会計名及び科目 | 一般会計 (組織)文部科学本省 (項)育英事業費 | |
部局等 | 文部科学本省 | |
交付の根拠 | 予算補助 | |
高等学校等奨学金事業交付金の概要 | 独立行政法人日本学生支援機構から各都道府県に移管された高校奨学金事業に必要な資金を同機構を通じて都道府県に交付するもの | |
検査の対象 | 20府県 | |
上記の20府県に対する交付金交付額 | 820億505万余円 | (平成17年度〜22年度) |
20府県のうち移管された高校奨学金事業を貸与水準を維持しつつ継続かつ安定して運営していく態勢が十分に確保されていない府県 | 11府県 | |
上記の11府県に対する交付金交付額 | 575億8671万円 | (平成17年度〜22年度) |
【意見を表示したものの全文】
各都道府県に移管された高校奨学金事業の運営について
(平成23年9月2日付け 文部科学大臣宛て)
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり意見を表示する。
記
国及び地方公共団体は、経済的理由によって修学が困難な生徒等に対して奨学金を貸与するなどの奨学金事業を実施している。
奨学金事業のうち、高等学校(中等教育学校の後期課程及び特別支援学校の高等部を含む。)及び専修学校の高等課程(以下、これらを合わせて「高等学校等」という。)の生徒を対象とした奨学金事業(以下、この事業を「高校奨学金事業」といい、同事業により奨学金の貸与を受ける生徒を「奨学生」という。)は、平成16年度までは、主として独立行政法人日本学生支援機構(16年3月31日以前は日本育英会。以下「機構」という。)及び各都道府県により実施されていた。しかし、機構が実施していた高校奨学金事業(以下「機構奨学金事業」という。)については、「特殊法人等整理合理化計画」(平成13年12月閣議決定)を踏まえて、17年度以降の入学者から各都道府県に順次移管されることとなった。これを受けて、貴省は、移管後に都道府県が実施する高校奨学金事業(以下「移管奨学金事業」という。)において貸与する奨学金の原資(以下「奨学資金」という。)に充てるため、17年度から機構を通じて、各都道府県に対して高等学校等奨学金事業交付金(以下「交付金」という。)を交付している。
貴省によれば、最終的な交付金の交付総額は約2000億円とされており、17年度から2年度までの間に各都道府県に対して交付された交付金の額は、表1のとおり、計1411億6360万余円(2000億円の約7割に相当)となっている。
表1 各都道府県に対する交付金の交付額
(単位:千円)
年度 | 平成 | ||||||
\ | 17年度 | 18年度 | 19年度 | 20年度 | 21年度 | 22年度 | 交付額計 |
都道府県名 | |||||||
北海道 | 599,515 | 1,245,752 | 1,892,986 | 1,915,277 | 1,846,435 | 1,777,593 | 9,277,558 |
青森県 | 347,664 | 722,422 | 1,096,635 | 1,109,548 | 1,069,667 | 1,029,786 | 5,375,722 |
岩手県 | 145,088 | 301,483 | 457,933 | 463,325 | 446,672 | 430,018 | 2,244,519 |
宮城県 | 246,376 | 511,953 | 776,535 | 785,679 | 757,439 | 729,199 | 3,807,181 |
秋田県 | 115,888 | 240,808 | 365,494 | 369,798 | 356,506 | 343,214 | 1,791,708 |
山形県 | 122,275 | 254,080 | 386,386 | 390,936 | 376,884 | 362,832 | 1,893,393 |
福島県 | 119,538 | 248,392 | 376,055 | 380,483 | 366,807 | 353,131 | 1,844,406 |
茨城県 | 60,225 | 125,144 | 189,333 | 191,563 | 184,677 | 177,792 | 928,734 |
栃木県 | 51,100 | 106,183 | 161,951 | 163,858 | 157,968 | 152,079 | 793,139 |
群馬県 | 43,800 | 91,014 | 137,756 | 139,378 | 134,369 | 129,359 | 675,676 |
埼玉県 | 190,713 | 396,290 | 600,835 | 607,910 | 586,060 | 564,209 | 2,946,017 |
千葉県 | 140,526 | 292,003 | 444,069 | 449,298 | 433,149 | 416,999 | 2,176,044 |
