都道府県に移管された高校奨学金事業等の概要

(1) 高等学校等奨学金事業交付金等の概要

 国及び地方公共団体は、経済的理由によって修学が困難な生徒等に対して奨学金を貸与するなどの奨学金事業を実施している。
 奨学金事業のうち、高等学校(中等教育学校の後期課程及び特別支援学校の高等部を含む。)及び専修学校の高等課程(以下、これらを合わせて「高等学校等」という。)の生徒を対象とした奨学金事業(以下、この事業を「高校奨学金事業」といい、同事業により奨学金の貸与を受ける生徒を「奨学生」という。)は、平成16年度までは、主として独立行政法人日本学生支援機構(16年3月31日以前は日本育英会。以下「機構」という。)及び各都道府県により実施されていた。しかし、機構が実施していた高校奨学金事業(以下「機構奨学金事業」という。)については、「特殊法人等整理合理化計画」(平成13年12月閣議決定)を踏まえて、17年度以降の入学者から各都道府県に順次移管されることとなった。これを受けて、貴省は、移管後に都道府県が実施する高校奨学金事業(以下「移管奨学金事業」という。)において貸与する奨学金の原資(以下「奨学資金」という。)に充てるため、17年度から機構を通じて、各都道府県に対して高等学校等奨学金事業交付金(以下「交付金」という。)を交付している。
 貴省によれば、最終的な交付金の交付総額は約2000億円とされており、17年度から2年度までの間に各都道府県に対して交付された交付金の額は、表1のとおり、計1411億6360万余円(2000億円の約7割に相当)となっている。

表1 各都道府県に対する交付金の交付額

(単位:千円)

年度 平成            
17年度 18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 交付額計
都道府県名              
北海道 599,515 1,245,752 1,892,986 1,915,277 1,846,435 1,777,593 9,277,558
青森県 347,664 722,422 1,096,635 1,109,548 1,069,667 1,029,786 5,375,722
岩手県 145,088 301,483 457,933 463,325 446,672 430,018 2,244,519
宮城県 246,376 511,953 776,535 785,679 757,439 729,199 3,807,181
秋田県 115,888 240,808 365,494 369,798 356,506 343,214 1,791,708
山形県 122,275 254,080 386,386 390,936 376,884 362,832 1,893,393
福島県 119,538 248,392 376,055 380,483 366,807 353,131 1,844,406
茨城県 60,225 125,144 189,333 191,563 184,677 177,792 928,734
栃木県 51,100 106,183 161,951 163,858 157,968 152,079 793,139
群馬県 43,800 91,014 137,756 139,378 134,369 129,359 675,676
埼玉県 190,713 396,290 600,835 607,910 586,060 564,209 2,946,017
千葉県 140,526 292,003 444,069 449,298 433,149 416,999 2,176,044
東京都 281,051 584,006 887,063 897,508 865,248 832,989 4,347,865
神奈川県 117,713 244,600 372,176 376,559 363,024 349,489 1,823,561
新潟県 102,200 212,366 322,058 325,851 314,139 302,426 1,579,040
富山県 19,163 39,819 60,256 60,966 58,775 56,583 295,562
石川県 27,375 56,884 86,640 87,660 84,509 81,359 424,427
福井県 36,500 75,845 116,019 117,386 113,166 108,947 567,863
山梨県 79,388 164,963 249,244 252,179 243,115 234,050 1,222,939
長野県 70,263 146,001 221,055 223,658 215,619 207,580 1,084,176
岐阜県 58,400 121,352 183,611 185,773 179,096 172,418 900,650
静岡県 72,088 149,794 228,621 231,313 222,999 214,684 1,119,499
愛知県 100,375 208,573 315,760 319,478 307,995 296,512 1,548,693
三重県 134,138 278,730 423,292 428,277 412,883 397,489 2,074,809
滋賀県 52,925 109,975 166,137 168,093 162,051 156,010 815,191
京都府 189,801 394,393 598,377 605,424 583,662 561,901 2,933,558
大阪府 1,528,443 3,176,004 4,824,848 4,881,663 4,706,197 4,530,733 23,647,888
兵庫県 314,814 654,162 994,633 1,006,345 970,173 934,002 4,874,129
奈良県 98,550 204,781 310,576 314,233 302,938 291,643 1,522,721
和歌山県 46,538 96,702 146,052 147,771 142,460 137,148 716,671
鳥取県 48,363 100,494 152,081 153,872 148,341 142,810 745,961
島根県 89,425 185,820 283,501 286,839 276,529 266,219 1,388,333
岡山県 165,163 343,198 522,222 528,371 509,379 490,388 2,558,721
広島県 268,276 557,460 847,314 857,292 826,477 795,663 4,152,482
山口県 132,313 274,938 416,802 421,710 406,552 391,394 2,043,709
徳島県 49,275 102,391 154,923 156,747 151,113 145,479 759,928
香川県 61,138 127,040 194,364 196,653 189,584 182,516 951,295
愛媛県 149,651 310,964 472,296 477,858 460,682 443,506 2,314,957
高知県 88,513 183,924 278,431 281,710 271,584 261,458 1,365,620
福岡県 536,552 1,114,920 1,694,359 1,714,311 1,652,693 1,591,074 8,303,909
佐賀県 154,213 320,445 488,003 493,750 476,003 458,256 2,390,670
長崎県 316,639 657,954 997,974 1,009,726 973,433 937,139 4,892,865
熊本県 338,539 703,461 1,067,755 1,080,328 1,041,497 1,002,666 5,234,246
大分県 212,613 441,796 669,617 677,502 653,151 628,799 3,283,478
宮崎県 330,326 686,396 1,043,867 1,056,159 1,018,197 980,235 5,115,180
鹿児島県 468,114 972,711 1,478,374 1,495,782 1,442,018 1,388,254 7,245,253
沖縄県 204,401 424,731 645,538 653,139 629,663 606,187 3,163,659
合計 9,125,947 18,963,117 28,799,807 29,138,939 28,091,578 27,044,217 141,163,605

