検査対象 | 財務省、国税庁、8国税局等、47税務署 | |
基準期間がない法人の消費税の納税義務の免除の概要 | 事業年度開始の日における資本金の額又は出資の金額が1000万円未満の法人の設立事業年度とその翌事業年度の納税義務を免除するもの | |
検査の対象とした法人数 | 1,546法人 | |
上記の法人のうち納付消費税額の推計が可能な法人数及びその売上高 | 587法人 | 1005億円(平成16年度〜21年度) |
免税となっている納付消費税額の推計額 | 17億5714万円(平成16年度〜21年度) |
消費税は、税体系全体を通じた税負担の公平を図るとともに、国民福祉の充実等に必要な歳入構造の安定化に資するため、消費に広く薄く負担を求めるという観点から、消費税法(昭和63年法律第108号)の制定により平成元年4月に導入された。
その後、9年4月に、税率を3%から4%に引き上げるとともに地方消費税(消費税額の25%、消費税率換算で1%)を創設するなどした。また、16年4月に、小規模事業者に係る納税義務の免除の特例について、その適用上限の課税売上高を3000万円から1000万円に引き下げるなどした。
消費税は、製造、卸売、小売等の各段階の売上げに課税され、その税相当額が順次価格に織り込まれて転嫁され、最終的には消費者が負担することが予定されている。そして、消費税法は、前段階で課税されている消費税が各段階で二重、三重に累積的に課税されないように、課税売上げに係る消費税額から課税仕入れに係る消費税額を控除する仕組みを採っている。消費税の納税義務者は、国内において課税資産の譲渡等を行う事業者(注1) となっている。
消費一般に幅広く負担を求めるという消費税の課税の趣旨や産業経済に対する中立性の確保という観点からは、消費税の納税義務を免除される事業者(以下「免税事業者」という。)は極力設けないことが望ましいとされている。一方、小規模事業者の事務処理能力等を勘案し、個人事業者では課税期間の前々年、法人では課税期間(注2) の前々事業年度(以下、これらを「基準期間」という。)における課税売上高が1000万円以下の事業者は、原則として消費税の納税義務が免除されることとなっている(以下、この消費税の納税義務が免除される仕組みを「事業者免税点制度」という。)。その結果、事業者として新たに事業を開始した場合、個人事業者の新規開業年及びその翌年並びに法人の設立事業年度及びその翌事業年度については、それぞれ課税期間に係る基準期間が存在しないことから、原則として免税事業者となり、納税義務が免除されることとなっている。
個人事業者は、事業の拡大や借入れ及び取引の都合等を理由として、当該事業の権利義務関係を新たに設立した法人(以下「新設法人」という。)に引き継ぐ場合がある(以下、このように個人事業者が行っていた事業を新設法人へ引き継ぐことを「法人成り」という。)。
そして、個人事業者として課税事業者であった場合でも、個人事業者が新設法人に事業を引き継いだときには、法人としての課税期間に係る基準期間が存在しないことから、設立事業年度とその翌事業年度は、原則として免税事業者となる。
新設法人の中には設立事業年度から相当の売上高を有する法人もあり、また、事業者免税点制度が、小規模事業者の事務処理能力等を勘案して設けられているものであることから、6年の税制改正において、新設法人のうち、その事業年度開始の日における資本金の額又は出資の金額(以下「資本金」という。)が1000万円以上の法人は、課税期間に係る基準期間が存在しない設立2年以内の納税義務が免除されないこととされた。これは、資本金が年間を通して変動する可能性も少なく、資本金が多額であれば相対的に売上高も多額に上ることなどから設けられたとされている。
会社に関する法律は、従来、商法(明治32年法律第48号)、有限会社法(昭和13年法律第74号)等の様々な法律に分散していたが、これらの法律を一本化したものとして、会社法(平成17年法律第86号)が制定されて18年5月から施行された。この中で、中小企業や新たに会社を設立しようとする者の実態を踏まえ、会社制度を利用者にとって使いやすいものとするために、株式会社制度と有限会社制度の統合、会社設立要件の緩和等各種の見直しが行われている。
このうち、会社設立要件の緩和では、新規創業の活性化という観点からより容易に株式会社の設立ができるようにするために、従来設けられていた株式会社の設立には1000万円以上の資本金が必要であるとする最低資本金制度が撤廃された。
そして、上記の最低資本金制度が撤廃された以降においても、新設法人の設立2年以内の納税義務について資本金を基準として判定することは、特段見直されていない。