東京都 | 281,051 | 584,006 | 887,063 | 897,508 | 865,248 | 832,989 | 4,347,865 |
神奈川県 | 117,713 | 244,600 | 372,176 | 376,559 | 363,024 | 349,489 | 1,823,561 |
新潟県 | 102,200 | 212,366 | 322,058 | 325,851 | 314,139 | 302,426 | 1,579,040 |
富山県 | 19,163 | 39,819 | 60,256 | 60,966 | 58,775 | 56,583 | 295,562 |
石川県 | 27,375 | 56,884 | 86,640 | 87,660 | 84,509 | 81,359 | 424,427 |
福井県 | 36,500 | 75,845 | 116,019 | 117,386 | 113,166 | 108,947 | 567,863 |
山梨県 | 79,388 | 164,963 | 249,244 | 252,179 | 243,115 | 234,050 | 1,222,939 |
長野県 | 70,263 | 146,001 | 221,055 | 223,658 | 215,619 | 207,580 | 1,084,176 |
岐阜県 | 58,400 | 121,352 | 183,611 | 185,773 | 179,096 | 172,418 | 900,650 |
静岡県 | 72,088 | 149,794 | 228,621 | 231,313 | 222,999 | 214,684 | 1,119,499 |
愛知県 | 100,375 | 208,573 | 315,760 | 319,478 | 307,995 | 296,512 | 1,548,693 |
三重県 | 134,138 | 278,730 | 423,292 | 428,277 | 412,883 | 397,489 | 2,074,809 |
滋賀県 | 52,925 | 109,975 | 166,137 | 168,093 | 162,051 | 156,010 | 815,191 |
京都府 | 189,801 | 394,393 | 598,377 | 605,424 | 583,662 | 561,901 | 2,933,558 |
大阪府 | 1,528,443 | 3,176,004 | 4,824,848 | 4,881,663 | 4,706,197 | 4,530,733 | 23,647,888 |
兵庫県 | 314,814 | 654,162 | 994,633 | 1,006,345 | 970,173 | 934,002 | 4,874,129 |
奈良県 | 98,550 | 204,781 | 310,576 | 314,233 | 302,938 | 291,643 | 1,522,721 |
和歌山県 | 46,538 | 96,702 | 146,052 | 147,771 | 142,460 | 137,148 | 716,671 |
鳥取県 | 48,363 | 100,494 | 152,081 | 153,872 | 148,341 | 142,810 | 745,961 |
島根県 | 89,425 | 185,820 | 283,501 | 286,839 | 276,529 | 266,219 | 1,388,333 |
岡山県 | 165,163 | 343,198 | 522,222 | 528,371 | 509,379 | 490,388 | 2,558,721 |
広島県 | 268,276 | 557,460 | 847,314 | 857,292 | 826,477 | 795,663 | 4,152,482 |
山口県 | 132,313 | 274,938 | 416,802 | 421,710 | 406,552 | 391,394 | 2,043,709 |
徳島県 | 49,275 | 102,391 | 154,923 | 156,747 | 151,113 | 145,479 | 759,928 |
香川県 | 61,138 | 127,040 | 194,364 | 196,653 | 189,584 | 182,516 | 951,295 |
愛媛県 | 149,651 | 310,964 | 472,296 | 477,858 | 460,682 | 443,506 | 2,314,957 |
高知県 | 88,513 | 183,924 | 278,431 | 281,710 | 271,584 | 261,458 | 1,365,620 |
福岡県 | 536,552 | 1,114,920 | 1,694,359 | 1,714,311 | 1,652,693 | 1,591,074 | 8,303,909 |
佐賀県 | 154,213 | 320,445 | 488,003 | 493,750 | 476,003 | 458,256 | 2,390,670 |