(2) 移管奨学金事業に関する財源措置

 貴省は、前記の移管に当たり、移管奨学金事業について、移管から一定の期間が経過すると奨学生からの返還金(以下「返還金」という。)が生じ、これが奨学資金に充当されて次の奨学金の貸与へと循環していくことになることを考慮して、次の〔1〕〜〔4〕の条件、指標等により移管奨学金事業の将来的な収支等を試算し、必要な財源措置についての検討を行っている。

〔1〕  17年度から20年度までの各年度の貸与額は機構の16年度の予算額程度とし、21年度以降の各年度の貸与額は高等学校等の総生徒数の減少と機構奨学金事業における貸与率(奨学生総数/高等学校等の総生徒数)を考慮して推定する。
〔2〕  大学等への進学実態を踏まえて、大学等に在学中は返還を猶予する。奨学金の標準回収期間を返還開始後10年間とする。
〔3〕  機構奨学金事業における実績を考慮して、当該年度に返還期日が到来する奨学金に係る回収率(以下「当年度回収率」という。)を84%、前年度までに返還されず当該年度に繰り越された奨学金に係る回収率(以下「過年度回収率」という。)を13%(返還期日が到来した翌年度から10か年度を経過するまで、毎年度13%ずつ前年度に未回収となった奨学金を回収すると仮定)とし、これにより、貸与した奨学金のうち回収が著しく困難となるものが4%程度発生すると想定する。
〔4〕  移管後において機構奨学金事業の貸与水準の維持が可能となるような奨学資金の規模は、機構奨学金事業において貸与した奨学金の回収見込額(約2000億円)と同額と想定し、この額を交付金として、10〜15年間をかけて各都道府県に配分する。なお、各年度の交付金は、機構奨学金事業における14、15両年度の総貸与額に対する各都道府県での貸与額の割合を踏まえて各都道府県に配分する。

 そして、貴省は、この試算において、各都道府県がそれぞれ機構奨学金事業と同様の制度を設け、機構奨学金事業における貸与水準と回収率を維持しつつ交付金及び返還金を奨学資金として移管奨学金事業を運営したとすると、将来的には各年度の返還金が貸与額を上回ることになり、移管奨学金事業に係る返還金が平年度化すると見込まれる43年度の年度末において、奨学資金に同年度の貸与額184億円の83.4%に相当する153億円の残額が生ずると予測している。また、この試算の結果から、貴省は、交付金として約2000億円を10〜15年間かけて交付することとすれば、各都道府県において、交付金及び返還金を奨学資金として、機構奨学金事業の貸与水準を維持しつつ移管奨学金事業を交付金の交付終了後も継続かつ安定して運営していくことは十分に可能であるとしており、移管に当たっての財源措置はこれを限度とし、追加的措置は行わないとしている。

(3) 各都道府県が運営している移管奨学金事業の概要

 各都道府県は、それぞれ移管奨学金事業の内容等を検討するなどした後、17年度以降、移管奨学金事業を運営してきている。各都道府県が運営している移管奨学金事業についてみると、事業の内容、実施方法等は都道府県により区々となっているものの、奨学資金の調達方法により、〔1〕 交付金と交付金を原資とした奨学金に係る返還金のみを奨学資金としているものと、〔2〕 交付金に都道府県が調達した資金を合わせた資金とこれらを原資とした奨学金に係る返還金とを奨学資金としているものとに大別することができる。そして、移管奨学金事業の多くは、現在、後者に該当しており、これらの移管奨学金事業においては、機構から移管された高校奨学金事業に係る奨学金事業と従前から都道府県が実施していた高校奨学金事業に係る奨学金事業とが一体不可分な形で実施されていることなどから、その多くが機構奨学金事業における当該都道府県での貸与額の実績を上回る規模となっている。