長崎県 | 316,639 | 657,954 | 997,974 | 1,009,726 | 973,433 | 937,139 | 4,892,865 |
熊本県 | 338,539 | 703,461 | 1,067,755 | 1,080,328 | 1,041,497 | 1,002,666 | 5,234,246 |
大分県 | 212,613 | 441,796 | 669,617 | 677,502 | 653,151 | 628,799 | 3,283,478 |
宮崎県 | 330,326 | 686,396 | 1,043,867 | 1,056,159 | 1,018,197 | 980,235 | 5,115,180 |
鹿児島県 | 468,114 | 972,711 | 1,478,374 | 1,495,782 | 1,442,018 | 1,388,254 | 7,245,253 |
沖縄県 | 204,401 | 424,731 | 645,538 | 653,139 | 629,663 | 606,187 | 3,163,659 |
合計 | 9,125,947 | 18,963,117 | 28,799,807 | 29,138,939 | 28,091,578 | 27,044,217 | 141,163,605 |
貴省は、前記の移管に当たり、移管奨学金事業について、移管から一定の期間が経過すると奨学生からの返還金(以下「返還金」という。)が生じ、これが奨学資金に充当されて次の奨学金の貸与へと循環していくことになることを考慮して、次の〔1〕〜〔4〕の条件、指標等により移管奨学金事業の将来的な収支等を試算し、必要な財源措置についての検討を行っている。
〔1〕 17年度から20年度までの各年度の貸与額は機構の16年度の予算額程度とし、21年度以降の各年度の貸与額は高等学校等の総生徒数の減少と機構奨学金事業における貸与率(奨学生総数/高等学校等の総生徒数)を考慮して推定する。
〔2〕 大学等への進学実態を踏まえて、大学等に在学中は返還を猶予する。奨学金の標準回収期間を返還開始後10年間とする。
〔3〕 機構奨学金事業における実績を考慮して、当該年度に返還期日が到来する奨学金に係る回収率(以下「当年度回収率」という。)を84%、前年度までに返還されず当該年度に繰り越された奨学金に係る回収率(以下「過年度回収率」という。)を13%(返還期日が到来した翌年度から10か年度を経過するまで、毎年度13%ずつ前年度に未回収となった奨学金を回収すると仮定)とし、これにより、貸与した奨学金のうち回収が著しく困難となるものが4%程度発生すると想定する。
〔4〕 移管後において機構奨学金事業の貸与水準の維持が可能となるような奨学資金の規模は、機構奨学金事業において貸与した奨学金の回収見込額(約2000億円)と同額と想定し、この額を交付金として、10〜15年間をかけて各都道府県に配分する。なお、各年度の交付金は、機構奨学金事業における14、15両年度の総貸与額に対する各都道府県での貸与額の割合を踏まえて各都道府県に配分する。
そして、貴省は、この試算において、各都道府県がそれぞれ機構奨学金事業と同様の制度を設け、機構奨学金事業における貸与水準と回収率を維持しつつ交付金及び返還金を奨学資金として移管奨学金事業を運営したとすると、将来的には各年度の返還金が貸与額を上回ることになり、移管奨学金事業に係る返還金が平年度化すると見込まれる43年度の年度末において、奨学資金に同年度の貸与額184億円の83.4%に相当する153億円の残額が生ずると予測している。また、この試算の結果から、貴省は、交付金として約2000億円を10〜15年間かけて交付することとすれば、各都道府県において、交付金及び返還金を奨学資金として、機構奨学金事業の貸与水準を維持しつつ移管奨学金事業を交付金の交付終了後も継続かつ安定して運営していくことは十分に可能であるとしており、移管に当たっての財源措置はこれを限度とし、追加的措置は行わないとしている。
各都道府県は、それぞれ移管奨学金事業の内容等を検討するなどした後、17年度以降、移管奨学金事業を運営してきている。各都道府県が運営している移管奨学金事業についてみると、事業の内容、実施方法等は都道府県により区々となっているものの、奨学資金の調達方法により、〔1〕 交付金と交付金を原資とした奨学金に係る返還金のみを奨学資金としているものと、〔2〕 交付金に都道府県が調達した資金を合わせた資金とこれらを原資とした奨学金に係る返還金とを奨学資金としているものとに大別することができる。そして、移管奨学金事業の多くは、現在、後者に該当しており、これらの移管奨学金事業においては、機構から移管された高校奨学金事業に係る奨学金事業と従前から都道府県が実施していた高校奨学金事業に係る奨学金事業とが一体不可分な形で実施されていることなどから、その多くが機構奨学金事業における当該都道府県での貸与額の実績を上回る規模となっている。